この手がおひさまに届くまで

風庭 はなな

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あこがれた、そのさきへ

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 そして、やくそくの半月はんつき
 紫苑しおんは、目をさまさなくなりました。
 ふかくふかく目をとじたまま、ぴくりともしません。


 そう、しんだのです。

 紫苑しおんは、しんだのです。


 お母さんはきました。
 しんだ紫苑しおんのそばで、よりそうように泣きました。


 みじかすぎた、ちいさないのち。

 きえていった、ひとつのいのち。


 きじゃくるお母さんを、紫苑しおんは見ていました。

 「お母さん、なかないで」

 なぐさめようと、お母さんのとなりによりそいます。
 お母さんのかたをたたこうとしても、せなかをさすろうとしても、ふれることはできません。

 紫苑しおんのからだはすけて、だれにも見えなくなっていました。

 
 ───ああ、これが「」と言うのね。

 
 自分がしんだことで、紫苑しおんはようやくそれがわかったのです。


 しぬというのは、いなくなってしまうこと。

 しぬというのは、のこしてしまうこと。



 それはとてもつらくて、いたくて、くるしいこと。



 だけど。

 だけど、かわらないものも、たしかにあって。



 「───おひさま」



 そこには、青い青い、すみわたった空。

 きらきらとまぶしい、おひさま。

 


 「紫苑しおんちゃん」




 まぶしいひかりのそばにいる、だれか。

 わたしのなまえをよぶ、だれか。


 わたしへ、まっすぐ、手をさしだしてくれるひと。


 手をのばしかえすと、紫苑しおんのからだがふわりとうきました。
 そしてたかく、空へ。
 たかいたかい空へ、のぼっていきます。


 やがてまぶしいひかりのそばへつくと、そのひとはにっこりとわらいました。



 「紫苑しおんちゃん、まってたよ。ずうっと」



 目のまえにだされた手。
 紫苑しおんも、自分の手をそっとかさねます。



 「わたしも。ずうっと、あこがれてたの」



 あなたに。



 きらきらして、まぶしくて、あったかいもの。


 ずうっと、ずうっと、手をのばしていたもの。



 
 ひかりかがやいて、わたしをてらす、




 ────おひさま。
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