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その15 新しい想い人

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「私が……処刑される運命をあなたは一緒に背負ってくれるというのですか?」

「勿論です……。あなた様のことは、母から全て聞いております。私ごときが……あなた様を愛する権利があるとは思いません……しかしながら、あなた様が私を求めてくださるのであれば、私は全力で貴方様を愛することができると誓い申し上げます……」

「ゲーベンさん……あなたは私のことを裏切らないとお誓いくださいますか?」

「死す時は、私もご一緒致しますよ……」


どれほど過酷な人生を生きることになっても、神様は時折休息を与えてくださる。私を本当に愛してくれるかもしれない男性に出会うことができた。

ゲーベンと言うのは、侍女ジェシカの一人息子だった。私が彼と出会った経緯について、その詳細は省きたいと思う。それは、忘れたい過去の1ページに詳しく記されている。だから、思い出さないことにする。

ゲーベンは私をよく慰めてくれた。ジェシカ譲りの優しさに、私は次第に心を開いていった。全力で泣きたいときは、全力で抱きしめてくれた。意識を失って倒れたときは、全力で支えてくれた。ゲーベンは私が、もういい、と言うまで揺り籠でいてくれた。

私は本気でゲーベンの恋人になりたいと思うようになった。王妃が侍女の息子と不倫した、などと叩かれたら世も末だと危惧はした。しかしながら、完全に貴族社会から姿を消した私のことを追っかけてくる人は、もはやいなかった。かえって都合がよかった。

「皇帝はメリー様を正妻にしようと画策しているみたいですよ。あなた様も早く婚約破棄すればよろしいのではないですか?」

ゲーベンはやはり私たちのからくりを知らなかった。

「そうね……早く婚約破棄して欲しいわね……」


それからしばらくして、メリーが二人目の子供を授かったという知らせが入った。しかしながら、私たちは何も気にしなかった。私はゲーベンとの子供が早く欲しかった。私はゲーベンを愛し、その子供を愛そうとした。

時折、リチャードは元気なのか、と思い浮かべることがあった。でもすぐに、心配することはないと思った。何と言っても、の息子なのだから、私が心配するのはおこがましかったのだ!

私たちはとことん愛を育んだ。全ては子供を孕むために、皇帝をぎゃふんと言わせるために……。どのみち、このままのたれ死ぬのであれば、民衆の待つ処刑台で皇帝の理不尽さを訴える方が有意義だと思った。そうすれば、私の生きた証を残せると思った。

ゲーベン……あなたは私の分まで生きてね……。死ぬのは私一人で十分よ!
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