冒険者を生還させるな!と命じられた超一流の迷宮ガイド、魔獣生物学者の助手に転職する~高年収な上に美少女ダークエルフと旅ができて最高です~

和泉鷹央

文字の大きさ
12 / 52
第一章 ダークエルフ

第11話 駅舎の裏で

 地下世界の昼は地上のそれにくらべて、幾分薄暗く感じる。
 各駅を順番に周回して王都へと向かう駅馬車たちに、客がやってくるのをただ列を成して待つ辻馬車の一群がいる。

 人と馬とそれを乗せる大小の差はあるが箱馬車だけかと思えば、荷車を引いて人以外の物を運ぶためにやってきては、積み荷を降ろし空になった荷台をカラカラと軽快な音と共に御者を乗せて消えていく一頭建ての荷馬車たちもいる。

 地下迷宮から地上へと向かう。
 もしくは地上から地下へと降りて来るこの定期便は、一日に数本しか存在しない。

 そのやってくるときはガラガラとせわしなく聞こえる車輪の音が、去っていく時にはあまりにも軽薄なカラカラという音に変わるのを朝からずっと耳にしていた彼女は、「はあ……」となで肩をさらに落とすようにして本日、何度目になるかも分からない失意のため息を漏らしていた。

 褐色というよりは薄墨を塗ったような、黒く透き通った肌を持つ彼女は、去っていく馬車を見て「ああ、行ってしまっった。あれだったのに」と呟く。

 忌々しそうに、足元の床板をブーツの踵で蹴つけ、傍らに置いてある長剣と荷物を見比べて、はあ……と重いため息を一つ吐く。

 彼女以外に、自分の目当ての馬車がやってくる時間まで暇を持てあます乗客たちは、外の寒さから逃げるように待合室に詰めていた。

 そこでもう一時間以上も、こんなため息を聞かされては、気が滅入るというものだ。

「遅い……。ちゃんと伝言を見たのか、あいつは」

 怒りとか焦りとかやるせなさというものを通り越してしまい、その言葉には失望とか呆れとか、もうこの状況から誰か助け出して欲しいというような。

 彼女の周りにいる者たちには、そんな願いさえ込められているように感じられた。

 少女のため息が漏れる時間はもう一時間は下らない。
 彼女の苛立ち方からして、相手はどうやら男の様だ。

 それも使用人とか商売の取引相手のような縁の薄い相手ではなく、もう少し心を砕ける相手、恋人とか家族とかそういったもののように思えた。

 彼らがいる場所は、安物の松の木材で作られた長椅子が数列並ぶだけの不愛想なその場所は、粗末なクッションの一つも用意されていない駅舎の待合室だった。

 駅舎の待合室でそれも暖房なんか入れてくれないような、そんな殺風景な場所だった。

 とはいっても食事を調理するために必要な程度の大きさをもつ暖炉は備えていて、そこには薪の代わりに魔石が用意されている。

 魔石とは魔物の遺体や古代の遺跡や、古い地層などから発掘される紫色の水晶のようなものでそれ一つあれば、炎を呼び出すことができた。

 魔力を注いだり表面に掘られた紋様をなぞるだけで火を生みだすことのできる燃料の塊のようなそれが、暖炉のなかではのんびりとした勢いで炎を産みだし続けている。

 少女は極度の寒がりなのか、それとも待ちぼうけで心まで冷え切ってしまったのか、室温は温かいというのに、分厚いローブと小さなツバのついた灰色のキャスケット帽子を目深にかぶり、決してそれを脱ごうとしない。

「もういい」

 しばらくしてから、待つのに飽きたのか彼女は横に立てかけていた長剣を手に取ると、傍らに置いてあった大きな旅行鞄をどこかにふいっと消してしまう。

 その途端、腰のベルトに通した革製のポーチのボタンが空いて、また閉じた。
 パチンっと留め具の合わさった音が小さくなる。

 ポーチの中の空間を簡易的に歪め大容量の荷物でも簡単に持ち運べるようにした、空間魔法を施した魔導具の一種だろう。

「来ないのならば、こちらから行く!」

 意を決したように顔を怒りで歪めて言うと、腰まである金髪を片手で大きく振り払う。
 そのとき、目深にかぶったキャスケット帽から、ぴょこんっと人よりは長い耳が飛び出た。


「おいおい待て、待て!  何考えてんだよ、お前は! なあ、ケリー!」
「だーかーらっ! 離してってば!」
「いや、ちょっと待てってば! 放すせるわけないだろうが!」
「んもぅーう、しつこーい! あんたに関係ないじゃん!」
「いや関係あるだろ。いいからちょっと落ち着けって、なあ?」
「うるさいよ、本当にまじウザイ!」

 同じ駅舎の裏手側で、こちらは迷宮の下層行きの馬車に乗り込もうとしたところを邪魔された少女が、彼女を馬車から引きずり下ろし、さらにせっかく積み込んだ荷物まで駅員に言いつけて、降ろさせたことに憤慨して怒鳴り声を上げていた。

 少女の名はケリー。
 黒い豊かな髪を一つにまとめて右肩から垂らした彼女は、旅の始まりを邪魔した男を睨みつけていた。

 旅に最適なワンピースの裾を翻して、ケリーは両手を腰に当てている。
 その眉間には深い皺が数本刻まれていた。

「先生! どうして止めるのよ、もう、うんざりっ!」
「それは俺のセリフだ! いきなり出て行くなんておかしいだろうっ」

 二人は教師と生徒の間柄だった。
 ケリーは自分でこの街を出て行こうとしていた。
 でもそれは勧められない。キースはなんとか思いとどまらせようとする。

感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。