婚約破棄のいざこざで処刑される前に世界をぶっ壊してみる

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怒りと抵抗

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 私は生き続けたい。理由?特にはないけど、可愛い男の子をたくさん育てて、お母さんって呼ばれると本当に嬉しいから。血の繋がりなんてどうでもいい。争いの引き金になるだけだ。私はただ天使たちを神様の示した道から外れないようにナビゲートするのが仕事だった。

 でも、この世界は私を殺そうとしている。神様の示した道から外れたこの国の王子が私と一夜の契りを交わし、その後すぐさま婚約を破棄。おまけに私を抹殺しようとしている。

 私は今、牢にはいっている。明日処刑されるのをただ待っている。魔法なんて素晴らしいものがあれば、この世界を変えることができる。

 世界は幻想と真実の両輪で動く。こんな私でも、救いの手を差しのべてくれる人がたまには現れる。

「お母さん、助けに参りましたよ」

 私が育てた天使たち。

「危ないから帰りなさい」

 そんな天使たちも死んでいく。私が死んで、子供たちも死んでいく。王家の民は子供が嫌いだ。私を嫌う理由は、こんなバカげた理由なのだろう。子供がいなければ、貴様たちの世界が滅びるというのに。

「お母さん、僕たちは平気です。さあ、早くここからお出になってください」

 どこで術を身につけたのか知らないが、天使たちは人の殺し方を心得ていた。彼らは恐らく不死身だった。兵士に追いかけられて鉄砲の傷を負ったとしても、直ぐに血が止まり傷は癒えた。

「お母さんが見守って下さるから、僕らは何でも平気なんですよ……」

 私は天使たちを抱きしめた。これは夢なのだろうか?いや、幻想か?

「さあ、行きましょう!」

 天使たちは黄金の矢を兵士たちに浴びせた。少しばかりかすっただけで、跡形もなく消えていった。

「どこで手に入れたの?」

「お母さんの家にありました」

「私の?」

「そうです。さあ、早く」

 慌てふためく王子の姿を見るのは初めてだった。天使たちの姿が見えないのだろう。美しく輝く絶望の光が降り注ぐ。側近や家族を全て消し、私と王子が対峙した。

「これは、どういうことだ……」

 力なく倒れこむ敵将を天使たちは嘲笑っていた。

「みんな、静かに」

「お母さん、僕たちが始末しましょうか?」

「そうね……この者を滅ぼして、その後は私を殺しなさい」

「どうしてですか?」

「どのみち死ぬ運命だから。この世界は好きじゃない。あなたたちの好きにしなさい。どうなの?」

「僕たちだって、この世界は好きじゃないですよ」

「そう、それならとりあえず壊しましょうか?」

「それがいいと思います」


「おい……さっきから、なにブツブツ言ってるんだ……?」

 王子のことなんてすっかり忘れていた。物の怪に取りつかれてもうじきどこか、人に非ずの世界へ飛ばされる罪人のようだった。

「いえ、この後の世界を占っていたんですよ」

「お前は……何者だ?」

「私ですか?普通の人間ですよ?」

「ふざけるな!」

 負け犬の遠吠えと言うのは見苦しい。どのみち終わるのだから止めを刺す。私は天使たちに相槌を打った。弓を構え、全ての絶望を王子一人に捧げるように。この世界の黒を全て王子の胸元に封印するように。

「私はね、普通に結婚して子供を産んで、この世界を豊かにして。普通の幸せを手にいれたかった女です!」

 これは夢なんだろうか?それとも現実?

 どっちにしても、死ぬ運命を変えることはできない。次にどういう世界ができるのか、それは神様に任せるとして、天使たちを育てることにしよう。幸せになる権利はあるはずだから。


 
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