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「実際、殿下がアールグレイ様にとり続けていた態度はそのように冷酷でした。このままでは、殿下がどれだけ愛を囁こうともアールグレイ様は殿下の言葉を信じてはくれないでしょう」
「こ、婚約者の言葉を信じない方が酷いんじゃないか?」
「お前が言うな」
シュガールが蔑んだ目で俺を見下げた。そう言えば、昔から怒ったらものすごい怖かった気がする。
「というか、お前、急に主人に対して無礼じゃないか?」
「ラプサンス様が長年の恋を成就させるためには助言者が必要だと今更ながらに思い知りましたので、心を鬼にすることにしたまでです」
「そうは言ってもだな」
「おや?アールグレイ様との蜜月はお望みではないということですね?」
「お望みです!!」
「よろしい。では、今日はまず謝罪を始めに必ずしてください」
「わ、分かった」
従者からの恋愛指南?が一区切りしたところで扉が開いた。
「お待たせいたしました。どうぞお入りください」
室内に入り、案内されたソファに座る。アールグレイはカウチソファに枕で顔を隠した状態で腰かけている。
少し遠くないか?手を伸ばしても全然届かない。だが、ここで不満を言うと、後ろにいる執事から鉄槌が堕ちてくる気がしてならないから黙っておこう。
顔を隠しているのは、手紙にあった情けない表情というのと関係しているのだろうか。今日はそれを話に来たんだから、その内分かるはずだ。
しかし、寝間着姿のアールグレイは新鮮だな。いつもの凛とした美しさとは違って、気の緩んだ姿を俺に見せているのかと思うと、興奮してくる。
「お越しいただきありがとうございます、ラプサンス様。寝間着で申し訳ありません」
「いや、その、俺こそ見舞いに来れなくてすまなかった。この数日、王宮に呼ばれてしまっていたんだ」
「そうだったんですね。僕はラプサンス様がこうして来てくださったことがとても嬉しいですよ」
「そう言ってもらえると助かる」
よし、一先ずミッションクリアだ。と言うか、本当に来てよかった。アールグレイが嬉しいと言ってくれた。本当によかった。
そして、本題はここからだ。アールグレイの方もそわそわとしているようだし、俺と同じ気持ちと見ていいだろう。
「あの、手紙を読んで、それで来てくださったんですよね?」
「嗚呼!そうだ。学園に戻って直ぐに手紙を貰って、読んで直ぐに君に会いに来た」
「ありがとうございます」
一呼吸置いて、アールグレイはゆっくりと枕から顔を離した。
頬は熟れた果実のように真っ赤で、瞳は澄んだ泉のように潤みきっている。その表情は、性への快楽に堕ちかけているかのように蕩けていた。
「好きです、ラプサンス様。大好きです。本当に好きで、お側にいるとドキドキし過ぎて涙が出てきてしまうんです。人前で涙を流すわけにはいかないので、必死に堪えていつも不機嫌な表情になってしまったんです。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」
すごい。俺は夢を見てるんじゃないよな?アールグレイが信じられないほど可愛い顔をして、俺を好きだと、大好きだと話している。
俺の側にいるだけでこんなにも表情が溶けてしまうなんて、可愛いにも程があるだろう。確かに、こんな可愛いアールグレイを他の奴等に見せるわけにはいかないな。邪な感情を抱く者で溢れ帰ってしまう。
可愛い俺のアールグレイ。何で俺はもっと早くに二人で話をしようとしてこなかったんだ。可愛いアールグレイとの時間を取り零し続けてきたなど、悔やんでも悔やみきれないほど人生を無駄にしてきたことを思い知らされる。
「ラプサンス様」
「何だ?」
「好きです。・・・大好きです」
アールグレイがふわりと笑った。何年か振りに向けられた笑顔に、衝動的に身体が動いた。
「俺も好きだ!」
「ふわっ!?で、殿下!?」
昔俺に向けていた笑顔とも、他の奴等に向けている笑顔とも全然違う。アールグレイが俺のことを好きなんだと、真っ直ぐ伝わってくる笑顔だった。
堪らず抱き締めたアールグレイの温もりと感触で、これは夢ではないんだと確かめる。
「アールグレイ、もっと声を聞かせてくれないか?・・・ん?」
全然反応がない。え?どうしたんだ?
「アールグレイ様は気絶しておられます」
「き、気絶!?」
アールグレイの代わりに侍女から返ってきた言葉に驚き、身体を離してアールグレイの顔を確かめると、既に意識がなかった。
「な、何で?」
「アールグレイ様ご自身仰られた通りです。ドキドキし過ぎてしまったのです」
「だ、抱き締めただけで?」
「はい」
それもまた非常に可愛いが、これではいちゃいちゃなんて到底出来ないじゃないか!!
「今までひよってアールグレイ様と向き合ってこなかったつけですよ」
俺の心の叫びに返事をするかのような執事の言葉に、叱られた気持ちになる。
「まずはアールグレイ様を休ませてあげてください。そして、今のやりとりの反省会をしますよ、殿下」
「え?」
アールグレイの可愛い過ぎる笑顔とはうって変わって、執事の微笑みは恐ろしく感じた。
「こ、婚約者の言葉を信じない方が酷いんじゃないか?」
「お前が言うな」
シュガールが蔑んだ目で俺を見下げた。そう言えば、昔から怒ったらものすごい怖かった気がする。
「というか、お前、急に主人に対して無礼じゃないか?」
「ラプサンス様が長年の恋を成就させるためには助言者が必要だと今更ながらに思い知りましたので、心を鬼にすることにしたまでです」
「そうは言ってもだな」
「おや?アールグレイ様との蜜月はお望みではないということですね?」
「お望みです!!」
「よろしい。では、今日はまず謝罪を始めに必ずしてください」
「わ、分かった」
従者からの恋愛指南?が一区切りしたところで扉が開いた。
「お待たせいたしました。どうぞお入りください」
室内に入り、案内されたソファに座る。アールグレイはカウチソファに枕で顔を隠した状態で腰かけている。
少し遠くないか?手を伸ばしても全然届かない。だが、ここで不満を言うと、後ろにいる執事から鉄槌が堕ちてくる気がしてならないから黙っておこう。
顔を隠しているのは、手紙にあった情けない表情というのと関係しているのだろうか。今日はそれを話に来たんだから、その内分かるはずだ。
しかし、寝間着姿のアールグレイは新鮮だな。いつもの凛とした美しさとは違って、気の緩んだ姿を俺に見せているのかと思うと、興奮してくる。
「お越しいただきありがとうございます、ラプサンス様。寝間着で申し訳ありません」
「いや、その、俺こそ見舞いに来れなくてすまなかった。この数日、王宮に呼ばれてしまっていたんだ」
「そうだったんですね。僕はラプサンス様がこうして来てくださったことがとても嬉しいですよ」
「そう言ってもらえると助かる」
よし、一先ずミッションクリアだ。と言うか、本当に来てよかった。アールグレイが嬉しいと言ってくれた。本当によかった。
そして、本題はここからだ。アールグレイの方もそわそわとしているようだし、俺と同じ気持ちと見ていいだろう。
「あの、手紙を読んで、それで来てくださったんですよね?」
「嗚呼!そうだ。学園に戻って直ぐに手紙を貰って、読んで直ぐに君に会いに来た」
「ありがとうございます」
一呼吸置いて、アールグレイはゆっくりと枕から顔を離した。
頬は熟れた果実のように真っ赤で、瞳は澄んだ泉のように潤みきっている。その表情は、性への快楽に堕ちかけているかのように蕩けていた。
「好きです、ラプサンス様。大好きです。本当に好きで、お側にいるとドキドキし過ぎて涙が出てきてしまうんです。人前で涙を流すわけにはいかないので、必死に堪えていつも不機嫌な表情になってしまったんです。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」
すごい。俺は夢を見てるんじゃないよな?アールグレイが信じられないほど可愛い顔をして、俺を好きだと、大好きだと話している。
俺の側にいるだけでこんなにも表情が溶けてしまうなんて、可愛いにも程があるだろう。確かに、こんな可愛いアールグレイを他の奴等に見せるわけにはいかないな。邪な感情を抱く者で溢れ帰ってしまう。
可愛い俺のアールグレイ。何で俺はもっと早くに二人で話をしようとしてこなかったんだ。可愛いアールグレイとの時間を取り零し続けてきたなど、悔やんでも悔やみきれないほど人生を無駄にしてきたことを思い知らされる。
「ラプサンス様」
「何だ?」
「好きです。・・・大好きです」
アールグレイがふわりと笑った。何年か振りに向けられた笑顔に、衝動的に身体が動いた。
「俺も好きだ!」
「ふわっ!?で、殿下!?」
昔俺に向けていた笑顔とも、他の奴等に向けている笑顔とも全然違う。アールグレイが俺のことを好きなんだと、真っ直ぐ伝わってくる笑顔だった。
堪らず抱き締めたアールグレイの温もりと感触で、これは夢ではないんだと確かめる。
「アールグレイ、もっと声を聞かせてくれないか?・・・ん?」
全然反応がない。え?どうしたんだ?
「アールグレイ様は気絶しておられます」
「き、気絶!?」
アールグレイの代わりに侍女から返ってきた言葉に驚き、身体を離してアールグレイの顔を確かめると、既に意識がなかった。
「な、何で?」
「アールグレイ様ご自身仰られた通りです。ドキドキし過ぎてしまったのです」
「だ、抱き締めただけで?」
「はい」
それもまた非常に可愛いが、これではいちゃいちゃなんて到底出来ないじゃないか!!
「今までひよってアールグレイ様と向き合ってこなかったつけですよ」
俺の心の叫びに返事をするかのような執事の言葉に、叱られた気持ちになる。
「まずはアールグレイ様を休ませてあげてください。そして、今のやりとりの反省会をしますよ、殿下」
「え?」
アールグレイの可愛い過ぎる笑顔とはうって変わって、執事の微笑みは恐ろしく感じた。
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