悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき

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「ラプス様、あーん」
「あーん」
 一口サイズのハンバーグを刺しているフォークを差し出す手がドキドキで震えている。
 そんな震えを気にもとめず、ラプス様は僕が差し出したハンバーグを口に含む。
 嗚呼、ラプス様、今日もかっこいい。素敵。思わずうっとりと見惚れてしまう。
 ラプス様と両想いになってから数ヶ月、婚約者兼恋人として少しずつ距離を縮めてきた。愛称で呼び合えるなんて嬉しくて堪らない。
 ラ、ラプス様の方から僕ともっといちゃいちゃしたいと言ってくださって、僕がドキドキし過ぎて気絶してしまわないように、少しずつ関係を進めている。今日は初めての食事の食べさせ合いっこだ。
 お昼には食堂の個室を僕達の専用ルームにされることをラプス様が宣言されて、お食事の時間はラプス様との貴重ないちゃいちゃタイムとなった。いちゃいちゃタイムって響きがまさに恋人っぽくて照れてしまう。
 個室を独占するなんて横暴かなって心配したんだけど、元々利用の権利を持つ人は限られてたし、その人達が生暖かい目で了承してくれたから、皆さんのご厚意と思って遠慮なく使わせてもらうことにした。
 それに、あの物語ではこの個室で主人公の令嬢はラプス様や令息達と親密になっていってたから、物語通りにことが進まないという点でもラプス様の宣言は嬉しかった。
「うまい」
「よ、よかったです」
「シェフの腕がいいのはもちろんだが、アルグが食べさせてくれるからいっそううまい」
「そっ、そんな・・・えっと、光栄です」
 嬉しい。たとえ社交辞令だとしても、ラプス様にそんな風に言ってもらえるなんて嬉しくて堪らない。
 はっ!ダメだよ、僕!ラプス様のお言葉を社交辞令なんて言って、そのお心を信じないなんて婚約者としてしちゃダメ!
 そ、それに僕達もう恋人だし、ラプス様も本当にそう思ってくださっても何もおかしくないし。
「毎日、こうやって食事をしたいくらいだ」
「はうっ」
「次はアルグだ。ほら、あーん」
「あ、あーん」
 ラプス様に差し出されたスプーンで掬われたホワイトシチューを口に咥える。
 すごく熱い。作り立てのシチューが熱いのか、ドキドキし過ぎてる僕の身体が熱いのか、どっちかは分かんないけどすごく熱い。
 ドキドキのし過ぎで、涙も滲んできちゃったし。
「うまいか?」
「っ、はい!・・・あの、本当はドキドキし過ぎて味が分からないです」
 嘘はよくないと思って正直なことを言い直しちゃったけど、大丈夫だったかな?ドキドキで味が分からないなんて、やっぱり王子の婚約者として情けなかったかな。
 不安を感じながらラプス様のお顔を見ると、驚いたように僕のことを見つめられていた。ちょっと頬が紅いような気もする。
「どうしてアルグはそんなに可愛いんだ」
「へ?」
「今すぐキスをしたくて堪らなくなるじゃないか」
「ふぇっ!?」
 ラプス様が熱っぽい瞳で僕のことを見つめながら、そんなことを言う。
 ドキドキで卒倒しそう!!
 嬉しい!僕もラプス様とキスしたい!すごくしたいけど、今の僕じゃ絶対気絶しちゃう!そんなんじゃキスの余韻とか全然味わえない!
「大丈夫だ、アルグ。今はまだ我慢する。今キスしたら、きっと君はまた気絶してしまうだろ?俺達の初めてのキスはアルグにもしっかり覚えていてもらわなければな」
「ラプス様・・・お気遣いありがとうございます。僕も早くラプス様とキ、キス出来るようになれるよう頑張ります」
 夫婦になるんだもん。いずれはキスだけじゃなくてそれ以上もする関係に僕達はなるんだ。はぁ、ドキドキする。
 先ずは手を繋いでデート出来るようになることを目指そう。
「嗚呼、楽しみにしてる。さぁ、食事の続きだ」
「はい。どうぞ、ラプス様」
「・・・」
「?ラプス様?」
 僕が差し出したハンバーグを見つめて、ラプス様が固まる。あれ?僕何か変なことしたかな?
「アルグ、『あーん』と言ってくれ」
「え?あ、はいっ。あーん」
「あーん」
 お願いに応えたら、ラプス様は満足そうにハンバーグを口に咥えた。
 その後もラプス様は『あーん』と言うのとセットじゃないと、食事を進めなかった。
 恥ずかしかったけど、いつもかっこいいラプス様が恋人として甘えてくださっているように感じて嬉しかった。

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