妹に婚約者を奪われて婚約破棄~最弱令嬢の負け戦?~

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その1

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「リットン様???どうしてですか???」

婚約者である第一王子のリットン様が、突如私を呼び出して、婚約破棄を宣言しました。

「私は君の妹であるテレサと婚約することに決めたんだ……」

「その理由は、なんでしょうか???」

「ああ、本当は説明したくないのだが……君を愛するよりも、それ以上に、私はテレサのことを愛してしまったと、こういうわけなのだ……」

「リットン様!!!私は幸せでございます!!!」

タイミングが良すぎると言えば、これほどいいことはなかったと思います。それにしても……どうしてなのか、私には大体の察しがついておりました。リットン様も私より遥かに美しいテレサを選ぶのは、当たり前だと思いました。長女が王子と婚約するというのは、古い習わしなのでございますが、いまさらそんな古めかしい習わしを、私たちのような若者は気にしませんでした。皇帝陛下を始めとして、私たちの両親もみな、そのようなことについて、いちいちとやかく言うことはなかったのです。むしろ、私の両親は、その美しさを見込んで、私よりもテレサを一生懸命育てました。テレサが王子と婚約できないことに落胆し、それと同時に、なるべく上位の貴族と婚約できるように教育を施したのでございます。

テレサはテレサで、いかにも貴族趣味でした。パーティーに出向くと、私よりも格段と良い待遇を受けました。本来ならば、長女の私を差し置いて、次女のテレサがでしゃばるなんてことはあり得ないのですが、仕方がありませんでした。それほど、私たちの間には大きな差と言いますか、越えられない壁と言いますか、そのようなものが確実に存在していたわけなのでございます。

「お姉様???これで分かりましたでしょう???リットン様が私のことを新しい婚約者に選んでくださいましたの。申し上げにくいことではございますが、お姉様はリットン様の隣にいても、全く意味がないと言いますか、つまり、リットン様を華やかに引き立てることができないのでございますから、ご理解くださいませ!!!」

もちろん、理解できました。そんなことは百も承知でした。だから……私は二人が微笑んでいる姿を目に焼き付けて、渋々と広間を後にしたのでした。

「私は君を妻に迎え入れることができて幸せだよ……テレサ……」

「私も、末永くリットン様の妻として頑張りたいと思いますわ!!!」

二人は互いにそう語りかけておりました。
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