行員由奈の災難

MIKAN🍊

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11.子どもじみた悪戯

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やっとの思いで放尿し終えると由奈はまだ温かい紙コップを菅に手渡した。
「あの、紙を…」
「ああすまない。そうでしたね。気が付かなくて」菅はポケットティッシュを差し出した。
由奈は内腿を拭った。

「まだ出そうならトイレに行ってらっしゃい。大丈夫ですか?そうですか。実は二階に支店長がまだ残ってましてね。お茶が欲しいらしいです。だからこれをね… クククッ」
「どうしてそんな事をするんですか?」由奈は蒼ざめた。
「どうして?支店長には随分虐められてましてね。あのドS。あなたもそうでしょう、南川さん?あなたも私も似た者同士なんです。もうね、私のようなうだつの上がらない万年課長なんてね。この位の愉しみしかないんですよ。銀行マンなんてね、そんなものですよ。朝から晩まで他人の金を勘定して。仕事がハード過ぎて何処か心のネジがおかしくなってもちっとも不思議じゃない」
菅は新たに紙コップを引き抜きそこへ熱い緑茶を注いだ。

「少し捨てましょう。こんなものかな?」
茶が減ったところへ由奈の尿を足す。
「出来ました。さ、これを支店長のところへ持って行って下さい」
「私それは無理です」
「南川さん。二人は似た者同士の共犯者なんですよ。忘れちゃいけません」
「これで今日は解放してくれるんですね?」
「もちろんです」
由奈は仕方なく自分の尿が混じったお茶を盆に載せた。

「あとで聞かせて下さいね。支店長がそのお茶を飲んだ時の様子をね。あははは!」
菅は紙コップに残った由奈の尿を一息に飲み干した。
「ふぅー。美味い」
由奈はあっけに取られてそれを見ていた。
この男の本心がわからない。正常なのかそれとも狂っているのか。
私は何故この男の命令に従っているのか。この男の言うように私とこの男は似た者同士なのだろうか。
子どもじみた悪戯の様な要求をしてくる、この男の目的はいったい何なのだ?

「それで?それからどうしたの?」
保子は話しの続きを早く聞きたかった。何杯目かのコーヒーを追加して保子は身を乗り出した。
「その日はそれで終わりました」
「違うって。そうじゃなくて支店長に飲ませたの?それ、そのオシッコ入りのお茶を?」
「はい」
「バレなかったの?」
「ええ。やっぱり若い子がいれてくれたお茶は旨いなって。満足そうでした」
保子はプッと吹き出した。 支店長には保子も散々嫌な目に合っている。何故か爽快な思いがした。
由奈もつられてケラケラと笑った。

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