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第六章 仲間の裏切り
第37話 計測装置
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勇者アレクが真顔に戻り、なにやら考え込んでいた。
彼ほどの高名な実力者でもあの魔獣には気を抜けないのだろうか?
「レベル800の魔物か」
「レベル?」
そう言われてキースは怪訝な顔をした。
ここ半世紀ほど、地上世界の他の大陸で発達した魔導科学によって、魔獣や魔力のレベルを測定できる魔導具が開発され、様々な地域で実用化されて活用されていると聞く。
あいにくとこのロンギヌス王国は文明の盛んな中央大陸に遠い。
おまけに地下世界ともなれば、外の世界との文明格差はかなりの開きがあるはずだ。
「そういえば君は棄民だったね」
何気なしに勇者が言ったその一言に、キースの顔が曇る。
棄民は王国から地下世界に追放されて見捨てられた人々。
光の神を国教に指定している王国は、光属性の人々を優遇し、闇属性の人々地下世界に送り込んだ。
彼らは「棄民」と呼ばれ、地上世界に二度と戻ること許されない。
そんな人々は、いま地下に数十万単位で存在していて、まだ若いキースもその一人だった。
「光属性であられる皆様方の案内を仰せつかって、俺は幸せです」
「それは光栄なことだ。是非とも俺たちの役に立ってくれ」
「はいもちろんです、勇者様」
心にもないお世辞だ。
そんなこと思っているものは、この地下世界には一人もいないだろう。
だが彼らは勇者パーティ。
光属性の人々の中で、最も輝き、最も権力を持つ人間たち。
ここで取り入って損はない。
自分が彼らを無事に生還させた後にやりたいことのためにも、今はお世辞を使うことも重要だった。
そうやって喋りながら歩いていると、だんだんと街の姿が見えてくる。
百メートルを超える外壁。
対魔獣用のそれは、この高さでも不安なほど。
しかし地上世界の彼らからしてみれば、物珍しいらしい。
女魔導師ロンディーネは「へえ、高い」と驚きの声を出す。
「街の中央に、地下へと降りる転送装置があります。そこに行きましょう」
「よろしく頼むよ」
勇者はどこまでも親しげに、ポンっとキースの肩を軽く叩いた。
転送装置には二種類ある。
各階層ごとを昇降するものと、何階層も飛ばして、目的の場所へと直行するものとの二種類だ。
今回は、最速で三十階層を目指す。
そこでキースたちが落とされた、問題の転送装置を利用して四十二階層まで一気に降りてしまう。
階層のボスと目論まれる腐蝕の巨大魔獣アルトボロス。Lv.800のそいつを撃破し、一気に四十二階層を解放する。
一旦そこに陣営を敷き、簡易神殿を建立して剣神を地下へと降臨させて、一階から四十二階層までの地下迷宮を神の力によって聖浄化する。
そうすることによって、地上で待っている他の神殿の勢力や、有力な冒険者たち。
魔王軍との戦争が終わり、戦いに飢えている王国軍を投入することで、地下世界のあらゆる資源をその手にしてしまおうというのが、今回の計画だった。
三十階層にたどり着くまでの間、いくつかの転送装置を経由する中で、勇者はそんな話をしてくれる。
「Lv.800なら、多少は手こずるだろうけど。まあ問題はない。俺はLv.900だ」
「はあ。そういうもんなんですか」
勇者は自慢そうに最新型だと言い、いまかけているメガネのようなものをトントンと指先で叩いた。
観測装置。スカウターというらしいが、この魔導具の開発には各神殿も開発に参加しているらしい。
しかし一説には、神様たちはそんなものに興味がなくて、あまり知恵を貸してくれないのだという。
人が人の知恵で作り出した、計測装置。
そんなもので、神や魔王に匹敵するともいわれる古代上位魔獣を計測できるものだろうか?
「俺たちに任せておけばいい。君は安全な場所に逃げてくれたらいいよ」
「そうそう、神々に選ばれた俺たちなら、どんな魔獣も一撃さ」
果たして、そうそう上手くいくもんだろうか?
迷宮に棲息する魔獣たちの恐ろしさを知っているキースには、いまひとつピンとこない話だった。
この計画には、あまり深入りをしない方が良さそうだ。
「そうですね。俺なんかレベル低いんで。是非そうさせて頂きます」
「ちょうどいい。君のそれを計測してあげよう」
「え、いや! それはちょっと待って……」
言葉の途中で、勇者の眼鏡が光った。
青白い光が投射され、頭の上から足の先まで数回往復する。
それがおさまったら勇者アレクは「へえ……面白いね、君」と感嘆の声を上げた。
「面白いって……?」
まさか自分のスキルがばれた?
背中にぬるっとした嫌な汗が流れる。
このスキルは総合ギルドのスキル判定装置でも判明しなかったではレアスキルの一つだ。
普段なら依頼主の影を踏むことで、彼らのさまざまな真理を知ることができる。
今回は勇者パーティに参加している誰の影を踏んでも、簡単な思考しか手に入らない。
神に選ばれた冒険者達だけあって、こちらに都合よく情報を提供してくれないようだった。
「君のLvはなんと600だ。これまで見てきた地下の棄民のなかでは、最も上位に値する」
「あ、それ……」
「スキルもユニークだね」
「えっ!」
今度は脂汗が額を滑り落ちる。
彼ほどの高名な実力者でもあの魔獣には気を抜けないのだろうか?
「レベル800の魔物か」
「レベル?」
そう言われてキースは怪訝な顔をした。
ここ半世紀ほど、地上世界の他の大陸で発達した魔導科学によって、魔獣や魔力のレベルを測定できる魔導具が開発され、様々な地域で実用化されて活用されていると聞く。
あいにくとこのロンギヌス王国は文明の盛んな中央大陸に遠い。
おまけに地下世界ともなれば、外の世界との文明格差はかなりの開きがあるはずだ。
「そういえば君は棄民だったね」
何気なしに勇者が言ったその一言に、キースの顔が曇る。
棄民は王国から地下世界に追放されて見捨てられた人々。
光の神を国教に指定している王国は、光属性の人々を優遇し、闇属性の人々地下世界に送り込んだ。
彼らは「棄民」と呼ばれ、地上世界に二度と戻ること許されない。
そんな人々は、いま地下に数十万単位で存在していて、まだ若いキースもその一人だった。
「光属性であられる皆様方の案内を仰せつかって、俺は幸せです」
「それは光栄なことだ。是非とも俺たちの役に立ってくれ」
「はいもちろんです、勇者様」
心にもないお世辞だ。
そんなこと思っているものは、この地下世界には一人もいないだろう。
だが彼らは勇者パーティ。
光属性の人々の中で、最も輝き、最も権力を持つ人間たち。
ここで取り入って損はない。
自分が彼らを無事に生還させた後にやりたいことのためにも、今はお世辞を使うことも重要だった。
そうやって喋りながら歩いていると、だんだんと街の姿が見えてくる。
百メートルを超える外壁。
対魔獣用のそれは、この高さでも不安なほど。
しかし地上世界の彼らからしてみれば、物珍しいらしい。
女魔導師ロンディーネは「へえ、高い」と驚きの声を出す。
「街の中央に、地下へと降りる転送装置があります。そこに行きましょう」
「よろしく頼むよ」
勇者はどこまでも親しげに、ポンっとキースの肩を軽く叩いた。
転送装置には二種類ある。
各階層ごとを昇降するものと、何階層も飛ばして、目的の場所へと直行するものとの二種類だ。
今回は、最速で三十階層を目指す。
そこでキースたちが落とされた、問題の転送装置を利用して四十二階層まで一気に降りてしまう。
階層のボスと目論まれる腐蝕の巨大魔獣アルトボロス。Lv.800のそいつを撃破し、一気に四十二階層を解放する。
一旦そこに陣営を敷き、簡易神殿を建立して剣神を地下へと降臨させて、一階から四十二階層までの地下迷宮を神の力によって聖浄化する。
そうすることによって、地上で待っている他の神殿の勢力や、有力な冒険者たち。
魔王軍との戦争が終わり、戦いに飢えている王国軍を投入することで、地下世界のあらゆる資源をその手にしてしまおうというのが、今回の計画だった。
三十階層にたどり着くまでの間、いくつかの転送装置を経由する中で、勇者はそんな話をしてくれる。
「Lv.800なら、多少は手こずるだろうけど。まあ問題はない。俺はLv.900だ」
「はあ。そういうもんなんですか」
勇者は自慢そうに最新型だと言い、いまかけているメガネのようなものをトントンと指先で叩いた。
観測装置。スカウターというらしいが、この魔導具の開発には各神殿も開発に参加しているらしい。
しかし一説には、神様たちはそんなものに興味がなくて、あまり知恵を貸してくれないのだという。
人が人の知恵で作り出した、計測装置。
そんなもので、神や魔王に匹敵するともいわれる古代上位魔獣を計測できるものだろうか?
「俺たちに任せておけばいい。君は安全な場所に逃げてくれたらいいよ」
「そうそう、神々に選ばれた俺たちなら、どんな魔獣も一撃さ」
果たして、そうそう上手くいくもんだろうか?
迷宮に棲息する魔獣たちの恐ろしさを知っているキースには、いまひとつピンとこない話だった。
この計画には、あまり深入りをしない方が良さそうだ。
「そうですね。俺なんかレベル低いんで。是非そうさせて頂きます」
「ちょうどいい。君のそれを計測してあげよう」
「え、いや! それはちょっと待って……」
言葉の途中で、勇者の眼鏡が光った。
青白い光が投射され、頭の上から足の先まで数回往復する。
それがおさまったら勇者アレクは「へえ……面白いね、君」と感嘆の声を上げた。
「面白いって……?」
まさか自分のスキルがばれた?
背中にぬるっとした嫌な汗が流れる。
このスキルは総合ギルドのスキル判定装置でも判明しなかったではレアスキルの一つだ。
普段なら依頼主の影を踏むことで、彼らのさまざまな真理を知ることができる。
今回は勇者パーティに参加している誰の影を踏んでも、簡単な思考しか手に入らない。
神に選ばれた冒険者達だけあって、こちらに都合よく情報を提供してくれないようだった。
「君のLvはなんと600だ。これまで見てきた地下の棄民のなかでは、最も上位に値する」
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「スキルもユニークだね」
「えっ!」
今度は脂汗が額を滑り落ちる。
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