最強の勇者、婚約破棄させられる~虫のように湧いてきた聖女とやらにはめられて辺境スローライフを始めます~

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その1

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始めての人が多いと思うので、まず初めに自己紹介をしておく。


私の名前はハリスと言う。一応、この世界では勇者と認定されていて、魔物など、人間に害悪を加える恐れのある生物たちを倒す冒険者である。


勇者を志したのは、随分と幼い頃の話だ。でも、まさか本当にそうなるとは思ってもいなかった。


別に自慢をしたいというわけではないが、私は今まで様々な戦いを経験してきた。そして、人よりも吸収力が強いのか、あるいは、適応力が高いのか、とにもかくにも、様々な戦術を駆使して、自分よりも遥かに大きくて強い魔物であっても倒すことができるようになった。これは本当に喜ばしいことだ。


さてさて、そんな私に嫌気がさしたのだろうか?確かに、ここ最近の手柄はほぼ全て、私が独り占めしていると言っても過言ではない。いや、別に私が意図的にそうしているわけではなくて、他のパーティーメンバーが弱すぎるともいえる。だから……自分の手柄を横取りしたかのように、私のことを見ると言うのは、それは大きな勘違いなのだ。


しかし、そうは言っても仕方がない。私はいちゃもんを付けられて、この勇者のパーティーを去ることになったのだ。


その理由とは?


聞いて呆れると思うが、一応説明しておく。この世界には聖女様と呼ばれる世界最強の神の使いがいる。彼女は、この世界に存在する全ての生物を監督する権限を有していて、誰も彼女の命令に逆らうことはできない、と言われている。逆に言うと、私たち勇者が倒す魔物と言うのは、この聖女様に歯向かう輩が大半なのである。


それで……ああ、本当にどうしてこんな話ができてしまったのか、全く理解できないのだが、仕方ない。話を続けよう。


「ハリス。君は随分とすごいことを仕出かしたものだね?聖女様から婚約されたと言うのに、それを断ったばかりか、不貞を働いたとは……いや、神をも恐れぬ最強勇者とは聞いていたが、それはある意味本当だったんだなあ……」


幼少期から共に苦楽を共にしてきた友人……少なくとも私はそう思っていた、同じく勇者のブルックスがそう言った。ああ、あの懐かしい思いでは全て壊れたんだな。


「聖女様を籠絡するだなんて、あなた、いい度胸しているじゃないの?でも、女の恨みは怖いから、早く謝っておいた方がいいわよ?」


パーティーを組んでから知り合った女勇者のイザベルが言った。何だか偉そうなことを言っているが、本来の能力はまだ、勇者見習いなのだ。それが勇者である理由は、恐らく、勇者認定試験の際に、その美貌を生かして試験官を買収した……私はそう考えている。


「とにかく、聖女様のご意見を伺ったほうがいいんじゃないのか、ハリス。ことによると、我々一つのパーティーだけの問題では収まらないかもしれないぞ?」


同じく、新参者のボーアが言った。彼は確かに優秀だと思う。攻撃、防御、どちらも平均以上のレベルで、強靭なるスタミナを誇っている。


「全ては……神様の審判を仰ぐより他にはないでしょう……」


聖女様とやらの声が響いた。彼女は、3日前くらいに、パーティーに合流した。聖女と言うのは自称であって、それを証明することはできない。しかしながら、他のメンバーは、この女が聖女であることを信じて疑わない。まあ確かに、私は聖女です、なんて嘘をつく罰当たりな女など、この世界には存在しない、と信じ切っているのだろう。


魔物たちとの戦いを続ける勇者にとって、同じ種族である人間の言葉を疑う者は、もはやいないのである。


まあ確かに、この女に人間離れしたオーラがあることは事実だと思う。美貌というのはさておき、その仕草や声の使い方、更には全ての魔法を司るとされる、古びた一本の杖……これぞ、神の使いということなのだろうか?


「私の私の大切な初めてを差し上げたと言いますのに……どうしてあなたは私のことを拒絶されたのですか!!」


この女の初めてを奪った記憶も、そして、拒絶した記憶も一切ない。みんな、この女のでたらめだったのだ。


それとも……私がいなくなることで、この女には何か都合のいいことでもあるのだろうか?


まあ、そんなこと、どうでもいいや。はあっ。
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