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その5
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待ちぼうけを食ってから、もう2時間経った。まさか、本当に敵と言うことで、この場で殺されたりはしないだろうか?もしそうだとしたら、早くこの場から逃げ出したほうがいい。でもどうやって?国境には関所があるから、自由に通行することができない。ああ、どうしようどうしようどうしよう。
でも、今更向こうへ戻ったって、私は何もできないんだから。
「パミーナ様ですか?」
私の名を呼ぶ女の声が聞こえた。
「はい?そうですけど……」
声の方に振り向くと、たまげたことに、美しい姫様だった。きっと、男たちが言っていたミクリッツ様なのだと思った。
「ミクリッツと申します……」
やっぱりそうだった。これだけ美しくて、しかも、おしとやかな雰囲気ときたら、国中の男たちが姫様を守りたいと思うのは当然だった。
「パミーナ様。我が国の兵どもが、ご迷惑をお掛け致しましたようで、お詫び申し上げます」
「お詫びですって?そんな、私は大丈夫ですから。お顔をあげてください!」
ミクリッツ様は非常に腰の低い姫様だった。
「少しの間、パミーナ様とお話がしたいから」
と言って、心配する男どもを遠ざけた。男たちは、私のことを殺気溢れんばかりの眼差しで睨みつけた。
「本当に、ごめんなさいね……」
ミクリッツ様が代わりに謝った。国が違うとはいえ、彼女もまた貴族だ。しかも、姫様だ。この違いは一体何なのだろう?私はふと考えてみた。私だって別に姫様ではない。しかしながら、彼女のように笑っていられることができない。
「ミクリッツ様!」
私たちは、例えるならば公園のベンチに腰かけていた。貴族だけではなく、泥だらけになった庶民の子供たちもたくさんいた。子供たちは姫様に手を振っていた。
「みんな、元気だね!」
ミクリッツ様も、手を振り返していた。
「ミクリッツ様……お言葉ですが、はしたなくありませんか?」
私は元からこういう性格だった。変だと思うことは、そのままつい、口に出してしまった。
でも、今更向こうへ戻ったって、私は何もできないんだから。
「パミーナ様ですか?」
私の名を呼ぶ女の声が聞こえた。
「はい?そうですけど……」
声の方に振り向くと、たまげたことに、美しい姫様だった。きっと、男たちが言っていたミクリッツ様なのだと思った。
「ミクリッツと申します……」
やっぱりそうだった。これだけ美しくて、しかも、おしとやかな雰囲気ときたら、国中の男たちが姫様を守りたいと思うのは当然だった。
「パミーナ様。我が国の兵どもが、ご迷惑をお掛け致しましたようで、お詫び申し上げます」
「お詫びですって?そんな、私は大丈夫ですから。お顔をあげてください!」
ミクリッツ様は非常に腰の低い姫様だった。
「少しの間、パミーナ様とお話がしたいから」
と言って、心配する男どもを遠ざけた。男たちは、私のことを殺気溢れんばかりの眼差しで睨みつけた。
「本当に、ごめんなさいね……」
ミクリッツ様が代わりに謝った。国が違うとはいえ、彼女もまた貴族だ。しかも、姫様だ。この違いは一体何なのだろう?私はふと考えてみた。私だって別に姫様ではない。しかしながら、彼女のように笑っていられることができない。
「ミクリッツ様!」
私たちは、例えるならば公園のベンチに腰かけていた。貴族だけではなく、泥だらけになった庶民の子供たちもたくさんいた。子供たちは姫様に手を振っていた。
「みんな、元気だね!」
ミクリッツ様も、手を振り返していた。
「ミクリッツ様……お言葉ですが、はしたなくありませんか?」
私は元からこういう性格だった。変だと思うことは、そのままつい、口に出してしまった。
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