王家は真実の愛を推奨しています

みあき

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 帰りの馬車で、今日のことをどのように両親に報告するか悩み続けた。
 父上と母上が私の話を信じてくれないということはないと思う。王妃は信用ならないと言っていたのは、元々父上と母上だもの。
 それに王妃によって、私は社交界に悪評を広められる可能性が高い。私のせいでリザリオン侯爵家に迷惑をかけると分かっているのに、黙っていていいはずがない。
 それでも、これは本当に人に話していいことなのかと不安が沸いてくるのだ。
 答えが出ないまま、馬車が屋敷に着いた。馬車を降りると、駆けつけてくる母上の姿が見えた。
「ローズ!」
「ただいま帰りました、母上」
「おかえりなさい」
 私の元に辿り着いた母上に、ギュッと抱き締められた。
「おかえりなさい、ローズ。今日はどうだった?王妃には何もされていない?嫌な思いはしなかった?」
「あ・・・」
 母上に問われた途端、涙が溢れてきた。ついさっきまで大丈夫だったのに。
「あの、私・・・」
「嗚呼、ローズ、ごめんね。大丈夫、大丈夫よ。大丈夫だから」
 あのお茶会のことを何も知らなくても、母上がこんなに心配するほどの人物であるのが、王妃だったのだ。王子との婚約が光栄だなんて、呑気な考えだったんだわ。
 私なら上手にやれると強い気持ちでいたけれど、母上と顔を合わせてからは涙が止まらない。
 私は門の前でしばらく母上の胸の中で泣いていた。


 私が泣き止む頃には、父上もお仕事から帰ってきた。泣いた様子の私を父上が見て、また一騒ぎ起きたけれど、仕切り直して居間で今日の報告をすることになった。
 私を心配してくれている母上は、私の側にずっとついてくれている。父上も近くの椅子に座って、私を心配そうに見ている。
「ローズ、あなたがあんなにも泣くだなんて、何があったの?」
「・・・私は悪役にちょうどいい、と」
「・・・悪役に、ちょうどいい?」
「私は、王子殿下が真実の愛を知るための恋物語の悪役にちょうどいいと言われたわ」
 気が重くなって少し俯く。その数秒間、音がなかった。使用人も含めて皆、驚いて言葉を失って身動きがとれなくなっているのかもしれない。
 顔を上げると、母上のお顔は青褪めていて、父上のお顔は怒りで満ちていた。
「あの女、王子との婚約など怪しいと思えばそういうことか!!」
「私達の大事なローズを何だと思っているの!!」
 今まで決して見たことがない激しさを見せる両親の姿に、おかしいけれどホッとした。父上と母上が私のために、こんなにも怒ってくれるのだということが嬉しかった。それだけで何もかも大丈夫な気持ちになれた。
「あのね、王妃殿下に言われたことは腹立たしかったけれど、私、母上の教えを守って、落ち着いて笑顔でお話を続けられたのよ。偉いでしょ?」
「!!そうなの、ローズ?大人の対応をしたのね。とっても偉いわ。王妃に何て言って返したの?」
 母上が私の言葉に少し驚いたお顔をした後、直ぐに笑顔で私の頭をなでてくれた。
「どうせ無駄になるから王妃教育は受けなくていいと言われたの。それと、私は侯爵令嬢だからわがままだとも言われたわ。だから、わがままな令嬢風に、せっかく王宮に行けるのだから、王妃教育は続けると言ったのよ!」
「ふふふっ、王妃の言葉を利用したのね。すごいわ、ローズ」
「嗚呼、大人顔負けの話術だな。すごいぞ!」
「でしょ!」
 私の話を聞きながら、父上の怒りも落ち着いていつもの笑顔に戻った。
 母上と父上が誉めながら抱き締めてくれる。さっきまでの怒りや悲しみが消えていくのを感じる。ここに戻ってこれるのだから、きっと私は、何だって頑張ることが出来るわ。
「でも、きっと私はわがままな令嬢だと、社交界に噂を広められてしまうと思うの。そしたら、侯爵家に迷惑をかけてしまうわ」
「まぁ、ローズ!」
「ローズ、そんなことは気にしなくていいんだ」
「そうよ。母と父がどうにかしてあげるからね。優しいローズ、あなたは自分のことを考えていれば大丈夫よ」
「嗚呼、私達が必ずローズを守るからな」
「ええ、必ず守るわ」
 優しい言葉をかけてくれながら、父上と母上がぎゅうぎゅうと私を抱きしめ続けてくれる。
 私は抱きしめ返しながら小さく返事をした。
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