冒険者を生還させるな!と命じられた超一流の迷宮ガイド、魔獣生物学者の助手に転職する~高年収な上に美少女ダークエルフと旅ができて最高です~

和泉鷹央

文字の大きさ
43 / 52
第六章 仲間の裏切り

第42話 断崖の果てに


 弓使いと女魔導師のものだった。

「うおおおっ!」 
「ぎゃああっ!」

 男と女の悲鳴が響いた。
 闘技場の天井にそれはこだまして、天井裏に住んでいるだろうコウモリ達を羽ばたかせてしまう。

「しまった……」

 コウモリとはいえ魔獣であることに変わりはない。
 数が揃えば脅威だ。

 奴らはねぐらから這い出て来ると、キースたちめがけて牙を突き立てようと襲い掛かって来る。

 それを女魔導師が追撃する形で魔法を放った。

「よくもやってくれたわねー! 蒸し焼きにしてやるわ!」

 宣言。
 馬鹿の一つ覚えみたいだ。

 蒸し焼きにする? こんな場所で炎系の魔法でも使うつもりだろうか?
 爆発によって彼らが叫んだ時に、キースはさっさと闘技場の向こう側。

 テラスの方に向かって駆け出していた。
 右の端の方に行けば、遺跡の残骸を伝って監視塔まで辿り着くことができる。

 しかし彼の行動を読んでいたのか、その先を行かせまいと弓使いは、大量の光矢を放った。

 今度の分散したそれは、何かに刺されると、光の鎖を矢尻から生み出す仕組みになっている。

 大型魔獣の退治で利用される、矢鎖と呼ばれる拘束具の一種。
 それをこんなにも大量に――。

 数百のオレンジ色の光の鎖が、キースの全身と行き先を防ぐように、巻きついて邪魔をする。

 弓矢を避けることができず、何本かは彼の肉体に刺さっていた。

「ぐうっ、こんな技まで使えるなんて。さすが勇者パーティ」
「そろそろ諦めろ、案内人!」
「そうよ! 苦しまずに殺してあげるんだから!」
「ふざけんな! 誰がお前らみたいな奴に殺されるかよ!」

 矢じりが刺さっている部分をへし折り、鎖から全身を解放する。
 矢じりの先がまだ肉体に残っているが、それは後から掘り出すこともできる。

 今はとりあえず、回復魔法をかけて、余計な出血を止め、意識が朦朧となるのを防ぐ。

 前面の空間は、光の鎖が絡み付いていて進むことができない。
 剣でそれをたたき切りながら進むことも考えたが、後ろにはまだ敵が迫っている。

 このままではまずい。左だ。テラスの外に飛び込むしかない。

「ホラ逃げろ! さもなきゃ蒸し焼きだ!」

 天井に近い場所から命令が下される。
 無慈悲な勧告は、数舜後に灼熱のシャワー来ることを意味していた。

 あの女魔導師。口先だけじゃなかったのか! 

「くそっ、勇者パーティくせに、なんて残酷な女なんだ!」

 心の底から発した侮蔑の声も、彼らの下卑た笑いと品のない素振りの前では無意味らしい。
 それどころか、彼らの興味をさらに悪い方向に注いでしまった。

「ほ、ら、よ」

 弓使いの片手が上がる。
 その手にあるのは、特大の光矢だ。

 あれに貫かれたら、一巻の終わりだろう。
 あっという間に全身焼き尽くされて、骨も残らないに違いない。

 ヤバイやつが来る! 本能が叫んだ……。
 ドシャアっ、と天井の一角が真っ赤に染まり、何かが落ちてくる。どこからやってきたのか凄まじい熱量の雨が闘技場へと降り注いだ。

「いやあああっ! 熱いいいいいいっ!」
「何やってんだよ、ロンディーネ! しっかりしろよ!」
「熱いものは熱い! んもうっ、さっさと治癒魔法かけてよ、このろくでなし!」

 なぜか女魔導師が自分で召喚した術のはずなのに、吹きこぼれた溶岩の一滴に身を焼かれて、凄まじい悲鳴を上げた。

 今しかない――生き延びるには、今しかない。
 キースはこのチャンスを逃さなかった。

 視界の隅に見えていた、暗黒へと身を躍らせた。
 そこは更なる地下へと続く、はるかなる断崖だ。

 光が当たらない底がどうなっているのかはうかがい知ることすらできない。
 見えないことへの根源的な恐怖が身体を支配するが、後悔してももう後戻りはできない。

「落ちて死ぬか、ここで蒸し焼きになる――ならっ!」

 勢いをつけて飛んだ瞬間、背中に鈍いそして鋭くて筋肉をえぐりとっていく何かが、入り込んでいくのを感じた。

 弓使いフォンの速射だった。
 胸板を貫く二本の矢。

 なんてことはない普通の矢が、竜の革でできた。防御服を貫くなんて。
 味方に対する備えが甘すぎた。与えられた革ポーチの中身はすべて偽物として、用意されていたのだろう。

 ギルドもグル、か……。そう思わざるを得なかった。

 勇者たちに雇われる前。
 ちょっとしたトラブルで、キースはギルドを解雇寸前に追いやられていた。

 どうやら、その問題がこれにも関係しているようだ。
 胸に刺さった二本の矢の先が、じんわりと熱く膨れ上がっていくのがわかる。

 へし折らないと、爆発する……。
 一瞬の判断だった。

 右の手刀に渾身の力を込めて、胸から突き出た矢の先を叩き落す。
 次の瞬間、それは強烈な爆発を伴い、キースを竪穴の中央部分へと押し出していた。

 何もない空間。
 下に見えるのは、真っ黒い奈落の底。

 落ちれば多分、最下層まで行けるが、戻ってくる見込みは二度とないそんな場所。

「くそっ、たれ……」

 灼熱の胸の痛みと息苦しさに心が折れそうになる。
 最後に毒舌を吐いてせめて文句を言ってやろうと思ったら、上から続けざまに、右足右手へと、正確に弓使いの矢が突き刺さる。

 それは間をおかずして、盛大な爆発音とともにキースの四肢を寸断する。
 薄れる意識の傍で、自分の右手と右足がどこかに飛んでいくのが見えた。

感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。