冒険者を生還させるな!と命じられた超一流の迷宮ガイド、魔獣生物学者の助手に転職する~高年収な上に美少女ダークエルフと旅ができて最高です~

和泉鷹央

文字の大きさ
32 / 52
第五章 生き別れた二人

第31話 少女騎士

 でもそれを認めるのはどこか悔しくて、武器を持ち帰ると空いた手で一歳年下の少年の頭をわしゃわしゃと揉みこんでやる。

 癖のない自分の金髪とは違い、彼の銀色の猫っ毛はふわふわとそこかしこに舞い上がるように散って、また元に戻ってしまう。

「うわっ、よせよ、馬鹿!」
「バカとはなによ、貴方が腰抜けだからでしょ! あの河原、譲ったらこれからどうするのよ」

 どうするって、それは仲間に諦めてくれって言うしか……そこまで言いかけて少年は階段下に集まった、青牙団のめんめんを見やる。

 そこには十数人、それもみんな顔に包帯代わりにタオルを巻いたり、腕を肩から布で吊っていたり、片足を引きずったりと満身創痍の少年少女たちがいた。

 勝てる見込みがないだろ、と少年は冷静に分析する。その片目も先日の猫目団のリーダーの猛攻からクラリスを守ったために、大きく腫れあがっていたけど。

 それでも逃げる、という選択肢はなかった。
 少なくとも、自分自身の中だけでは。

「瑠璃石や魔石や宝石の原石があそこで拾えるのは分かるけどさ」
「分かってるんじゃない! あれが無くなったらみんなの稼ぎもなくなるのよ? どうやって明日から生きていくの」
「今日勝ったからって、明日からまた来ないとは限らないんだよ、クラリス。それ理解してる?」

 キース少年は憤る。
 言い分はもっともだ。

 勇ましく男勝りのその気質は、自分なんかより余程、騎士に向いているかもしれない。弱い物を守りたいって感情も、そうだ。

 クラリスの兄のジョン、弟の泣き虫で使えないラーク。そして僕。
 騎士の息子が三人もいて、お姫様を守れないなんて悔しいじゃないか。

 そこまではいい、そこまでは。でも現実は――無謀だ。

「猫目団は金にもの言わせて、大人まで雇って二倍の数がいるよ。それに、忘れたの?」
「何をよ!?」
「ニーニャはレダたちのこと」
「……」
「人さらいっていうか、奴隷商人だって後ろにいそうじゃないか。あの子たち、もう戻ってこれないかもしれない」
「だって、でも……」
「子供の喧嘩の範囲を越えてるよ」

 冷静にそうたしなめるキースの言葉に、ジョンとラークも同意するように頷いて見せた。
 あんたたち、誰のミカタなの! 喉から兄弟たちへの怒りが飛び出しそうで、でもクラリスはそれを黙って飲み込む。

 幼いけど貴族の子弟子女は年上には逆らわない、女性は男性に付き従う。
 それが、例え最下層で貴族の底辺にいる騎士の子供であっても、ルールだからだ。
 でも、とクラリスは兄を見て言葉を選んだ。

「でも、ジョン。お兄様……弱きものを見捨てるのは――我がバノス家の恥になりますわ」
「クラリス」

 食い下がる妹に、兄は下段から見上げるようにして困ったな、と首を振る。
 頭にボコボコとたんこぶが出来ているラークはもう家に帰りたかった。この姉、この妹についていったらいつか死にそうな目に遭うんじゃないだろうか。 

 それが兄弟のひそやかな問題で、今回も勝ち気な妹をどうやって屋敷に連れ帰るかを悩んでいた。

「お父様は弱きを見捨てるな、とそうおっしゃいます!」
「クラリス、ここで父上の名を出すのは良くないよ。猫目団のやり方はたしかに悪いことだ。でも、僕たちじゃ、勝ち目はないな」

 ジョンのその言葉に、更に下で発つ青牙団の面々ははあ、とため息をついて肩を落とす。

 みんなもう疲れ果てていて、ここ数日の間の喧嘩で一睡もできないこともあったからだ。

 敵はロバス町の有力者の子供もいて、金と権力にものを言わせて昼夜問わず攻撃を仕掛けてくる。 

 それは子供の喧嘩と呼ぶには苛烈で、容赦が一切ないものだった。
 武器も騎士学校で使うような木剣に木の槍、店の品物を持ち出して盾もあれば目くらましの魔法石だってある。

 負けたやつはさっさと縛り上げてどこかに連れていかれたし、被害者はもう十人を超えていた。

 まるでマフィアの抗争みたいだよ。
 そう誰かが揶揄するくらいひどいそれは、金による賠償劇にまで発展していた。

 夜に出歩けないロバス町の連中が同じ貧困街の大人や子供たちに小遣いをやって、青牙団の仲間だと分かると集団で痛めつけるのだ。

 死者がでていないだけで、棲み処で痛みに唸りながら医者に診てもらない仲間が増えていくだけなのを彼ら、貧困街の子供たちは黙って耐えるしかなかった。

「待って、ジョンにラーク、キースも……ここでアレクをやっつけなきゃ。また誰かが痛い目を見るに決まってるじゃない……」

 私たちがやらなきゃ、誰がやるのよ。
 クラリスはそう訴えていた。

 男勝りな仕草を正し、きちんとしたレディの恰好と言動をとれば彼女は王都に住む同世代の貴族令嬢たちの中でも群を抜いて美しい美少女だったから、その切なそうに訴えかける視線は年頃の少年たちの心を揺り動かすには十分なものだった。

「仕方ないか」
「でも、アレクがなあ」
「いっつも後ろの最後尾で大人に守られてるもんねえ。さすが王都一の両替商の息子だよ」

 三者三様に戦おうという意思はあるらしい。それを見れただけでも、クラリスには十分な心の糧となった。

感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!