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その19
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令嬢と言うのは、元々の美しさというものがあります。そして、その美しさに化粧などを加えて、より一層、その美しさを引き立てることになります。
サリーのように元から美しい令嬢は、そう多くはありませんから、私たちのように通常の令嬢は化粧でもして、ある程度美しさを上げるしかありません。つまり、自分の意志で向上する美しさと言えばいいでしょうか。
私はあまり化粧が好きではありません。人工的な美しさなんて、そんなものはすぐに剥げてしまうことを知っておりました。常にサリーと比較されてきたので、何をしても無駄であるという考えに凝り固まっているのかもしれませんが……。
朝起きて、身支度を整えます。もちろん、鏡に面と向かって、自分の顔を拝むことになります。今日も普通の顔……そう思っておりましたが、メイドのマイマイだけは、少し違った、面白いことを言うのです。
「マリア様。おはようございます。今日もお美しいお顔ですね!」
「ああ、マイマイ。おはよう。別に綺麗じゃないわよ」
「いいえ、そんなことはないですよ。マリア様はなんというか、その……山のように美しいのです!」
「なるほど、ありがとね」
身支度を整えて、部屋を出ると、偶然、伯爵とすれ違いました。
「マリアか……」
伯爵は、私だと気がつくと、はあ、とため息をつきました。相変わらずの素っ気ない態度……これはこれで、正直で悪くないと思いました。
私の元を通り過ぎて、
「ああ、そう言えば、一つ言い忘れていることがあった」
と言って、こちらに振り返ってきました。
「言い忘れたこと?何でしょうか?」
「ああ、興味があればで結構なのだが、今夜、私が主催する夜会があるのだが……参加するか?」
主人の主催する夜会に妻が出席しないと言うのは、いくらなんでもまずいと思いました。勿論、私はこの辺境で公式に認知されているわけではありません。だからこそ、形だけとはいえ、伯爵が私のことを紹介する形をとった方がいいのではないでしょうか?それが、令嬢マリアの責務だと思いました。
「もちろん、無理にとは言わない。無理にとは言わない……無理にとは言わないが、どうだろうか?」
伯爵は何度も繰り返しました。ようするに、参加しろ、と言っているのでした。
「喜んで、参加させていただきますわ」
私は答えました。
「そうか……それならいいんだ。ああ、夜会のドレスは、メイドに頼んでおくから、メイドの言う通りにしてくれ。それでは、私はこれから仕事に行くから……」
そう言い残して、伯爵は屋敷を出て行きました。
暫くして、マイマイが飛んでまいりました。
「マリア様、夜会に参加なさるのですか?」
マイマイに聞かれて、私は、
「もちろん」
と答えました。
「あの……非常に申し上げにくいのですが……参加なさらない方がいいと思いますよ?」
マイマイは、どうやら、私が夜会に参加することを勧めないようでした。私がこのパーティーに参加しないことを強く望んでいるようでした。
令嬢の悲劇……例えば、婚約破棄など、そういった現象は夜会で起きることが多いのです。恐らく、マイマイはそれを危惧していたのかもしれません。でも、私は夜会に参加することを決めました。
サリーのように元から美しい令嬢は、そう多くはありませんから、私たちのように通常の令嬢は化粧でもして、ある程度美しさを上げるしかありません。つまり、自分の意志で向上する美しさと言えばいいでしょうか。
私はあまり化粧が好きではありません。人工的な美しさなんて、そんなものはすぐに剥げてしまうことを知っておりました。常にサリーと比較されてきたので、何をしても無駄であるという考えに凝り固まっているのかもしれませんが……。
朝起きて、身支度を整えます。もちろん、鏡に面と向かって、自分の顔を拝むことになります。今日も普通の顔……そう思っておりましたが、メイドのマイマイだけは、少し違った、面白いことを言うのです。
「マリア様。おはようございます。今日もお美しいお顔ですね!」
「ああ、マイマイ。おはよう。別に綺麗じゃないわよ」
「いいえ、そんなことはないですよ。マリア様はなんというか、その……山のように美しいのです!」
「なるほど、ありがとね」
身支度を整えて、部屋を出ると、偶然、伯爵とすれ違いました。
「マリアか……」
伯爵は、私だと気がつくと、はあ、とため息をつきました。相変わらずの素っ気ない態度……これはこれで、正直で悪くないと思いました。
私の元を通り過ぎて、
「ああ、そう言えば、一つ言い忘れていることがあった」
と言って、こちらに振り返ってきました。
「言い忘れたこと?何でしょうか?」
「ああ、興味があればで結構なのだが、今夜、私が主催する夜会があるのだが……参加するか?」
主人の主催する夜会に妻が出席しないと言うのは、いくらなんでもまずいと思いました。勿論、私はこの辺境で公式に認知されているわけではありません。だからこそ、形だけとはいえ、伯爵が私のことを紹介する形をとった方がいいのではないでしょうか?それが、令嬢マリアの責務だと思いました。
「もちろん、無理にとは言わない。無理にとは言わない……無理にとは言わないが、どうだろうか?」
伯爵は何度も繰り返しました。ようするに、参加しろ、と言っているのでした。
「喜んで、参加させていただきますわ」
私は答えました。
「そうか……それならいいんだ。ああ、夜会のドレスは、メイドに頼んでおくから、メイドの言う通りにしてくれ。それでは、私はこれから仕事に行くから……」
そう言い残して、伯爵は屋敷を出て行きました。
暫くして、マイマイが飛んでまいりました。
「マリア様、夜会に参加なさるのですか?」
マイマイに聞かれて、私は、
「もちろん」
と答えました。
「あの……非常に申し上げにくいのですが……参加なさらない方がいいと思いますよ?」
マイマイは、どうやら、私が夜会に参加することを勧めないようでした。私がこのパーティーに参加しないことを強く望んでいるようでした。
令嬢の悲劇……例えば、婚約破棄など、そういった現象は夜会で起きることが多いのです。恐らく、マイマイはそれを危惧していたのかもしれません。でも、私は夜会に参加することを決めました。
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