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その8

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「復讐、ですか。なるほど、あなたらしい考え方ですね」

あなたらしい、というよりかは、これが令嬢たるプライドの所以でした。確かに、まともに王子様と戦うことなんてできませんが、みんなでまとまれば、あるいは、勝機はあるものと信じていました。

「ハブ様が何を考えておられるか、あなた様もご存知ですね?」

私がこう質問すると、メリー様は、

「はい」

と答えました。

「いくら王家のことを思って故とはいえ、誠にひどい話だとは思いませんか?」

私がこう言いますと、メリー様は、

「しかしながら、私たちがいくら戦おうと決意したところで、ハブ様に叶うはずもありません」

と冷静に答えました。

「まぁ確かに、普通に考えればそういうことになりますよね」

私は言いました。

「でもね、私たちには力強い味方がいるんですよ」

すると、メリー様は起き上がって、私に質問しました。

「それは一体、どういう方達ですの?まさか、軍人たちを買収して?」

メリー様の考え方は、やはり、貴族的でした。無理もありません。私と違って、彼女はある種の正当な貴族令嬢なわけでございます。だから……平民がどうこうと考えるはずもないのです。

「彼らが本当に私たちのために力を貸してくれると言うんですか?」

メリー様はやはり、信じられないようでした。

上流になればなるほど、平民との距離は遠ざかり、それ故に平民が何を考えているのか、なんてそんなことはどうでもよく、自分たちの信念などは相容れないと考えるのでした。

「恐れながら申し上げますが、彼らはあなた様の考える人間とは違うんですよ」

「では具体的にどう違うと言うのか、お聞かせ願いましょうか?」

メリー様の質問にまともに答える手段を、あるいは方法を、私は持ち合わせていませんでした。

「どうか、これから彼らが話すことによーく耳を傾けてみてください。彼らの信念は、ある意味私たち貴族が抱いているものよりずっと強いのです。ですから、彼らの力を借りれば、この世界を変革することだってできるんですよ」

説得力のある答えを示すことができませんでした。しかしながら、メリー様は私の話を真剣に聞いてくださいました。そして、彼らの話を聞こうとしました。

「内緒ですが、何人かお連れしています。さあ、お入りください」

私がこう言って、平民の皆さんが入ってきました。彼らの熱い眼差しを見て、メリー様もいろいろと考え直したようでした。

私は再び、このタイミングで勝利を確信しました。メリー様を味方につけることができれば、後は簡単だと思いました。
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