拝啓王子様 婚約破棄の憂さ晴らしに全力で復讐します

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クトゥルフ遠征 その1

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私はクトゥルフまで歩いた。最後まで私に忠誠を誓う若人たちの誘いを断り、孤独の旅を選んだ。

クトゥルフの地が流刑地たる理由は諸説あるが、一番確かなことは、人が人で無くなる地であり、本能に任せて生き続けるか、戦いに負けて死んでいくか、このどちらかを選択しなければならない。

クトゥルフに集うのは、貴族階級の罪人がほとんどである。私のように、勝手な罪をなすりつけられて婚約破棄された令嬢か、自分よりも上流な貴族の娘を寝取ったことを咎められた男子がほとんどだが、中には人の道を踏み外した、つまり、殺人者も少数いるという。


門をくぐるとすぐに分かった。この世界は私を葬るのに十分である。令嬢としてのプライドを一瞬にして奪い、思考停止に陥り、慰めのために男漁りを始め、一時の恋に揺れ、全てが夢の彼方へ消えていく…………私は自動的に終わるのである。

「あらっ、新入りの方?」

私に声をかけてきたのは、少女だった。皆まで言わなくてもわかった。この手の小悪魔は色々と罪深い。それに比べて私はどうだろうか、と嘆いてみる。

「…………………………」

ああっ、もう既に思考停止だ。

「初めまして。カーチャと申します。以後お見知り置きを、お姉様」

お姉様って……。この子は女も誑かすのか?

「お姉様。ここにいらっしゃるということは、何か罪を犯されたのですか?」

別に、この可愛い女の子に説明したところで、何かが変わるなんて思わなかった。でも、このフィールドで生きるためには友人(?)が必要だと思った。嘘か誠か、いや、考えても失うものはない。だから、私は全てを打ち明けた。

「ふーん、なるほど……」

少女も同じ境遇なのだろうか?死刑を免れたのは、この美貌を失いたくない貴族のエゴなのか、あるいは?

「だったら……」

少女は私の耳元に唇を近づけて、

「王子様を殺しちゃえば?」

と言った。なるほど、彼女は小悪魔どころじゃなかった。そんな彼女の戯言が、私には魅力的だった。

「なるほどね」

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