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「最近、アルグに元気がない気がする」
「ご自身でアールグレイ様のご様子の変化に気付かれるとは、ラプサンス様もご成長されましたね」
紅茶を淹れながら淡々と話す執事を横に見て、褒められてはいるのだろうと微かな不快感を飲み込む。
最近のアルグは、俺と会って嬉しそうにする可愛さはいつも通りだが、表情にどことなく陰りがある。もちろん、影のあるアルグも、儚さが加わったことで、繊細的な美しさをまとい、新たなる魅力となっている。
しかし、アルグの魅力に心が惹かれる以上に、寂しそうで辛そうなアルグを見ていると心が苦しい。きっとアルグが抱えている苦しみが俺にも伝わってきているということだ。未来の夫婦ゆえに図らずも以心伝心しているということだな。
まぁ、先ずは何より、アルグの憂いを晴らすことが大事だ。
「食堂の中庭でジンジャーと話をした後から、アルグの様子が変わったと思う」
あの日、アルグは大丈夫だと俺に言ったが、やっぱりジンジャーに何かされたんじゃないだろうか。
昔から、ジンジャーは俺を嫌っている節があった。一緒に居てもあまり気分がよくないから、俺からも必要な時以外は顔を合わせることをほとんどしなかった。
ジンジャーに限らず、第ニ妃の子ども達には近付くなと兄上達に繰り返し聞かされてきた。理由については、俺がもっと賢くなったら話すと言われ続けている。何度思い返しても酷い話だ。兄上達はまだ俺に理由を話してくれない。
その話は今は置いておいて、ジンジャーは嫌いな俺にではなく、俺の周りの者達に何かを仕掛けることが多かった。ずっと距離があったから狙われることもなかったのか、ジンジャーがアルグに接触してきたのはたぶん今回が初めてだ。
「やっぱり、ジンジャーに何をしたのか聞きに行くべきだろうか」
「それでは解決にならないと思いますよ」
「何でだ?ジンジャーが何かアルグにした可能性が高いんだから、ジンジャーに聞けば何があったか分かるんじゃないか?」
「たとえジンジャー王女にきっかけがあったのだとしても、アールグレイ様の御心をジンジャー王女が掌握しているわけではないのです。アールグレイ様の思いは御本人にしか分かりませんよ」
言われてみればそうかもしれない。考えてみれば、俺は分からないのに、ジンジャーはアルグの気持ちを知ってるなんていうのも不愉快な話だ。
「そして、アールグレイ様とお話しなければ、殿下が心配しているというお気持ちもアールグレイ様に伝わることはありません」
「確かにそうだな。それで俺が薄情な男だとアルグに思われてしまうなど、辛くて耐えきれない」
アルグとちゃんと話してこなかったから、長い間俺はアルグを嫌う浮気性な男だとアルグに思われ続けていたんだ。あの苦しい日々を繰り返すわけにはいかない。
「よし!アルグと話をする!シュガール、一報伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
寮の俺の部屋にて、長椅子に並んで座り、アルグとティータイムを始める。今日も俺のアルグは可愛い。けど、どこか物憂げな表情には心が痛む。
いざ聞くとなると緊張するな。何を言われるか分からないというのはやっぱり怖いものだ。けどここは、アルグの恋人かつ未来の夫として、俺が頼れる男であるとアルグに示せる機会にもなるはずだ。頑張るんだ、俺!
「その、アルグ」
「はい、ラプス様」
「最近、元気がないように見えるんだが、あー、何か、悩んでいることでもあるのか?よければ、その、聞くぞ」
「・・・僕、顔に出てましたか?」
気まずそうな表情でアルグが問いかけてくる。暴いてはいけないものを剥き出しにしようとしているような感覚に襲われる。
「嗚呼、まあ、俺にはそう見えたんだ」
「ご心配をおかけして申し訳ないです」
「そんなことは気にしなくていい!俺はアルグの恋人であり、未来の夫だからな。心配するのは当然だし、俺に心配されることはもはやアルグの特権だと思っていい」
「あ、ありがとうございます」
頬染めて恥じらうアルグが可愛い。大丈夫、大丈夫だ。このまま話を続けるんだ。
「それで、どうする?話してくれるか?もちろん、嫌なら無理はしなくていい」
俺が寛大な男であるということもしっかりアルグに見せなければ。焦らなくていい。
「そう、ですね。一人で考え続けてもどうにかなるわけでもないですし、先延ばしにしても、ただ辛い時間が続くだけでしょうから」
「そうか。・・・あ、えっと、あの・・・俺でいいか?」
「え?」
「アルグの話を聞く相手は、俺でいいのだろうか?」
ここまで来て、俺は何を怖気付いているんだ。本当に、どうしようもない男だな。きっと、これまでもずっとそうだったんだ。皆気付いていたのに、俺だけが気付いていなかった。
今まで、俺は誰かの悩みを聞いたことも、誰かに頼み事をされたこともない。頼りになる人間だと思われていなかった証拠だ。愛する人の力になりたいと思って、ようやくその事実に気付けた。
入学してからずっと生徒会長の席にいたというのに、生徒会の仕事だって何一つやったことはない。仕事を頼まれることすらなかった。楽でいいなんて考えていた自分が、どれだけ恥ずかしい人間だったのか、今ようやく分かった。
何より、俺が意気地のない情けない男だったから、ずっと俺とアルグはすれ違い続けていたんだ。
こんな男が、アルグの悩みを聞けるのだうか。こんな男に、アルグは悩みを話したいだろうか。
アルグは、俺の質問にキョトンと可愛い顔をした後、目をやや伏せて返事を考え始める。
「・・・・・・そうですね、ラプス様に聞いてもらいたいです。他の誰かの話じゃなくて、ラプス様はどう思われるか、聞かせてほしいです」
少しの思案の末、アルグが話し相手に俺を選んでくれた。たとえ、気を遣われたのだとしても、嬉しくて堪らない。
「そ、そうか!分かった。何でも言ってくれ!」
他の誰かじゃなく、アルグが選んてくれることが何よりも嬉しい。
「何でもなんて言っちゃ駄目ですよ。よからぬことを考えてる人もいるんですから」
「アルグが俺を好きでいてくれるなら、俺は何でもいいんだ」
「っ!!」
アルグが一瞬目を見開いた後、顔を紅くする。照れているのか、唇をぎゅっと結んでいる。アルグはいつでも本当に可愛いな。
「それで、聞いてほしいことなんですが」
「嗚呼」
「ラプス様は、その、恋のドキドキに慣れるというのは、どういうことだと思いますか?」
「?ドキドキに慣れる?」
「は、はい」
アルグが俺と居るとドキドキし過ぎて涙が出ると最初に話してくれたことのことか?
俺もアルグと一緒に居られるようになったばかりの頃は、今よりドキドキ・・・ドギマギ?してたな。嬉しいのはもちろんだが、どこか緊張もしていたという感覚だったように思う。
「ドキドキに慣れるというか、一緒に居ることが当たり前のようになって、緊張がなくなっていったという感じだな。おかげで毎日アルグの愛おしさやアルグが隣に居る幸せばかりを強く感じられるようになったぞ!」
アルグと想いが通じ合ったあの日から、それまでの日々が嘘だったかのように、毎日幸せで堪らない。
胸のドキドキはきっと恋を知らせるサインだ。他の人間に抱いている想いの違いを見分ける指標であるのは確かだが、永い時間を連れ添う夫婦はそんなものを超越するに決まっている。
俺の答えにアルグが呆けたような顔をした。俺はおかしなことを言っただろうか。アルグの想いには合わなかったのだろうか。
内心焦りを感じていると、アルグがスッと俺に近付き、身体をぴったりくっつけて座り直した。
「ア、アルグ?」
今までにない密着した距離に心臓が爆発しそうになる。
俺に呼ばれて振り向いたアルグの瞳は、熱を帯びて潤んでいた。
「ラプス様」
「嗚呼」
「好きです」
「へっ!?」
「好きです、ラプス様」
「お、俺も好きだ!愛してるぞ、アルグ!」
「はい、僕も愛してます」
急な展開に頭がついていかない。が、アルグが俺に愛を伝えてくれてるんだから、俺が伝え返さないなんてことは有り得ない!
「いつもアルグのことだけを心から想っている」
「ラプス様・・・僕もいつもラプス様だけを想っています。大好きです」
「アルグ・・・!」
「だから、抱きしめてほしいです」
アルグと愛を囁き合える幸福に浮かれている中、突然のアルグからのお願いに一瞬時が止まる。
「い、いのか?」
「ラプス様がお嫌じゃなければ」
「嫌なんてことあるはずがない。アルグからそう言ってくれて、嬉しくてたまらないくらいだ」
「ラプス様・・・!」
感激と期待で満ち溢れる表情のアルグをゆっくりと抱き締める。
アルグを抱き締めるのは2回目だ。想いが通じ合った日以来初めてで、あの時は俺の暴走でアルグに気を失わせてしまった。今回はどうなるだろうかとひっそり緊張する。
俺から抱き締めて数秒後、アルグの腕が俺の背中に回った。アルグが抱き締め返してくれた。
「こうしてラプス様と抱きしめ合えるのが初めてなので、心臓が痛いくらいにドキドキしてます。きっとこれも好きだからってだけじゃなくて、緊張もあるからなんですね」
「嗚呼、俺も緊張してる」
「ふふっ。確かにドキドキが落ち着いたら、ラプス様の温もりだけを感じていられますね。心臓があんまり煩いと、そっちが気になっちゃいます」
楽しそうな声でアルグが可愛いことを話す。もう憂いは拭えたのだろうか。
「もう心配事は大丈夫か?」
「はい。ラプス様のおかげで元気になりました」
「そうか!よかった!」
俺の話の何がよかったのか、そもそもアルグが何に悩んでいたのかよく分からなかったが、俺でも誰かの、アルグの役に立つことが出来た!
そうだ。少しずつ頼れる男を目指そう。そして、多くの人間に慕われるアルグに相応しい男になるんだ。
「そして、ラプス様のことをもっと好きになりました」
「お、俺も毎日アルグへの愛は大きく深くなってるぞ!」
「僕も毎日大好きです」
その後はひたすらぎゅうぎゅうと抱き締めあって、今日もまたアルグと幸せな一時を過ごすことが出来た。
「ご自身でアールグレイ様のご様子の変化に気付かれるとは、ラプサンス様もご成長されましたね」
紅茶を淹れながら淡々と話す執事を横に見て、褒められてはいるのだろうと微かな不快感を飲み込む。
最近のアルグは、俺と会って嬉しそうにする可愛さはいつも通りだが、表情にどことなく陰りがある。もちろん、影のあるアルグも、儚さが加わったことで、繊細的な美しさをまとい、新たなる魅力となっている。
しかし、アルグの魅力に心が惹かれる以上に、寂しそうで辛そうなアルグを見ていると心が苦しい。きっとアルグが抱えている苦しみが俺にも伝わってきているということだ。未来の夫婦ゆえに図らずも以心伝心しているということだな。
まぁ、先ずは何より、アルグの憂いを晴らすことが大事だ。
「食堂の中庭でジンジャーと話をした後から、アルグの様子が変わったと思う」
あの日、アルグは大丈夫だと俺に言ったが、やっぱりジンジャーに何かされたんじゃないだろうか。
昔から、ジンジャーは俺を嫌っている節があった。一緒に居てもあまり気分がよくないから、俺からも必要な時以外は顔を合わせることをほとんどしなかった。
ジンジャーに限らず、第ニ妃の子ども達には近付くなと兄上達に繰り返し聞かされてきた。理由については、俺がもっと賢くなったら話すと言われ続けている。何度思い返しても酷い話だ。兄上達はまだ俺に理由を話してくれない。
その話は今は置いておいて、ジンジャーは嫌いな俺にではなく、俺の周りの者達に何かを仕掛けることが多かった。ずっと距離があったから狙われることもなかったのか、ジンジャーがアルグに接触してきたのはたぶん今回が初めてだ。
「やっぱり、ジンジャーに何をしたのか聞きに行くべきだろうか」
「それでは解決にならないと思いますよ」
「何でだ?ジンジャーが何かアルグにした可能性が高いんだから、ジンジャーに聞けば何があったか分かるんじゃないか?」
「たとえジンジャー王女にきっかけがあったのだとしても、アールグレイ様の御心をジンジャー王女が掌握しているわけではないのです。アールグレイ様の思いは御本人にしか分かりませんよ」
言われてみればそうかもしれない。考えてみれば、俺は分からないのに、ジンジャーはアルグの気持ちを知ってるなんていうのも不愉快な話だ。
「そして、アールグレイ様とお話しなければ、殿下が心配しているというお気持ちもアールグレイ様に伝わることはありません」
「確かにそうだな。それで俺が薄情な男だとアルグに思われてしまうなど、辛くて耐えきれない」
アルグとちゃんと話してこなかったから、長い間俺はアルグを嫌う浮気性な男だとアルグに思われ続けていたんだ。あの苦しい日々を繰り返すわけにはいかない。
「よし!アルグと話をする!シュガール、一報伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
寮の俺の部屋にて、長椅子に並んで座り、アルグとティータイムを始める。今日も俺のアルグは可愛い。けど、どこか物憂げな表情には心が痛む。
いざ聞くとなると緊張するな。何を言われるか分からないというのはやっぱり怖いものだ。けどここは、アルグの恋人かつ未来の夫として、俺が頼れる男であるとアルグに示せる機会にもなるはずだ。頑張るんだ、俺!
「その、アルグ」
「はい、ラプス様」
「最近、元気がないように見えるんだが、あー、何か、悩んでいることでもあるのか?よければ、その、聞くぞ」
「・・・僕、顔に出てましたか?」
気まずそうな表情でアルグが問いかけてくる。暴いてはいけないものを剥き出しにしようとしているような感覚に襲われる。
「嗚呼、まあ、俺にはそう見えたんだ」
「ご心配をおかけして申し訳ないです」
「そんなことは気にしなくていい!俺はアルグの恋人であり、未来の夫だからな。心配するのは当然だし、俺に心配されることはもはやアルグの特権だと思っていい」
「あ、ありがとうございます」
頬染めて恥じらうアルグが可愛い。大丈夫、大丈夫だ。このまま話を続けるんだ。
「それで、どうする?話してくれるか?もちろん、嫌なら無理はしなくていい」
俺が寛大な男であるということもしっかりアルグに見せなければ。焦らなくていい。
「そう、ですね。一人で考え続けてもどうにかなるわけでもないですし、先延ばしにしても、ただ辛い時間が続くだけでしょうから」
「そうか。・・・あ、えっと、あの・・・俺でいいか?」
「え?」
「アルグの話を聞く相手は、俺でいいのだろうか?」
ここまで来て、俺は何を怖気付いているんだ。本当に、どうしようもない男だな。きっと、これまでもずっとそうだったんだ。皆気付いていたのに、俺だけが気付いていなかった。
今まで、俺は誰かの悩みを聞いたことも、誰かに頼み事をされたこともない。頼りになる人間だと思われていなかった証拠だ。愛する人の力になりたいと思って、ようやくその事実に気付けた。
入学してからずっと生徒会長の席にいたというのに、生徒会の仕事だって何一つやったことはない。仕事を頼まれることすらなかった。楽でいいなんて考えていた自分が、どれだけ恥ずかしい人間だったのか、今ようやく分かった。
何より、俺が意気地のない情けない男だったから、ずっと俺とアルグはすれ違い続けていたんだ。
こんな男が、アルグの悩みを聞けるのだうか。こんな男に、アルグは悩みを話したいだろうか。
アルグは、俺の質問にキョトンと可愛い顔をした後、目をやや伏せて返事を考え始める。
「・・・・・・そうですね、ラプス様に聞いてもらいたいです。他の誰かの話じゃなくて、ラプス様はどう思われるか、聞かせてほしいです」
少しの思案の末、アルグが話し相手に俺を選んでくれた。たとえ、気を遣われたのだとしても、嬉しくて堪らない。
「そ、そうか!分かった。何でも言ってくれ!」
他の誰かじゃなく、アルグが選んてくれることが何よりも嬉しい。
「何でもなんて言っちゃ駄目ですよ。よからぬことを考えてる人もいるんですから」
「アルグが俺を好きでいてくれるなら、俺は何でもいいんだ」
「っ!!」
アルグが一瞬目を見開いた後、顔を紅くする。照れているのか、唇をぎゅっと結んでいる。アルグはいつでも本当に可愛いな。
「それで、聞いてほしいことなんですが」
「嗚呼」
「ラプス様は、その、恋のドキドキに慣れるというのは、どういうことだと思いますか?」
「?ドキドキに慣れる?」
「は、はい」
アルグが俺と居るとドキドキし過ぎて涙が出ると最初に話してくれたことのことか?
俺もアルグと一緒に居られるようになったばかりの頃は、今よりドキドキ・・・ドギマギ?してたな。嬉しいのはもちろんだが、どこか緊張もしていたという感覚だったように思う。
「ドキドキに慣れるというか、一緒に居ることが当たり前のようになって、緊張がなくなっていったという感じだな。おかげで毎日アルグの愛おしさやアルグが隣に居る幸せばかりを強く感じられるようになったぞ!」
アルグと想いが通じ合ったあの日から、それまでの日々が嘘だったかのように、毎日幸せで堪らない。
胸のドキドキはきっと恋を知らせるサインだ。他の人間に抱いている想いの違いを見分ける指標であるのは確かだが、永い時間を連れ添う夫婦はそんなものを超越するに決まっている。
俺の答えにアルグが呆けたような顔をした。俺はおかしなことを言っただろうか。アルグの想いには合わなかったのだろうか。
内心焦りを感じていると、アルグがスッと俺に近付き、身体をぴったりくっつけて座り直した。
「ア、アルグ?」
今までにない密着した距離に心臓が爆発しそうになる。
俺に呼ばれて振り向いたアルグの瞳は、熱を帯びて潤んでいた。
「ラプス様」
「嗚呼」
「好きです」
「へっ!?」
「好きです、ラプス様」
「お、俺も好きだ!愛してるぞ、アルグ!」
「はい、僕も愛してます」
急な展開に頭がついていかない。が、アルグが俺に愛を伝えてくれてるんだから、俺が伝え返さないなんてことは有り得ない!
「いつもアルグのことだけを心から想っている」
「ラプス様・・・僕もいつもラプス様だけを想っています。大好きです」
「アルグ・・・!」
「だから、抱きしめてほしいです」
アルグと愛を囁き合える幸福に浮かれている中、突然のアルグからのお願いに一瞬時が止まる。
「い、いのか?」
「ラプス様がお嫌じゃなければ」
「嫌なんてことあるはずがない。アルグからそう言ってくれて、嬉しくてたまらないくらいだ」
「ラプス様・・・!」
感激と期待で満ち溢れる表情のアルグをゆっくりと抱き締める。
アルグを抱き締めるのは2回目だ。想いが通じ合った日以来初めてで、あの時は俺の暴走でアルグに気を失わせてしまった。今回はどうなるだろうかとひっそり緊張する。
俺から抱き締めて数秒後、アルグの腕が俺の背中に回った。アルグが抱き締め返してくれた。
「こうしてラプス様と抱きしめ合えるのが初めてなので、心臓が痛いくらいにドキドキしてます。きっとこれも好きだからってだけじゃなくて、緊張もあるからなんですね」
「嗚呼、俺も緊張してる」
「ふふっ。確かにドキドキが落ち着いたら、ラプス様の温もりだけを感じていられますね。心臓があんまり煩いと、そっちが気になっちゃいます」
楽しそうな声でアルグが可愛いことを話す。もう憂いは拭えたのだろうか。
「もう心配事は大丈夫か?」
「はい。ラプス様のおかげで元気になりました」
「そうか!よかった!」
俺の話の何がよかったのか、そもそもアルグが何に悩んでいたのかよく分からなかったが、俺でも誰かの、アルグの役に立つことが出来た!
そうだ。少しずつ頼れる男を目指そう。そして、多くの人間に慕われるアルグに相応しい男になるんだ。
「そして、ラプス様のことをもっと好きになりました」
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