夜伽話 【ぼくのために寝取られる愛しい君】

take

文字の大きさ
5 / 30

第五夜 あなたを淫らにしたい

しおりを挟む
「先生」は鞭を弄びながらゆっくりと彼女の周りを巡った。

「どうだ、キョーコ。どんな気分か、言ってみなさい」

「・・・お願いです。オ●ンコの中のを、外してください・・・」

「なぜだ」

「が、我慢できないんです。もど、もどかし、すぎるんです」

 そう言ってモジモジと尻を揺すった。

「わかりますか?」

 再び彼は譲治に尋ねた。

「キョーコは、ヴァギナに挿入(い)れたオモチャを、ガマンしてるんですよ。ずっとそこを刺激しているのに、けっしてイクことができない、オモチャを。早くそれをとり除けて、ズコズコ、ズンズン。突きまくってもらいたいんです」

「先生」からそんな下品な言葉を聞くとは思わなかった。

「なあ、キョーコ。・・・そうだろう?」

「はい・・・。ああ・・・、そうですっ! 早く外してくださいっ! 先生のを、おもいきりブチこんでっ、おか、犯して下さいっ!・・・」

 そのモジモジと動く尻の艶めかしい様が淫靡だった。外してもらえないなら少しでも革と擦れさせて快感を得たい。そんな気分が伝わってくるような動きだった。

「先生」は畳の上の鈴を拾って乳首のピアスにかけた。

「そんなことをカンタンに許すわけがないじゃないか。それでは罰にならない。お仕置きにならない」

 そう言って鈴のついた乳首をピンッ、と指ではじいた。

「はうあっ!・・・んんっ・・・」

 鈴がコロコロと軽やかな音をさせて鳴った。彼女は目をギュッと瞑っておとがいを仰け反らせていた。

「嬉しいか、キョーコ」

「はいっ・・・。うれ、うれし、ですっ!」

 その激痛に耐えているのだろう。その痛みに耐えている間だけは股間のむず痒さ、もどかしさを忘れることができるのかも知れない、と譲治は思った。

「先生」はストッキングに挟んであったコントローラーを取り、カチカチと操作した。

「・・・んあう、んんっ、・・・ああ、・・・あはあん!・・・んんん」

 振動が増したのか、蠢きの種類が変わったのか。キョーコの悶えが増した。彼は立ち上がり、彼女に黒いアイマスクを掛けた。そして再び巡りを始めた。巡りながら、小さな鞭の先をヒタ、ヒタと白い肌に当てて行く。それが時折ピシッと鋭い音を立てた。

「ひああっ!・・・」

「静かにしなさい、キョーコ。まだ人が住んでいる部屋だってあるんだぞ。行儀の悪い女だ」

「はいっ!・・・もしけ、申し訳、ありませんっ!・・・ああ、・・・」

「先生」は再び譲治に尋ねた。

「こうしたプレイは初めてですか」

「・・・は、はあ・・・初めて、見ました・・・」

「・・・いかがですか」

 なんとも答えに窮していると、「先生」は次の句を口にした。

「キョーコをあなたの奥様だと思ってご覧になると、また違った楽しみ方が出来ますよ」

 それまで、譲治の中で聖域に属する世界に置いていた妻の姿。それを、目の前のおぞましくも淫靡な世界に二重写しされるイメージに眩暈を覚えた。


 

 譲治は日常に、愛する妻の待つ自分の棲みかに帰った。

「ちょっと、チェックをしてしまいたい書類があるから。食事も済ませてきたから、先に休んでいて」

 紗和は譲治の帰宅を待っていてくれた。美しい表情(かお)に不安げな色を浮かべていた。それがなんとも悩ましかった。

「・・・はい」

「連絡もせずに、ごめんね」

 そのまま書斎に籠った。

 妻の寂しげな風情に感じるものがあった。いっそ、妻に今日の出来事を全部ぶちまけてしまおうか。だがまだ確信が持てなかった。そんなことをして収集不可能な事態になったら・・・。

 狂おしくももどかしいほどの思いを堪え、あえて思いを断ち切り、パソコンに向かった。

 ジャケットからSDカードを取り出してスロットに差し込み、ウィンドーを開いた。一つしかないアイコンをクリックする。イヤホンをセットし、その動画を視聴した。

 日常から、先刻までの非日常へ再び跳んだ。

 オワウッ、ウグッ!・・・ムウウンンンッ、ウグオワッ!

 いきなり低い唸り声がイヤホンから飛び込んできた。

 黒いアイマスク、その上に口枷を嵌められた女。その顔が画面いっぱいにアップになっていた。黒い異物を噛まされ黒革帯で固定され開いた口の端の隙間から唸り声と共に間断なくよだれを滴らせていた。

 その画面の外で行われていたことを、譲治は知っていた。

 キョーコの身体は後ろ手のまま座椅子の背に肩を預けて伏せにされていた。肩と膝だけで身体を支えていた。その背後に「先生」が陣取り、彼女が快感に頽れそうになる度に鞭で腿や尻を叩いた。

 彼女に快感を与え続けているものは彼女自身が選んだ張り子だった。

 すでに黒いタマゴと黒革帯の下着は取り去られ、その代わりに、両手首両足首を一点にまとめる枷のすぐ下から、白い巨きな張り子を抜き差しされていた。それも、ごく、ゆっくりと。そのせいで、もう何度も絶頂し、絶頂し続け、今もまた絶頂に向かわせられていた。イキたくてもイカせてもらえない焦らし地獄から一転して、何度イッても終わりがない、イキ地獄へと。

「もう、もうお許しください! これ以上されると、オカシクなっちゃいます。狂っちゃいます。オ●ンコ壊れちゃいます。お願い、ああ、お願いです、許して、許してくださいいいいいいいっ!・・・」

 本当はそう言いたいのだが、口枷のために言葉にならない。それで低く唸るだけの人形になっていた。

「ムウウンンンッ、オエウッ、ウグッ!・・・ウグオワッ! オウウウイウアイッ!・・・」

 身体中汗びっしょりで痙攣しっぱなし。しかも、畳の上は彼女が噴き出すシオでびちゃびちゃに濡れていた。ピアスにかけられた鈴の音がコロコロと悲しく鳴り続けていた。

 数えきれないくらいの、連鎖した絶頂を迎えこれ以上無理なほどに海老反って痙攣し切った女の足枷だけが外され、淫液で濡れ滴るほどの白い張り子が抜き去られ、次いで外された口枷の後に男の男根が無理矢理なほどに押し込まれた。

「ぷふぁあっ・・・アンゴガハッ・・・ンゴアア・・・アグッ!・・・」

 いつの間にか譲治は、そんなイキ地獄に堕ちた女のアイマスクされた表情(かお)に愛する妻の幻影を重ねて見ていた。彼の股間のモノはすでにこれ以上ないくらいにいきり立っていて、埒をあけたがって奮い立っていた。

 女の頭を抱えて強引な口淫性交を強いている「先生」に促され、譲治は女の背後に回った。下着を下ろし、当然のように濡れて爛れ切った女のヴァギナに挿入した。

「オオアゴアッ!・・・ウウエゴッ・・・エゴッ!・・・」

 女の顔の部分だけを映した動画はそこで終わった。

 モニターを観ている彼の股間のモノも、痛いほどいきり立っていた。

 イヤホンをかなぐり捨て、妻のいる寝室へ向かった。

 部屋は柔らかなフットライトだけが灯っていた。

「・・・お仕事、終わったの?」

 紗和の柔らかい声がした。

 無言で服を脱ぎ、妻の横に這入り後ろから抱きついた。ソープと化粧水の甘い香りのなかに、ほのかに愛らしい彼女の体臭を感じた。パジャマ越しに豊かな胸に手を這わせ、屹立しきったモノを尻に当てた。

「・・・あなた」

「しよう。・・・今、すぐに」

「え?・・・」

 紗和の反応もお構いなしにパジャマを剥ぎ取り、無我夢中で唇を吸い、胸を揉みくちゃにし、乳首を強く吸った。

「あ・・・、あ・・・」

 愛しい妻は突然の乱暴な愛撫にもかかわらず喜悦の声を上げ始めた。パジャマの下も強引に剥ぎ取りショーツも脱がした。指で触れた。そこはもうすでに湿り気を帯びていて、譲治のいきり立った男根を待っている。そう確信した。

 組み伏せた妻の、涙にぬれた瞳が暗い灯りに光っていた。

「紗和・・・」

「・・・嬉しい、あなた。うれしいの。わたし、うれしいの!」

 きて・・・。

 柔らかな身体を抱きしめ、それを濡れそぼった妻の秘裂に当て、グッと押しいれようとした。だが、信じられないことに、それはその瞬間急速に力を失い、萎れた。

 何故だ。

 あの、見ず知らずの女には二度も剛直を挿入し、中に放ったのに。何故愛する妻には、出来ないんだ!

「グフウッ・・・、ウッ、ウッ、ウッ、・・・」

 譲治は妻の胸の中で嗚咽を漏らした。

「・・・あなた」

 柔らかな妻の白い手が、彼の髪を撫でた。


 

「あの夫婦も元はあなたと同じだったのですよ」

 あの「文化住宅」の部屋に散々絶頂させられて疲れ切ったキョーコを残し、「先生」と二人、通りに出た。すぐに見覚えのある中年の男が現れ、離れたところから譲治たちに一礼し、「文化住宅」の狭い階段を上がって行った。

「これから彼は妻を抱くでしょう。身体中を優しく愛撫し、嘗め回すでしょう。それが彼の悦びなのです」

 甲高いクラクションがヘッドライトと共に流れ去って行った。その一瞬の光芒が「先生」の風貌(かお)をどす黒く見せた。

「むしろあの夫婦の方が重症でした。一時彼は苦しみのあまり愛する妻を殺めて自分も死のうとしたほどでしたからね。わたしの道楽につき合わせてしまいましたが、その成果があったのでしょう。今ではあの二人は人も羨むような仲睦まじい夫婦の絆を取り戻すことができました。こうして時折彼の奥さんとするプレイが、あの夫婦には必要なスパイスになっているのです。あなたは運がいい。そのスパイスの添加に立ち会うことができたのですからね」

「文化住宅」の階段から薄いコートを羽織ったキョーコを抱きかかえるようにして彼女の夫が降りてくるのが見えた。キョーコは足取りもおぼつかずぐったりとはしていたが、その表情(かお)は安らかな笑みに満ちていた。再び譲治たちに一礼するとハザードランプを点けて止めてあった車に乗り込み、夜の街に消えた。

「さて、あなたは身体の機能の方は申し分ない。全く見ず知らずの女に勃起し、最後は失神までさせたのですからね」

「先生」のお膳立てがあったからであることを譲治は忘れてはいなかった。自分一人だけで悦ばせたわけではない。しかし、事実勃起はした。久方ぶりに性交もできたことは、彼の言う通りだった。

「問題は、あなたの心の中にあると思います」

 そこで彼は、申し遅れました、と名刺を差し出して来た。そうなるとサラリーマンの性で譲治もポケットから名刺入れを取り出した。

「精神科医。お医者さんだったのですか・・・」

「先生」は正真正銘の「先生」だったわけだ。

「ああ。あなたはあの独法にお勤めだったのですね。存じ上げていますよ。大学の同期がお宅に天下りしましたからね。もっとも、二年足らずで他の独法に移ったと聞いています。彼らはそうやっていろんな法人を渡り歩いて退職金を浚ってゆくのが慣例になっていますからねえ。沢井というんですが、ご存じありませんか」

「・・・申し訳ありませんが、あいにく役員は入れ替わりが激しくて・・・」

「そうでしょうねえ・・・」

 と先生は言った。

「いちど奥様を連れてクリニックへいらっしゃいませんか」

「家内を、ですか・・・」

「お見立てしたところ、奥様の協力が必要になると思われるのです。無理にとは申しません。もしおいでいただくなら、そのメールアドレスにあなたの具体的な自覚症状と奥様との経緯を書いて送ってください。診断の参考になります。では、ご連絡をお持ちしております」

 

 譲治は、震える妻の肩にそっと手を触れ、撫でた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...