最強の勇者、婚約破棄させられる~虫のように湧いてきた聖女とやらにはめられて辺境スローライフを始めます~

tartan321

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その2

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この女が、どうしてこの辺鄙なパーティーを好んでいるのか、そんなことは分からない。だが、どちらにしても、私を追放しようと考えていることには変わりないのだから、そんなのはどっちでもいいんだ。


女は一人で笑っていた。勝ち誇ったかのように。何に?こっちは最初から勝負なんてしていないんだけど?


この、突然発生した得体の知れない女のために、私はここで旅を終えなければならないと言うのか?ついてない人生だ。勇者として魔物を倒す生甲斐を奪ったこの女を憎むしかない。だが、無用に手出しをすることなんてできない。ああ、困ったものだ。それにしても……ブルックスやイザベルも結構喜んでるな……。


パーティーのメンバーの総意なんだったら、仕方がない。潔く抜けようとしようじゃないか?私は駄々をこねる子供ではないのだから。ああ、終わった終わりました・


強いぶん、大きな功績を残して、そして、みんなに嫌われて、このパーティーを去っていく。まあ、仕方ないことだ。


「ああ、私は君たちとこうして旅ができたことを誇りに思うよ……」


なんて、きざな挨拶で締めくくろうと思った矢先、ブルックス、イザベル、ボーア、そして、例の女が集中砲火で、厭味ったらしいことを言ってきた。


「別に、そんな心にも思っていないこと、いちいち言わなくてもいいんじゃないかな?そんなに未練があるんだったら、聖女様に泣いて謝って土下座して!そしたら、聖女様も許して下さるだろうよ?最も、人一倍プライドの高い君にはできない所業だろうか?」


「最強とか自慢しちゃってるけど、大した実力なんてないじゃないの?私たちの手柄を横取りして、一人だけ天下取ってた気分はどうだったかしら?もう遊びは終わったのよ?どうなのよ!何か言いなさい!」


「まあまあ、お二人さんとも、そんなに怒るなって。ハリスも人間だから、魔が差すことだって、きっとあるのさ。だから……これ以上責めるのは可哀想だよ……」


「ハリス……あなたはこれほどまでによきメンバーの友を持って、さぞかし幸せだったことでしょう。今一度、自分の行いを悔い改め、神に懺悔すれば、あるいは、今回の一件については無罪と判断することもできますよ?」


みんな、感情的に物事を訴えるのが上手い。それは、私も同じだった。心の奥底で、静かなる殺意が沸々と湧き上がっていた。このままだと、全員を殺してしまうかもしれない、と思った。


「ありがとうよ……」


最後に一言だけ言い残して、私はこのパーティーを去ったのだった。
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