令嬢様は愛されたい!〜辺境貴族と婚約する件〜

tartan321

文字の大きさ
4 / 5

その名はアンソニー

しおりを挟む
「その名はアンソニー君です!」

えっ……?私は思わずほっぺを落とし……じゃなかった!いや、驚きましたよ。僕ですか?そんな顔を皇帝に向けてしまったのを覚えています。

「彼は今、受験を控えています。シュードモナス最高位公爵の後を継ぐべく、高等学院入学のために努力しているのです!」

これを聞いた貴族の皆様は、私にたくさんの拍手を送って下さいました。非常にありがたいことでございました。しかしながら、こういうのは何も私に限った話ではありません。貴族の子弟は、少なからず受験を乗り越えて成長していくのです。ですから、ことさら私のことを評価する理由なんてないと思いました。

「それから、ああっ、アンソニー君?私は君と直接話がしたいので、ここに来てくれますか?」

皇帝は私の方を見て、直接手招きして下さいました。孤独のテーブルから一転、上位貴族の皆様方が座るテーブルの中央に座ることになりました。

「さて、そんなアンソニー君に、一つプレゼントをしたいと思います。さあっ、悩める若者よ!あなたのそのたゆまぬ努力の伴侶を、私は君に授けたい!」

皇帝がそう高らかに宣言なさいますと、広間の扉が一つ開きまして、そこから一人の少女がやってきました。


驚いたことに、それは先ほど見失った白い妖精でした!


「皇帝……これは一体?」

「おや?ひょっとしてお知り合いですか?」

皇帝が尋ねられたので、私は

「はい」

と答えました。

「そうですか。彼女こそが、スコダ家令嬢のクリスであります!」

なんですって?私は驚きました。王子様が一方的に婚約破棄した令嬢が、あの白い妖精だったなんて……。


クリスはその肌よりも灰色がかったベールを身に纏っていました。私が最初に彼女を見たときよりも、美しく、そして可愛らしい少女でした。でも、ちょっと待ってください!

「私が……クリス嬢と婚約するということなのですか?」

私は皇帝に尋ねました。

「婚約……はっはっはっ、最近の若い方は気が早いですな!いや、けっこうけっこう!」

普通に考えれば、まずはおつきあいから、というのが貴族の習わしでした。何を血迷ったのか、私はそんな貴族の常識を忘れて、いきなり婚約だなんて言うものですから、クリスは少し驚いていました。しかしながら、皇帝は私の手を取り、こう言いました。

「お父上によく似ている……君は父上のように優秀な魔法使いになるのだろう。この世界で一番強く、そして優しい、全ての命を代表する賢者の証だ!君になら、私たちの罪を託すことができる……。ああっ、決して私たちの代行とは思わないでくださいね。君が彼女に一目惚れだったことは確認が取れています!」

ひょっとして……見られていましたか。

それにしても……。なるほど、門出とはこういうことなのですね。


「この場に誓います。私、アンソニーはクリスを人生の伴侶とします!」

世界のため、彼女のため、家族のため、私は新たな門出の決意を固めることができました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜

黒崎隼人
恋愛
「王国の害悪」として婚約破棄され、魔物が棲む最果ての地『魔狼の森』へ追放された悪役令嬢リリア。 しかし、彼女には前世の記憶と、ゲーム知識、そして植物を癒やし育てる不思議な力があった! 不毛の地をハーブ園に変え、精霊と友達になり、スローライフを満喫しようとするリリア。 そんな彼女を待っていたのは、冷徹と噂される銀狼の獣人領主・カイルとの出会いだった。 「お前は、俺の宝だ」 寡黙なカイルの不器用な優しさと、とろけるような溺愛に包まれて、リリアは本当の幸せを見つけていく。 一方、リリアを追放した王子と偽聖女には、破滅の足音が迫っていて……? 植物魔法で辺境を開拓し、獣人領主に愛される、大逆転ハッピーエンドストーリー!

処理中です...