死ぬ前にちょっと付き合ってよ ~中間女子高生の復讐~

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プロローグ

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「君の場合は、イジメとは言えないだろうね」

今でもはっきり覚えている。高校1年の夏、担任の口から漏れたとどめの一撃だった。


私は全てにおいて中間に位置する女子高生だった。勉強の成績が特別優れているわけではなく、スポーツが万能というわけでもなく、特別美しいというわけでもなかった。だから、入学した日の自己紹介では、

「大野美紀と言います。これからよろしくお願いします」

と、なんの面白みもない挨拶をした。名前もいたって普通。すると、顔も知らない39人の生徒たちから、型通りの拍手をもらった。

それでよかった。高校生活は3年間。何もせず、1日を消費し続ければ、終わりがやってくる。帰宅後、机の上のカレンダーに向かい、4月8日を黒く塗りつぶした。

それからの日々について、正直あまり多くは語りたくない。クラスメイトから無視されるのは慣れていたし、何よりも孤独を選択したのは私だったので、それ自体は別に平気だった。

高校には無言のカーストと言う物が存在する。大きく3つの階層に分類することができる。最上位層は、誰もが羨むような美男美女、あるいは成績優秀、スポーツ万能な生徒のプレミアである。最下位層はその逆と言えばいいだろうか?そもそも相手にされることがないから、話題にもならない。それこそ、今私がしようとしているように、この世界から消えてしまったとしても、涙を流す人はいないはずだ。

肝心の私は、と言うと、恐らく中間層になる。つまり、どっちつかずだ。学園生活を楽しもうと思ったら、カースト最上位層の生徒たちとつるむ必要がある。俗に言うパシリだ。最上位層の生徒の要求に何でも答えなければならない。

私にはそんな器用な人生、できないんだよ。

私のクラスに最上位層の生徒は1人しかいなかった。千代田守という男子で、この学園の御曹司である。金持ちであることを自慢することが趣味らしく、手下の中間層生徒たちに頼みごとをしては、手間賃を払い続けている。

「こんな金、お前らにくれてやるさ!」

千代田の手下は随時募集中である。パシリとは言っても、せいぜいコンビニでお菓子を買ってくるくらいなのだが、手間賃は割と高い。金欠で困っている高校生には頼もしい。本人もそれで喜んでいるのだから悪くはない。

私も一度だけ、勇気を出して千代田のパシリを体験したことがある。

「あの、千代田君?」

「はいはい、どうしたのかな?えっと……君の名前は?」

「大野です」

「あっ……大野さんね!はいはい、何か用かな?」

「いえっ……こちらこそ、何か御用はありませんか?」

「御用……ああっ、君もパシラレに来たのね?オッケー!ちょうどいい仕事があるんだ。こっちに来てくれるかな?」

千代田は私を先導した。コンビニじゃないのかな?もっと他の仕事?

千代田が進む方向には、多くの女子がたむろしていた。皆、何かひそひそと呟いていた。千代田は結局、女子トイレの前で止まった。

「ココの一番奥でね、人が死んだそうなんだ。君、遺体の処理をしてくれないか?ほら、金ならこれくらいで……」

千代田は懐から万札を数枚取り出した。

「遺体の処理……ですって?」

私は何が何だか理解できず、声を荒げてしまった。

「しっー!声がデカいよ。小沢さん!」

私は大野なんだけど……じゃなくて、どうしてトイレに死体があるのよ!


「うそっ……秋山、自殺したの?」

「そうみたいね。バカな女よ。千代田君と付き合うだなんて、身の程を知らないバカだわ!」

「昨日さ、水をぶっかけてやったわ!アイツの泣いてる顔、チョーウケたんですけど、マジで!」

「ウソ?マジで?そんなの、せんせーにばれたら、あんた退学になっちゃうよー」

「大丈夫よ。千代田君がなんとかしてくれるわよ!ねえっ、千代田君?」

「先輩方、どうか落ち着いてください……」

千代田は私の方をちらっと見て、早くトイレに入るように促した。

秋山と言う女子生徒が自殺したのは、どうやら本当だった。目を瞑ったまま、天井を見上げていた。床には恐らく毒薬の入っていたと思われるビンが、多少ヒビの入った状態で落ちていた。

「どうして……自殺なんか……」

あの時、私は冷静だった。思い返せば、私もいつかこうなることを予測していたのかもしれない。
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