上 下
12 / 15

その12

しおりを挟む
「まずは、そうですね。私たちをたぶらかした例の青年についてお話ししましょうか?」

例の青年と言うのは、私が婚約破棄される原因となった青年のことでした。一応、私の遠い親戚と言うことになっておりました。ですが、皆様の協力で、それは全く関係ないでっち上げだと判明したのです。

「そんなことはない、私は一切嘘はついていないぞ!」

ハブ様の歯切れがだんだん悪くなってきました。まぁ、それも当たり前のことなのです。だって、本当に嘘の話なのですから。私たちはその証拠を持っています。ハブ様が、例の青年の父親に宛てた手紙の内容です。

「彼の父親は、確かに私の父と同じような境遇だったのかもしれません。貴族とは言えども、下級貴族で、地方の役人をしています。そして、その出世をあなた様が画策したわけでございますね?」

「出世、そんなことが私1人の一存で決められると思っているのかね?」

「ええ、決められますとも。なんといっても、あなたはそれ相応の地位にあられるわけですから。ああ、しかし、あなた様も罪深いですね?だって、最終的には全ての貴族を滅ぼそうと目論んでおられるわけでしょうから、あなた様の計画が全て成就した暁には、その親子も奴隷になるか、あるいは、打ち首になるか、そのどちらかを選択することしかできないといいますのに……」

「ちょっと待ってくれ。いきなり何を言い出すかと思えば、根も歯もないことを……そんなにベラベラと言えたものだなあ!」

「根も歯もないこと?言ったでしょう?私たちは既に証拠を入手したのでございます。平民のネットワークは、私たちが想像しているよりも遥かに広いんですよ?ですから、青年のエリアで何が起きているのか、そんなのも意外と簡単にわかってしまうものなのですよ?」

「馬鹿馬鹿しい!そうだとして、それがその青年の父親が書いたことを証明できるのか?」

ハブ様は的を射ない反論しかできないみたいです。

「だってここに……ほら、あなた様のサインが書かれているではありませんか。そして……ほら、宛先には例の青年の名前と、その父親の名前がシッカリと!」

ハブ様はだいぶ劣勢になって参りました。

しおりを挟む

処理中です...