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幼女
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「あなたは本当に私のことが好きなんですか?」
私が婚約することになった女性は未だ子供なので、恋と言うものが分かりません。
「すき」
好きっていう意味も分からないでしょう。まったく、小さな子がいいって言っても限度があるものです。
親から与えられた縁談をことごとく断ってきた私のゴールは捨て子でした。本当はもっともっと身分の高い御令嬢と結婚する方がよかったみたいですけど、イメージアップにつながるという理由で話が進みました。
「はいはい、分かりました。本当に好きなら困らせないでください。はい、残さず食べてください」
「いやいや……」
「そうやって可愛く首を振っても駄目ですよ?ほら、ちゃんと食べないと成長しませんよ?」
「べつにせいちょうしなくたっていいもん……」
「はあっ……困った困った……」
「きらいなんだから、むり!」
令嬢はそう言い放ちました。
「おにいちゃんがかわりにたべてよ」
「仕方ないか……」
因みに令嬢が嫌いなのは、熟れたピーマンです。
「あんなにがいのたべるなんて……バカじゃないの?」
「はいはい、バカで結構ですよ……」
軽く嫌味を言いつつ、全て食べ終わると、
「ありがと」
と言いました。
「今度はちゃんと食べましょうね」
「……ぜんしょする……」
「全く……言葉だけは大人なんだよな……」
そのギャップがいいというか……いや、なんでもありません。
「おにいちゃんはきらいなものあるの?」
「もちろんありますよ」
「なになに?おしえて!」
令嬢は目をキラキラと光らせました。
「そうですね……。我儘なお嬢様とか」
「わかる。わがままってダメだよね」
「あと、好き嫌いの激しいお嬢様とか……」
令嬢はふと立ち止まりました。
「おにいちゃん……それってもしかしてわたしのこと?」
「さあ……どうでしょうね?」
令嬢は顔を膨らませました。
「おにいちゃんのイジワル!」
「私のこと、嫌いになりましたか?」
「だいきらい!」
「そうですか……さようなら」
「えっ、どうして?」
「私のことが嫌いなら、ここにいる必要はないでしょう?」
「うぅっ…………」
「ほら、どこへでも行ってください……」
「まって……どうしたらゆるしてくれる?」
令嬢は焦っていました。そんなところも可愛いんですけどね。
「そうですね……私のことが好きって証明してください」
「どうやって?」
「あなたに任せます」
「うっっ……わかんないよっ……」
困った顔を見れるのも私の特権です。
「では婚約破棄ということで……」
「ああっ、わかったわかった!」
令嬢は私の胸元に勢いよく飛び込んできました。そして……。
「こうやって、こうやってね!」
「何をするんですか?」
「めをとじて!」
「どうして?」
「どうしても!」
「はいはい」
令嬢の優しい唇に触れたのは、これが初めてでした。子供のわりに大人ですね。そうとなればこのまま……。
「ううっ……おにいちゃんのおくち、にがいよっ……」
初恋の味は苦いと言いますから。
「よくできましたね。お嬢様……」
「ううっ…………」
今度から口移しでピーマンを食べさせればいいんだ、なんてどうでもいい発見をした1日でした。
私が婚約することになった女性は未だ子供なので、恋と言うものが分かりません。
「すき」
好きっていう意味も分からないでしょう。まったく、小さな子がいいって言っても限度があるものです。
親から与えられた縁談をことごとく断ってきた私のゴールは捨て子でした。本当はもっともっと身分の高い御令嬢と結婚する方がよかったみたいですけど、イメージアップにつながるという理由で話が進みました。
「はいはい、分かりました。本当に好きなら困らせないでください。はい、残さず食べてください」
「いやいや……」
「そうやって可愛く首を振っても駄目ですよ?ほら、ちゃんと食べないと成長しませんよ?」
「べつにせいちょうしなくたっていいもん……」
「はあっ……困った困った……」
「きらいなんだから、むり!」
令嬢はそう言い放ちました。
「おにいちゃんがかわりにたべてよ」
「仕方ないか……」
因みに令嬢が嫌いなのは、熟れたピーマンです。
「あんなにがいのたべるなんて……バカじゃないの?」
「はいはい、バカで結構ですよ……」
軽く嫌味を言いつつ、全て食べ終わると、
「ありがと」
と言いました。
「今度はちゃんと食べましょうね」
「……ぜんしょする……」
「全く……言葉だけは大人なんだよな……」
そのギャップがいいというか……いや、なんでもありません。
「おにいちゃんはきらいなものあるの?」
「もちろんありますよ」
「なになに?おしえて!」
令嬢は目をキラキラと光らせました。
「そうですね……。我儘なお嬢様とか」
「わかる。わがままってダメだよね」
「あと、好き嫌いの激しいお嬢様とか……」
令嬢はふと立ち止まりました。
「おにいちゃん……それってもしかしてわたしのこと?」
「さあ……どうでしょうね?」
令嬢は顔を膨らませました。
「おにいちゃんのイジワル!」
「私のこと、嫌いになりましたか?」
「だいきらい!」
「そうですか……さようなら」
「えっ、どうして?」
「私のことが嫌いなら、ここにいる必要はないでしょう?」
「うぅっ…………」
「ほら、どこへでも行ってください……」
「まって……どうしたらゆるしてくれる?」
令嬢は焦っていました。そんなところも可愛いんですけどね。
「そうですね……私のことが好きって証明してください」
「どうやって?」
「あなたに任せます」
「うっっ……わかんないよっ……」
困った顔を見れるのも私の特権です。
「では婚約破棄ということで……」
「ああっ、わかったわかった!」
令嬢は私の胸元に勢いよく飛び込んできました。そして……。
「こうやって、こうやってね!」
「何をするんですか?」
「めをとじて!」
「どうして?」
「どうしても!」
「はいはい」
令嬢の優しい唇に触れたのは、これが初めてでした。子供のわりに大人ですね。そうとなればこのまま……。
「ううっ……おにいちゃんのおくち、にがいよっ……」
初恋の味は苦いと言いますから。
「よくできましたね。お嬢様……」
「ううっ…………」
今度から口移しでピーマンを食べさせればいいんだ、なんてどうでもいい発見をした1日でした。
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