悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき

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10 初デート

 「楽しみですね」と言った微笑みの麗しさ、ほんのりと頬を染める愛らしさ、潤んだ瞳の艶やかさ、今日のアルグも最高に可愛い。デートは開始したばかりだが、アルグの可愛いさで今日も既に最高の一日なっている。
 しかも、今日のデートで進めようと思っていたステップ『手を繋いで歩く』は、図らずもこの間出来たからな。あの日のアルグも最高に可愛いくて、アルグから握ってくれた手を離すなんてことは全く頭に浮かんでこなかった。
 おかげで今日は馬車移動の時からずっと手を繋ぎ続けている。馬車に乗る時に差し出した手をアルグがこのまま離したくないと言ったんだ。はぁ。今日も俺のアルグは最高に可愛い。
 アルグの手の感触を味わいたくて、こう、にぎにぎと何度かしているんだが、俺のその行為に応えるようにアルグが恥じらいながら握り返してくるのがまた可愛いくて興奮する。
 今日のデートの最初の目的地は宝石店だ。そして、宝石店が今日のデートのメインでもある。
 アルグが俺とお揃いのアクセサリーが欲しいと言ったんだ。極上のおねだりだ。もちろん、互いに常に身に着けることを約束した。
「どのアクセサリーがいいかは決めたか?」
「まだ悩んでいて。ラプス様も僕も日頃身に着けやすいものって考えてたら、身に着けようと思えば何でも身につけられるのかなって思って決めかねてるんです」
「メインとなる宝石を見れば、もっとイメージかが固まるんじゃないか?」
「そうですね。お店ならプロもいて相談も出来るので、今は悩み過ぎないようにします」
「それがいい。今はこの手の温もりに集中しようじゃないか」
「は、はいぃ」
 今日も照れるアルグも可愛いな。
 まだ抱きしめ合える段階まで進展出来ていないのが口惜しい。おかげで、アルグがあまりにも可愛くて俺がどうにかなってしまいそうな時は、ひたすらアルグの手にキスを送っている。そんな俺を頬を紅くしてボーッと見つめるアルグも可愛くて、キスが止まらなくなる。
 もう少し関係を進展させたい。もっと触れたい。愛しさも欲望も日々想いが増していく。時に苦しく感じるほどだけど、それもまた幸せだと感じてはいる。
 アルグと二人で過ごす時間はあっという間で、気付いたら店に着いていた。
 宝石商にはお揃いのアクセサリーを作ってもらいたいことを伝えて、お勧めだと言う宝石をいくつか見繕ってもらった。
「赤や青の宝石が多いな」
「ご自身の瞳の色の宝石を恋人に贈るというのは、永きに渡って人々が好んできましたので、殿下とフレーブご令息の瞳と同じ色の宝石を持って参りました」
「恋人の瞳の色・・・」
 宝石商の話を聞いて、アルグが熱っぽい瞳で俺を見つめてくる。アルグはどうしてすぐ俺を煽るような可愛いことをするんだろうか。それも俺達が愛し合っているがゆえ、仕方のないことなんだろう。アルグも俺のことをかっこいいと何度も思ってるかもしれないしな!
「じゃあ、俺は青い宝石、アルグは赤い宝石をあしらった同じデザインのアクセサリーにしようか」
「はい、ラプス様」
 嬉しそうに頷くアルグが可愛い。
 より瞳に近い色やそれぞれの宝石の意味を確認して、俺のにはタンザナイトを、アルグのにはガーネットをあしらって、アクセサリーを作ってもらうことにした。
「後は何に加工するかだが」
「あの、僕、耳飾りがいいです」
「アルグに希望があるなら、それがいい」
「ありがとうございます」
 具体的デザインを宝石商と確認し、予め頼んでいた通り、直ぐに製作に取り掛かってもらう。

 完成を待つ間、昼食をとりに一度宝石店を出て、茶葉が置いてある店をいくつか回った後に店に戻った。
 タンザナイトとガーネットそれぞれが右の耳元で揺れるアシンメトリーなデザインのシルバーピアスが出来上がっていた。
 店主に礼を言い、アルグの希望で店内でそのまま互いにピアスを付け合って、帰路に着いた。
 アルグの顔に触れたのは初めてだった。と馬車の中で思い出す。伏し目がちに照れている姿が可愛かった。いっぱいいっぱいになっているようには見えず、もっと触れてもいいんじゃないかと期待が込み上げてくる。
「アルグ」
「はい、ラプスさ、まっ!」
「もっとよく顔を見せてくれ」
「はっ、はぃ」
 アルグの頬に手を伸ばし、そっと触れるように俺に振り向かせる。
 涼し気な色で造られているアルグの美貌の中で、唯一ガーネットの赤が熱を放っている。まるで俺のものだと主張しているようだ。きっと、これをアルグが望んだということだ。
 可愛い俺のアルグ。今もこうして顔に触れて見つめ合っていれば、瞳がどんどん蕩けていってる。
 潤んだ瞳から雫が零れ、紅く染まった頬を伝う姿はなんとも官能的だ。まだまだ俺との触れ合いにドキドキが止まらないのも可愛い。
 アルグの涙を掬うように頬に口付ける。アルグは目を見開いて、顔を耳まで真っ赤にした。口がハクハクと動いている。
「嫌だったか?」
「そんなことはありません!あの、ちょっと、待ってください。気持ちを落ち着けるので」
 アルグが胸に手を当て深呼吸をする。潤んだ目も紅い頬もそのままで、俺を見つめ返した。
「もっとしてください、ラプス様」
「嗚呼、もちろんだ。アルグもしてくれるか?」
「はい、喜んで」
 馬車が学園寮に着くまで、俺達は互いの頬にキスを贈り合っていた。

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