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その13

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「だからと言って……向こうが一方的に頼んできたのだとしたら、何も私の責任と言うことにはならないだろう?」

「あらあら、往生際が悪いですわね?そこまでして逃れるおつもりですか?まあ、いいでしょう。それでは……こちらにいらっしゃる、メリー様の件についてはいかがでしょうか?こちらに関しても、不正の証拠は既に入手しているのでございますよ?さあ、これについても言い逃れなさるおつもりですか?」

私たちがハブ様に詰め寄ると、ハブ様はいよいよ言葉にたえられなくなって、剣を抜きました。

「ふざけるな!!!」

と、ハブ様はお怒りになりました。まあ、ここまでは予想通りでした。

「君たちの戯言をこれ以上聞く必要はない。今だったら見逃してやるから、さっさとここから出ていきなさい!!!」

さすがは王子様。お言葉だけは立派なのです。最も……裸の王様とは、この人のことを言うのでしょうが……。


「ですがね、残念ながら、ハブ様はもう包囲されているのですよ?」

「何を言っているんだ!!!そんなはずはないだろう!!!」

「いいえ、それが本当なのですよ。今まで貴族に反感を抱いていた平民たちの怒りが局地に達しましてね、あちこちから、この王宮めがけてやって来ているのですよ。ああ、私は殺し合いを好まないのですが、それは彼らの意志なのです。この腐りきった貴族社会を終わらせるためならば、と命をなげうって戦う人々の意志を、私はハブ様に伝えるのが役割なのです」

「そんなことをしたら、君やメリーだって、滅びることになるじゃないか!!!そんな都合の悪い話を、君たちが了承するわけないんだ!!!」

「ええ、私たちだって、こうして王子様の元にやって来るのは命懸けだったわけでございます。基、あなた様達が続けようとなさるこの世界に生き続けるくらいならば、私は潔く死を受け入れましょうぞ!!!」

「ふざけるな!!!だとしたら、私がまず初めに君を殺す!!!覚悟しろ!!!」


ハブ様は切先を私の胸に向けて、突進してきました。私は静かに目を閉じました。
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