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その14
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人はため息をつくほど年をとる生き物であると父が言っていた。なるほど、私はため息しかついていなかった。だから、おばあちゃんか……。私はメリーと話し合って以降、公式パーティーなどに顔を出すことが無くなった。貴族の間では消息不明、として扱われた。誰にも詮索されないので、それはそれでよかった。
私のお世話をしてくれる人々の数もめっきり減った。ジェシカと言う古い侍女が最後まで残ってくれた。彼女もまた、古典的な侍女であり、一度仕えた主人には何があっても生涯仕えるという信念があったみたいだ。
「でもそうすると、あなたの株が落ちるわよ……」
私はジェシカのことを不憫に思った。侍女と言うのは、主人と運命共同体である。主人が失脚すれば、侍女の評判も一緒に落ちるのが当たり前だった。しかしながら……私の元を離れるチャンスはいくらでもあったのだ。それなのに、私の元を離れなかった彼女に対し、私はただひたすら神様に祈ることしか出来なかった。すると、ジェシカは必ず私にハンカチを持ってきてくれて、
「可愛いお顔が台無しですよ」
と言ってくれた。この世界の人を誰も信じられないと言っても、ジェシカだけは別だった。
私は原点回帰する必要を感じた。つまり、皇帝がどうして婚約破棄しようとしているのか、その原因を思い浮かべ始めた。もちろん、エリーが私よりも魅力的だというのは理由の一つだった。でも本当にそれだけ?それだけの理由で私を疎んじる?ひょっとして、もっと他の原因が私にあるのでは?そう考えた。
機会はめっきり減ったが、それでも月に1回くらいは皇帝と食事を共にしていた。私は皇帝の振る舞いから、私の非を感じ取ろうとした。
「食事が細くなったようだな……」
皇帝はいきなりそう言った。
「そうかもしれませんね……」
確かにストレスのせいで、随分痩せこけた。食欲がなかった。食べ物を目にするだけで億劫……これは病的だった。
「あの頃の面影は何もない……クリスは死んだのか?」
「はいっ……遥か昔に置いてきたようです」
「どうすれば元に戻るのだ?」
皇帝は私の復活を考えていたのだろうか?いや、体裁の問題だろう。正妻、つまり今の私を世間に曝すのが忍びなさすぎて困惑という具合だったのだろう。
「分かりません」
「そうか……」
皇帝が私に最後の食事を与えてくれた。皇帝の瞳が少し暗かったのを今でも覚えている。
最後にやり直すチャンスはあの時だったのかもしれない……しかしながら、狂い始めた人生を修正することはできなかった。私はもう二度と皇帝と言葉を交わさないだろうと思った。
私のお世話をしてくれる人々の数もめっきり減った。ジェシカと言う古い侍女が最後まで残ってくれた。彼女もまた、古典的な侍女であり、一度仕えた主人には何があっても生涯仕えるという信念があったみたいだ。
「でもそうすると、あなたの株が落ちるわよ……」
私はジェシカのことを不憫に思った。侍女と言うのは、主人と運命共同体である。主人が失脚すれば、侍女の評判も一緒に落ちるのが当たり前だった。しかしながら……私の元を離れるチャンスはいくらでもあったのだ。それなのに、私の元を離れなかった彼女に対し、私はただひたすら神様に祈ることしか出来なかった。すると、ジェシカは必ず私にハンカチを持ってきてくれて、
「可愛いお顔が台無しですよ」
と言ってくれた。この世界の人を誰も信じられないと言っても、ジェシカだけは別だった。
私は原点回帰する必要を感じた。つまり、皇帝がどうして婚約破棄しようとしているのか、その原因を思い浮かべ始めた。もちろん、エリーが私よりも魅力的だというのは理由の一つだった。でも本当にそれだけ?それだけの理由で私を疎んじる?ひょっとして、もっと他の原因が私にあるのでは?そう考えた。
機会はめっきり減ったが、それでも月に1回くらいは皇帝と食事を共にしていた。私は皇帝の振る舞いから、私の非を感じ取ろうとした。
「食事が細くなったようだな……」
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「そうかもしれませんね……」
確かにストレスのせいで、随分痩せこけた。食欲がなかった。食べ物を目にするだけで億劫……これは病的だった。
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「はいっ……遥か昔に置いてきたようです」
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「分かりません」
「そうか……」
皇帝が私に最後の食事を与えてくれた。皇帝の瞳が少し暗かったのを今でも覚えている。
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