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金属がぶつかる音、地面を踏み締める音、乱れる息、静けさの中で、様々な細やかな音が響き渡る。剣が空を切り、一人の青年の息が一瞬止まったところで、沈黙が破られる。
「そこまで!アールグレイ様の勝利!」
歓声が響く中で、手合わせをしていた青年とお互いに礼をする。
「アールグレイ様、手合わせしていただき、ありがとうございました。今日も素晴らしい剣技でした」
「こちらこそありがとう。皆のおかげでいろんな人と剣を合わせることが出来るから、僕も嬉しいよ」
「今後も精進して参りますので、また私と手合わせ願えますか?」
「もちろんだよ。それまでに僕も鍛錬を積んでおくね」
「アールグレイ様、明日は俺と手合わせしてくださいね!」
「うん、よろしくね」
剣術部は騎士見習いや剣術を嗜む令息令嬢が所属して、彼等を追いかけるように親衛隊達も入部するから、例年部員数が多い。
親衛隊の統率は、彼等の憧憬の対象になっている生徒にそれぞれ任されるから、騎士見習いにとっては将来隊を率いる際の予行演習にもなって、人気の仕組みにもなっている。
僕もありがたいことに親衛隊があるから、統率側になっていて、騎士団に入団予定はないけど、大勢の人々をまとめるという経験をさせてもらってる。
代わりに、親衛隊がいない人達は身の振り方に困ってしまうのが難点なんだけど。
「アールグレイ様、本日のメニューは皆終了いたしました」
「じゃあ、このまま皆少し休憩をしようか」
「はい。皆にも知らせて来ます」
「お願いね」
「アールグレイ様もお休みされますか?」
「うん、そうしようかな」
「では、お席を準備いたしますね」
「ありがとう」
僕のお世話をすることが、親衛隊の皆にとってご褒美になると本人達から懇願されて、申し訳ないと感じながらも、学園にいる間は任せることにしている。寮はプライベートだからそこはお断りさせてもらった。まぁ、問題があれば、ティズが指導することが条件だから安心ではあるんだけどね。
簡易で用意されたカフェテーブルで、もてなされたハーブティーを飲んで一息つく。
気が緩むと直ぐに今度行くラプス様とのデートのことが頭に浮かんでくる。楽しみで仕方ないんだからしょうがないよね。
街に行くこと以外のことを決めてなくて、ラプス様にどうしたいか聞かれて、少し考える時間をもらった。ラプス様と一緒なら何処でもいいんだけど、ラプス様が聞いてくれたから、たっぷり考えさせてもらうことにした。
「アールグレイ様、何かお考え事ですか?」
「あ、うん。今度ラプス様とデートに行くんだけど、何処に行くのがいいかなって思って」
「もしかして初デートですか!?」
「おめでとうございます!!」
「アールグレイ様が殿下とラブラブで、私達も嬉しいです!!」
ラ、ラブラブって、そんなに仲好しに見えるのかな。恥ずかしいけど、やっぱり僕達最近いい感じだよね。嬉しいなぁ。
「ありがとう。ラプス様が僕の希望を聞きたいと仰ってくれたんだ。楽しいデートにしたいから、わがままにならない範囲で考えたいんだけど」
「アールグレイ様がそのようなことを憂慮される必要はありませんわ!!」
「アールグレイ様に何を言われても、殿下は歓ぶに決まってます!!」
「何より、アールグレイ様のわがままは女神の微笑みと同義です!!世界平和のためにも、アールグレイ様はもっとわがままを言われるべきです!!」
「・・・えっと、遠慮は禁物ってことかな?皆、ありがとう」
皆が一生懸命僕を励ましてくれる。最後の方はよく分かんなかったけど。
親衛隊の皆は僕のことを好んでくれるから優しいのは当たり前なんだよね。・・・いや、ラプス様は親衛隊に負けないくらい僕のことを愛してくれてるんだ!僕だって、ラプス様にわがまま言ってもらえたら嬉しいし、きっとラプス様も一緒だ。よし!わがままとか気にせず考えてみよう。
「アールグレイ様、ご歓談中失礼いたします。少々よろしいですか?」
「いいよ。どうしたの?」
ハーブティーを丁度飲み干した時に、後ろから声をかけられる。声をかけてきた親衛隊の子は、なんだか困っている様子だ。
「アールグレイ様とお話がしたいという者が来ていまして。用件を聞いても、話をさせろの一点張りで。どういたしましょうか?」
「皆も一緒なら聞くよ。その人は今何処にいる?」
「皆で制止をしても聞かず、鍛練場まで入って来ています」
「大変だったね。じゃあ、僕達も鍛練場に行こうか」
片付けを後回しにするよう今日のお世話係に言って、一先ず皆で鍛練場についてきてもらった。
何をされるか分からないから、礼儀が欠けてるような人と会う時は、安全策として二人きりで会わないようにしている。第4王子の婚約者や親衛隊持ちっていう立場が反感を買う時はあるみたいだからね。
鍛練場に着いて、親衛隊の子達と揉めている見慣れない人物に声をかける。
「君が僕に用のある人かな?」
「来たな、フレーブ!お前に決闘を申し込む!」
予想を越えた無礼さに皆で面食らってしまう。名乗ってもない人に決闘を申し込まれてしまった。何人かはまさに絶句っていう状態だ。
いい人達としか関わることないから、こういう時はどうしても驚いちゃうよね。
彼は確か伯爵家の長男だったかな。加えて、カフェリオ令嬢と最近懇意にしている令息の一人だ。僕が直接関わることはこれまでなかった人だ。
「勝者は敗者の言うことを何でも聞く!これでどうだ!」
めちゃくちゃなことを言うなぁ。どうして、いい案を出してやってるみたいな雰囲気で話せるんだろう?不審さが増してしかいないのに。
「やる気を出して来てくれたみたいだけど、その申し出は断らせてもらうよ」
「なっ、何故だ!?」
「僕が君に決闘を申し込まれる理由が分からないし、負けたら何でも言うことを聞くなんて信用ならない提案は受け入れられないからだよ」
「はっ、勝てばいいだけのことだろう?俺に勝てる自信がないから、勝負から逃げるんだな!」
「君の実力を知らないから僕が負けるかどうかは分からないけど、なんと言われようと、何の意味があるのか分からない決闘はしないよ」
「申し込まれた決闘は全て受け入れるのが礼儀じゃないのか!?」
「名乗ってもない上に、家格が上の僕を呼び捨てにしたような人に礼儀を説かれる筋合いはないよ」
伯爵令息は、怒りが言葉にならない様子で、顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいる。決闘など関係なくこの場で暴れ出すかもしれない。
危険が起こる可能性に気付いた皆が、何が起きても直ぐに対処出来るよう、静かに身構え始めた。
そんな時に更に予想外の声が響いた。
「アルグはいるか?」
「ら、ラプス様!?」
「アルグ!部活が終わったら一緒に寮に戻ろうと思って迎えに来たんだ」
「あ、ありがとうございますっ」
近付いてくるラプス様に僕の気持ち全てが引き寄せられてしまう。伯爵令息のことなんて、一瞬でどうでもよなってしまった。
「フレーブ!俺との決闘があるんだ!簡単に帰れると思うなよ!」
「何だ、この男は?」
叫ぶ伯爵令息に、僕よりも先にラプス様が反応した。伯爵令息の方が穏やかではないせいか、ラプス様も怪訝な顔をされる。
「あ・・・彼は、勝った者の言うことを何でも聞くという条件で僕に決闘を申し込んできたので、お断りしているところです」
「とんだ臆病者だな!」
「俺のアルグに何てことを」
「ラプス様・・・」
俺のだなんて。人目を憚らず言われたことに、僕のために怒ってくださることに、つい歓んでしまう。
「何でも言うことを聞くだと?あの男、俺のアルグに不埒なことをさせようと企んでるようだな」
ラプス様がお怒りだ。あまり見ない姿に場違いにもときめいてしまう。
「アルグの婚約者である俺が、あの男にしっかりと立場を分からせてやるとしよう」
「ん?」
「そこの君、その決闘の申し込み、アルグの婚約者である俺が」
「ラプス様!!」
とんでもないことを言い出そうとしているラプス様を止めるために、ラプス様の手を握って引き寄せて、意識を僕に向けてもらう。
ラプス様が体力作りをするようになったとはお聞きしてるけど、始めたのはここ数ヶ月のことだし、それはあくまで体力作りであって、ラプス様は剣術の稽古も昔から欠席が多かった。
勝てる見込みがあるかの問題もあるけど、何より何でも言うことを聞くなんて条件の決闘を王子が受けていいわけがない!
「アルグ?」
とにかく、ラプス様の気が変わるように何か言わなきゃ。
「ぼ、僕のために争わないでください!」
何を言ってるんだ、僕は!?恥ずかしい!絶対今顔真っ赤だよ。ラプス様に引かれたらどうしよう!
「け、けどな、アルグ」
あっ、ちょっと響いてるみたい。ラプス様、困ってるみたいだけど、ちょっとほっぺが紅い。よかった!後もう一押し頑張れ僕!
「無礼な人と剣を交わすより、僕だけを見ていてください」
「っ!!」
いや、だから、何を言ってるんだ、僕は!?恥ずかしさで気絶しそう!でも、ラプス様が感極まってる時のお顔をされてるから、言った甲斐はあるはず!
「嗚呼、アルグ。愛しい婚約者からこんなにも可愛いお願いをされたら聞くしかないな。あの男の対処はシュガールに任せるとしよう」
「かしこまりました」
あからさまに安堵したことを悟られないように、溜息を飲み込む。
愛しいだなんて嬉しい。
仕事を増やしてしまったシュガールさんには、後で、ティズからお詫びの品を渡してもらおう。
「アールグレイ様、あの男の対処、私達も手伝ってよろしいでしょうか?」
「アールグレイ様のへの無礼を腹立たしく思っているのは皆同じです」
「皆はそりゃそうだよね。うん、今日の部活は終わりにして、僕の代わりにお願いするよ」
「承知しました!」
と言っても、ラプス様と僕が話してる間に、既に親衛隊の子達があの伯爵令息を取り押さえてたみたいだけど。
僕が頼むと皆更にテキパキと動き出した。
後始末をする皆の様子を見ていると、握ったままになっていた手を強く握り返されて心臓が跳ねた。
「アルグ、俺の部屋に行こう」
「は、はい、ラプス様」
熱の籠ったラプス様の瞳に心臓が爆発しそうになりながら、手を繋いだまま僕達は部活を後にした。
「そこまで!アールグレイ様の勝利!」
歓声が響く中で、手合わせをしていた青年とお互いに礼をする。
「アールグレイ様、手合わせしていただき、ありがとうございました。今日も素晴らしい剣技でした」
「こちらこそありがとう。皆のおかげでいろんな人と剣を合わせることが出来るから、僕も嬉しいよ」
「今後も精進して参りますので、また私と手合わせ願えますか?」
「もちろんだよ。それまでに僕も鍛錬を積んでおくね」
「アールグレイ様、明日は俺と手合わせしてくださいね!」
「うん、よろしくね」
剣術部は騎士見習いや剣術を嗜む令息令嬢が所属して、彼等を追いかけるように親衛隊達も入部するから、例年部員数が多い。
親衛隊の統率は、彼等の憧憬の対象になっている生徒にそれぞれ任されるから、騎士見習いにとっては将来隊を率いる際の予行演習にもなって、人気の仕組みにもなっている。
僕もありがたいことに親衛隊があるから、統率側になっていて、騎士団に入団予定はないけど、大勢の人々をまとめるという経験をさせてもらってる。
代わりに、親衛隊がいない人達は身の振り方に困ってしまうのが難点なんだけど。
「アールグレイ様、本日のメニューは皆終了いたしました」
「じゃあ、このまま皆少し休憩をしようか」
「はい。皆にも知らせて来ます」
「お願いね」
「アールグレイ様もお休みされますか?」
「うん、そうしようかな」
「では、お席を準備いたしますね」
「ありがとう」
僕のお世話をすることが、親衛隊の皆にとってご褒美になると本人達から懇願されて、申し訳ないと感じながらも、学園にいる間は任せることにしている。寮はプライベートだからそこはお断りさせてもらった。まぁ、問題があれば、ティズが指導することが条件だから安心ではあるんだけどね。
簡易で用意されたカフェテーブルで、もてなされたハーブティーを飲んで一息つく。
気が緩むと直ぐに今度行くラプス様とのデートのことが頭に浮かんでくる。楽しみで仕方ないんだからしょうがないよね。
街に行くこと以外のことを決めてなくて、ラプス様にどうしたいか聞かれて、少し考える時間をもらった。ラプス様と一緒なら何処でもいいんだけど、ラプス様が聞いてくれたから、たっぷり考えさせてもらうことにした。
「アールグレイ様、何かお考え事ですか?」
「あ、うん。今度ラプス様とデートに行くんだけど、何処に行くのがいいかなって思って」
「もしかして初デートですか!?」
「おめでとうございます!!」
「アールグレイ様が殿下とラブラブで、私達も嬉しいです!!」
ラ、ラブラブって、そんなに仲好しに見えるのかな。恥ずかしいけど、やっぱり僕達最近いい感じだよね。嬉しいなぁ。
「ありがとう。ラプス様が僕の希望を聞きたいと仰ってくれたんだ。楽しいデートにしたいから、わがままにならない範囲で考えたいんだけど」
「アールグレイ様がそのようなことを憂慮される必要はありませんわ!!」
「アールグレイ様に何を言われても、殿下は歓ぶに決まってます!!」
「何より、アールグレイ様のわがままは女神の微笑みと同義です!!世界平和のためにも、アールグレイ様はもっとわがままを言われるべきです!!」
「・・・えっと、遠慮は禁物ってことかな?皆、ありがとう」
皆が一生懸命僕を励ましてくれる。最後の方はよく分かんなかったけど。
親衛隊の皆は僕のことを好んでくれるから優しいのは当たり前なんだよね。・・・いや、ラプス様は親衛隊に負けないくらい僕のことを愛してくれてるんだ!僕だって、ラプス様にわがまま言ってもらえたら嬉しいし、きっとラプス様も一緒だ。よし!わがままとか気にせず考えてみよう。
「アールグレイ様、ご歓談中失礼いたします。少々よろしいですか?」
「いいよ。どうしたの?」
ハーブティーを丁度飲み干した時に、後ろから声をかけられる。声をかけてきた親衛隊の子は、なんだか困っている様子だ。
「アールグレイ様とお話がしたいという者が来ていまして。用件を聞いても、話をさせろの一点張りで。どういたしましょうか?」
「皆も一緒なら聞くよ。その人は今何処にいる?」
「皆で制止をしても聞かず、鍛練場まで入って来ています」
「大変だったね。じゃあ、僕達も鍛練場に行こうか」
片付けを後回しにするよう今日のお世話係に言って、一先ず皆で鍛練場についてきてもらった。
何をされるか分からないから、礼儀が欠けてるような人と会う時は、安全策として二人きりで会わないようにしている。第4王子の婚約者や親衛隊持ちっていう立場が反感を買う時はあるみたいだからね。
鍛練場に着いて、親衛隊の子達と揉めている見慣れない人物に声をかける。
「君が僕に用のある人かな?」
「来たな、フレーブ!お前に決闘を申し込む!」
予想を越えた無礼さに皆で面食らってしまう。名乗ってもない人に決闘を申し込まれてしまった。何人かはまさに絶句っていう状態だ。
いい人達としか関わることないから、こういう時はどうしても驚いちゃうよね。
彼は確か伯爵家の長男だったかな。加えて、カフェリオ令嬢と最近懇意にしている令息の一人だ。僕が直接関わることはこれまでなかった人だ。
「勝者は敗者の言うことを何でも聞く!これでどうだ!」
めちゃくちゃなことを言うなぁ。どうして、いい案を出してやってるみたいな雰囲気で話せるんだろう?不審さが増してしかいないのに。
「やる気を出して来てくれたみたいだけど、その申し出は断らせてもらうよ」
「なっ、何故だ!?」
「僕が君に決闘を申し込まれる理由が分からないし、負けたら何でも言うことを聞くなんて信用ならない提案は受け入れられないからだよ」
「はっ、勝てばいいだけのことだろう?俺に勝てる自信がないから、勝負から逃げるんだな!」
「君の実力を知らないから僕が負けるかどうかは分からないけど、なんと言われようと、何の意味があるのか分からない決闘はしないよ」
「申し込まれた決闘は全て受け入れるのが礼儀じゃないのか!?」
「名乗ってもない上に、家格が上の僕を呼び捨てにしたような人に礼儀を説かれる筋合いはないよ」
伯爵令息は、怒りが言葉にならない様子で、顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいる。決闘など関係なくこの場で暴れ出すかもしれない。
危険が起こる可能性に気付いた皆が、何が起きても直ぐに対処出来るよう、静かに身構え始めた。
そんな時に更に予想外の声が響いた。
「アルグはいるか?」
「ら、ラプス様!?」
「アルグ!部活が終わったら一緒に寮に戻ろうと思って迎えに来たんだ」
「あ、ありがとうございますっ」
近付いてくるラプス様に僕の気持ち全てが引き寄せられてしまう。伯爵令息のことなんて、一瞬でどうでもよなってしまった。
「フレーブ!俺との決闘があるんだ!簡単に帰れると思うなよ!」
「何だ、この男は?」
叫ぶ伯爵令息に、僕よりも先にラプス様が反応した。伯爵令息の方が穏やかではないせいか、ラプス様も怪訝な顔をされる。
「あ・・・彼は、勝った者の言うことを何でも聞くという条件で僕に決闘を申し込んできたので、お断りしているところです」
「とんだ臆病者だな!」
「俺のアルグに何てことを」
「ラプス様・・・」
俺のだなんて。人目を憚らず言われたことに、僕のために怒ってくださることに、つい歓んでしまう。
「何でも言うことを聞くだと?あの男、俺のアルグに不埒なことをさせようと企んでるようだな」
ラプス様がお怒りだ。あまり見ない姿に場違いにもときめいてしまう。
「アルグの婚約者である俺が、あの男にしっかりと立場を分からせてやるとしよう」
「ん?」
「そこの君、その決闘の申し込み、アルグの婚約者である俺が」
「ラプス様!!」
とんでもないことを言い出そうとしているラプス様を止めるために、ラプス様の手を握って引き寄せて、意識を僕に向けてもらう。
ラプス様が体力作りをするようになったとはお聞きしてるけど、始めたのはここ数ヶ月のことだし、それはあくまで体力作りであって、ラプス様は剣術の稽古も昔から欠席が多かった。
勝てる見込みがあるかの問題もあるけど、何より何でも言うことを聞くなんて条件の決闘を王子が受けていいわけがない!
「アルグ?」
とにかく、ラプス様の気が変わるように何か言わなきゃ。
「ぼ、僕のために争わないでください!」
何を言ってるんだ、僕は!?恥ずかしい!絶対今顔真っ赤だよ。ラプス様に引かれたらどうしよう!
「け、けどな、アルグ」
あっ、ちょっと響いてるみたい。ラプス様、困ってるみたいだけど、ちょっとほっぺが紅い。よかった!後もう一押し頑張れ僕!
「無礼な人と剣を交わすより、僕だけを見ていてください」
「っ!!」
いや、だから、何を言ってるんだ、僕は!?恥ずかしさで気絶しそう!でも、ラプス様が感極まってる時のお顔をされてるから、言った甲斐はあるはず!
「嗚呼、アルグ。愛しい婚約者からこんなにも可愛いお願いをされたら聞くしかないな。あの男の対処はシュガールに任せるとしよう」
「かしこまりました」
あからさまに安堵したことを悟られないように、溜息を飲み込む。
愛しいだなんて嬉しい。
仕事を増やしてしまったシュガールさんには、後で、ティズからお詫びの品を渡してもらおう。
「アールグレイ様、あの男の対処、私達も手伝ってよろしいでしょうか?」
「アールグレイ様のへの無礼を腹立たしく思っているのは皆同じです」
「皆はそりゃそうだよね。うん、今日の部活は終わりにして、僕の代わりにお願いするよ」
「承知しました!」
と言っても、ラプス様と僕が話してる間に、既に親衛隊の子達があの伯爵令息を取り押さえてたみたいだけど。
僕が頼むと皆更にテキパキと動き出した。
後始末をする皆の様子を見ていると、握ったままになっていた手を強く握り返されて心臓が跳ねた。
「アルグ、俺の部屋に行こう」
「は、はい、ラプス様」
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