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暴露

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「カリーナ……あなた一体……」

これ以上、カリーナに声をかけることなんてできませんでした。驚きというか、それ以上に、どうして自分に内緒でこのようなことをしたのか、アントニー様はどうして秘密にしたのか……いろいろ考えているうちに、頭がパンクしそうでした。

「おや、カリーナさんはキャシーの妹だったのかね?それは知らなかったな」

「まあ、ということは、あなた、それまずいんじゃないの?」

アントニー様の母親が、今度は怒り出しました。アントニー様は気づかなかったのでしょうか?それとも……私のことを茶化しているのでしょうか?

そんなことはどうでもよかったのです。一番の問題、つまり、カリーナが身篭ったことですが、こればかりは何も言えませんでした。カリーナの幸せそうな顔、その裏にはどこか欺瞞と勝者の余裕がありました。

「お姉様。私、申し上げたつもりですよ?早くしないと奪われてしまうって……」

カリーナにはすっかり負けました。私に対する裏切り、あるいは冒涜、昔だったら許せたはずなのに、私はまるで、昔の私を忘れていました。疑心暗鬼に陥って、アントニー様はじめ、全ての人々が私のことを嘲笑っているように思いました。

「心配することはない。表向きは、キャシーの子供として育てていくから。カリーナさん、それでいいんだね?」

「はい、もちろんですわ!なんと言っても、アントニー様の正妻はお姉様なのですから!お姉様、ご安心くださいませ!」

背徳に満ちた優しさを、私はただ受け入れることしかできませんでした。
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