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その2
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「そこのお嬢さん……綺麗な体してるじゃないか……」
娼婦になると、色々捨てなければならない。まずは、令嬢のプライド。これは最初の頃、結構きつい。下僕みたいな男が、今度は私の主人になってしまうのだから。
「挑戦的な視線って言うのも、これはこれで面白い」
殊の外評判だった。一生虐げられていろ、と心の中で叫んだ。
次は家族。これは私の場合、容易かった。理由は聞くまでもないでしょう。でも、私の収益の幾らかが、物乞い家族に持っていかれるかと思うと、それはそれでショック。まあ、その原因が私にあったと言えば、それは間違いではないけれども……。
妹よ、早くどっかの国の隷属になるのだ。願わくば、私を養え。優秀な遺伝子は全て、お前の方に流れたんだ。そういうやつは、ダメな人間の面倒を見る義務ってものがあるだろう?
早く早く……私を救ってくれ……。
そんなことを思いながら男に抱かれ続けた。男と言っても色々な種類がある。時には利口な青年がいて、いっそのこと孕んでしまおうか、などと考えることもある。しかしながら、この館に来るため、大層仕事したことを聞いてしまっては、私の希望も泡となって消えていく。
普通の生活でいい。それさえも赦してくれないのなら、やっぱり私は悪魔にでもなって、妹に縋り続けるしかない。プライドは捨てた。乞食と罵られたっていい。
それくらいしか、方法が思いつかないのだから。
娼婦になると、色々捨てなければならない。まずは、令嬢のプライド。これは最初の頃、結構きつい。下僕みたいな男が、今度は私の主人になってしまうのだから。
「挑戦的な視線って言うのも、これはこれで面白い」
殊の外評判だった。一生虐げられていろ、と心の中で叫んだ。
次は家族。これは私の場合、容易かった。理由は聞くまでもないでしょう。でも、私の収益の幾らかが、物乞い家族に持っていかれるかと思うと、それはそれでショック。まあ、その原因が私にあったと言えば、それは間違いではないけれども……。
妹よ、早くどっかの国の隷属になるのだ。願わくば、私を養え。優秀な遺伝子は全て、お前の方に流れたんだ。そういうやつは、ダメな人間の面倒を見る義務ってものがあるだろう?
早く早く……私を救ってくれ……。
そんなことを思いながら男に抱かれ続けた。男と言っても色々な種類がある。時には利口な青年がいて、いっそのこと孕んでしまおうか、などと考えることもある。しかしながら、この館に来るため、大層仕事したことを聞いてしまっては、私の希望も泡となって消えていく。
普通の生活でいい。それさえも赦してくれないのなら、やっぱり私は悪魔にでもなって、妹に縋り続けるしかない。プライドは捨てた。乞食と罵られたっていい。
それくらいしか、方法が思いつかないのだから。
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