婚約破棄？ あなたが？ 私に？

その5

貧弱男は文夫と言うそうです。文夫君文夫君文夫君文夫君……ふみお。

「ふみおっ…………！」

思わず叫んじゃいました。私の声はよく通リます。大きな木の下で居眠りしていても、きっと気がつくはずです。

「はっ、はいっ！」

こんな感じの返事が聞こえてくるはず……なんですがダメですね。こうなると、お嬢様キャラを前面に出して落とす方が早いでしょうか？そうしましょう。

「ふみおくん…………」

と弱々しく叫び、か弱いヒロインを助ける王子様にでもなっていただきます。状況さえこしらえれば、彼はきっとくるはずです。ご褒美には、私との婚約だと言っておいて。

「桐子様、あなたと結婚できることを幸せに感じます！」

「……誰もそんなこと言ってないけど？」

いや、こういうヘンテコ展開になりそうな予感がしますな。