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第一章 潜伏

25 不毛の大地と、重い朝食

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 明くる日。

  起床ラッパの前に目が覚めた。

 冷たいシャワーのおかげか短時間だが熟睡できた。舷窓の水密フードを開けると朝日が眩しかった。思わず、目を瞬いた。


 

 ルメイは小一時間ほども北のチナの本土を見つめていた。が、それ以上の進展はなく、彼に接触しようとする者もなく、やがてコツコツという靴音を響かせて階上のドアの中に消えた。ヤヨイもただシャワー後の肌を冷やしただけで終わってしまっていた。

 彼はあのチナの陸地を見て何を思っていただろうか。

 これから自分が為す悪事の成就祈願でもしていたのだろうか。だとしたら、存外にセンチメンタルな男だと思った。

 海軍兵学校で同期だったというフレッチャー少将。彼がただ座乗しているだけで打てば響くような小気味のいい艦になっているヴィクトリーに比べれば、このミカサの味気無さ、歯痒さはどうだろうか。

 推進器の損傷を受け、とっさに危険回避の命令を下したのはチェン少佐だった。艦尾の爆発に機関の不具合。その突然の事態に命令も待たずに駆け出して行ったのはヨードル海曹長であり、青い肌のノビレ少佐だった。艦長に比べ、中堅士官や下士官たちは皆帝国海軍の象徴たる第一艦隊の旗艦に相応しい精鋭が揃っているのに・・・。

 彼の、ルメイの頭の中にはもう、亡命の二文字しかないのだろう。

 短時間だが熟睡できたお陰ですこぶる調子がいい。

 早々に着替えて兎にも角にもブリッジへ向かった。

 カモメたちが艦の上を高々と舞い、そのうちの幾羽かがマストに翼を休めて連なっていた。

 いつものように舵輪を握る水兵とスロットルにつく水兵。それ以外は誰もいなかった。

 ブリッジから見下ろす上甲板の左舷側にはほぼ数メートル沖に水兵が立ち、彼方の陸地を監視していた。敵地に近いから警戒しているのだろう。

 測距儀で陸地との距離を監視する兵の横で、ヤヨイもまた双眼鏡を構え不愛想なチナの陸地に向けていた。

 3海里は約5・4キロになる。双眼鏡なら平たい岩の上に立つ人物さえも見える距離だが、人はおろか動物さえも全く見えなかった。ミカサの70ミリ副砲なら届くかどうかギリギリだが、改良された100ミリ主砲なら楽々射程内に捉える距離だ。

 隆起してまだ数百年のオーダーしか経ていない、元は海底だったほとんど岩だらけのゴツゴツした壁。それがどこまでも続き白い波飛沫を立てていた。緑がない。魅力的な入り江もない。これでは船も出せなかろう。

 この辺りならば水深も十分にある。

 だが問題は、この後だ。

 昨夜協議中に確認した航路。第一の関門である海峡を過ぎると、遠浅の大陸棚が続く。6海里なら問題はないが、3海里ともなれば時に水深は40メートルを切るところもある。

 必然的にそこでは自沈させられなくなるということなのだ。

 不味乾燥の不毛な大地を眺めつつ、ヤツらは一体どんな手を使って来るのだろうかと思案を巡らせた。

「おはよう、少尉。早いな」

 昨夜の後半、未明からの当直はナンパの通信長、デービス大尉だったようだ。コーヒーカップを手にした彼は少し眠そうな目をしていた。

「おはようございます、大尉」

 自分の敬礼もだいぶ板についてきたなと思う。彼はカジュアルな答礼で応えると自ら水兵たちの傍に湯気の上がるカップをおいてやっていた。

「ありがとうございます、大尉」

「交代まであと1時間だ。がんばれ」

「はい、ありがとうございます」

 意外に優しいところもあるのだなと思った。

「あの、大尉・・・」

「ん? デートの返事を聞かせてくれるのかい」

 ヤヨイは笑ってやり過ごした。

 起床ラッパが高らかに吹奏された。

 間もなくわらわらと水兵たちが上甲板に出て来て小隊毎にロードワークを始めた。食堂は乗組員全員を一度に収容できるほど広くない。朝食の順番が来るまでの時間潰しを体力維持に充てているのだろう。彼らの掛け声とカンヴァスのデッキ靴の足音が昇ってくる。

「わたしも少し走ってきていいでしょうか」

 そう言ってロードワークする水兵たちに目をやった。

「ターラントまで5日もかかるのでは、身体が鈍ってしまいます」

「いいとも。朝食前のエクササイズに丁度いい。走ってきたまえ。走りながら、僕とのデートの件も検討しておいてくれよな」

 ・・・やれやれ。冗談にしてはしつこいな。

 自室に戻り短靴を脱いで裸足になった。

 太陽を浴び始めて温まった甲板が素足に心地よかった。朝の潮風が起き抜けの肌を刺激してくれた。昨夜黒く見えたチナの陸地が遠く朝靄をまとって霞んで見えた。

 ちょうどやって来た一団の後に付くように走り出した。舷側の装甲に打ち付ける波の冷たい飛沫が時折甲板まで上がって来て熱い肌を冷やしてくれる。クィリナリスでウリル少将に任務の話を聞いてから鬱屈しがちだった気分が洗われる思いがした。そのまま艦を一周し、2周、3周と快調に飛ばしていた時だった。ヤヨイは野太い声に呼び止められた。

「ヴァインライヒ少尉!」

 振り返ればブリッジの構造物と煙突との間、石炭を搬入するハッチと幌を被せた機銃座との間に先任士官が怖い顔をして立っていた。

「あ、おはようございます、海曹長!」

「少尉、困りますね」

「え、何か・・・」

「何かじゃありません。甲板を裸足で歩いたり走ったりしてはいけません!」

 彼は手に水兵たちの履くカンヴァスの靴を持っていた。

「走るなとは言いません。ですが走るならこれをお履きになってください。サイズが合えばいいんですが」

「どうして裸足じゃダメなんですか」

 大男は大きなため息を吐くと落第生を相手に説教する教師のように、大きな身体を折り曲げて滾々と話し始めた。

「ミカサはヨットではありません。純然たる戦闘艦です。戦闘になれば被害を受けます。そこらじゅう砲弾の破片やら構造物の残骸やらが転がります。血糊も流れているかもしれません。裸足では絶対に滑ったり破片を踏んだりしてケガをします。それに今はまだいいとしても日中は太陽で甲板が焼かれます。踊りだしたくなるほど熱くなるんです。

 それに靴というものは普段から履きなれていないと足にマメができたりします。そのために任務を疎かにする水兵が続出されてはイザ戦闘になった時に困ります。

 こういうことを兵たちにいつも喧しく指導しているんです。士官の方が率先して規則を破っていては示しがつきません。・・・おわかりですね」

 ヤヨイは実の父と相対した記憶があまりない。この口煩い彼の説教はまるで、もし父親がいたらこんな感じなのだろうかと思わされるようなものだった。

「・・・ごめんなさい」

 ヤヨイの素直な言葉に大男の表情がフッと緩んだ。すぐに昨夜の優しい先任士官の顔に戻って、彼は言った。

「朝食後にお時間がありますか? よろしければご所望のエンジンルームを案内しましょう。機関長にも会えると思いますよ」

 大きな彼の背中を見送り、ほっこりした気持ちを抱いて彼のくれたデッキ靴を履いた。

 そうして再び走り出したヤヨイだったが、二三の非番の水兵たちが両足を舷側の外に垂らして座込み談笑していたのに出くわした。彼らの後ろを通り過ぎるとき、その兵たちの会話の断片が聞くとはなしに耳に入ってきて、自然に脚が止まった。

「・・・うん。どうにもおかしいな。以前なら奴らの紫の旗をたくさん見たのに」

「やはりお前もそう思うか」

「届かないと知ってるくせに弓矢まで撃って来たりしてたんだぜ。それがどうだい。人っ子一人見えやしない」

「そうだな。確かにそうだ。何かがおかしいな」

「あの・・・」

 彼らの一人が呼びかけに応えて振り向いた。ヤヨイより少し年上らしいその上等水兵は最初鼻の下を伸ばしかけたが、目が彼女の胸についた樫の葉の階級章に止まるや弾けるように立ち上がろうとし、うっかり靴を片方、海に落としてしまった。

「あっ、す、すいません!」

 鯱張って敬礼する上等水兵が気の毒になった。

「ごめんなさい。あなた方の話が気になったものだから。その、前と違うっていう話、詳しく聞かせていただけないですか」

「あ、あのっ、自分は以前第三艦隊の駆逐艦に勤務しておりましてっ。チナのやつら、パトロールのたびに嫌がらせしてきておりましてっ!」

「自分もでありますっ! 旧式の短筒を撃たれたこともあったのでありますっ!」

「そう。それが、今はどこか違うと。そういうことなのですね」

「ハイ、そうであります。あまりにもやつら、静かすぎるのでありますっ! それがどうも、奇妙なのでありますっ!」

 透き通るような青い海に落ちた靴は、瞬く間に後方へ流れ去っていった。ヤヨイは自分のせいで流してしまった靴の詫びを言い、着替えのために自室に向かった。これから士官たちと共に朝食の席に着かねばならない。


 

 任務さえなければ気楽な兵員食堂に向かうところだ。だがすでに事起きた今、そんな悠長な暇はない。出来るだけ幹部たちとの接触を増やさなければならなかった。接触を増やし、わずかでも、どんな些細なことでもいいから、兆候を掴む。今はそれが肝心。

「お早うございます」

 談話室兼士官食堂にはミカサと司令部の半数ほどがすでに席についていた。戸口に立っていた当番の兵がヤヨイに敬礼し手元のボードにチェックを入れていた。

 まだ誰も目の前の料理に手を付けている者はいなかった。ワワン中将を待っているのだろう。みなきちんと軍服を着てしゃんと背筋を伸ばして膝に両手を置き、真っすぐ前を向いていた。誰一人隣同士で雑談などしている者はいなかった。カフェテリアのような気楽な兵員食堂とは全く違う、重い、空気。

 司令部ではカトー参謀長とラカ参謀がそれぞれ焼きたてのトーストとナシゴレンを前にしてヤヨイの向かいに。幹部ではさっきブリッジで会ったデービス大尉に砲術長のハンター少佐がヤヨイの左右に。それに副長の東洋人らしい切れ長の目が斜向かいにあった。

 向かいの二つの空席は長官と艦長のだろう。

「お早うございます、少尉どの」

 戸口でチェックしていたのとは別の水兵が注文を取りに来た。

 リセやバカロレアでも注文を取りに来るような店で食事をした経験がなかった。だから最初は驚いてドギマギしたこともあったが、もう慣れた。

「お早うございます。トーストにベーコンエッグ。それとミルクがあったらいただけますか」

「サラダはいかがですか」

「いただきます」

「コーヒーか紅茶は」

「コーヒーでお願いします」

「かしこまりました」

 彼が一礼して部屋を出て行くと入れ替わりにトレーを捧げた兵が入ってきてヤヨイの隣のデービス大尉の前に皿とトマトジュースの注がれた金属のカップを置いた。

 もう何度かこの堅苦しい席に着いたが、今朝はいつにもまして誰からも一言も会話がない。かなり気まずい空気だが、みな無表情にそれに耐えているように見えた。

 ミカサには他にも10名ほどの士官がいる。前後部主砲塔に中尉の指揮官が各1名。それに左右舷の副砲にそれぞれ数名の少尉がいる。彼らも士官だから談話室としてのこの部屋にも来るし、この部屋で食事を摂るのも許されている。それなのに、砲術科の尉官たちはみな兵員食堂で食事を摂りたがった。そういうところもヴィクトリーとは違う点なのだろう。

 しかも本来なら他の3艦を率いて今ごろはもう攻撃訓練を開始しているころだ。それに本来なら司令部はあと2人ここに座っているはずなのだ。それもこれもみなミカサに起こったサボタージュと、ミカサの失態による燃料不足のせいなのだ。和気あいあいと雑談できる雰囲気ではないのは当然と言えば当然と言えた。

 誰もがカトー参謀長の強面の口髭を気にしている、ようにも見える。

「お早う、諸君!」

 ワワン中将がいつもと変わらない微笑を湛えやってきた。皆席を立とうと腰を浮かしかけるが、中将はいつものように手でそれを制した。

「私はトーストに野菜スープ。それにコーヒーを頼む。とびきり濃いやつにしてくれ」

「かしこまりました、閣下」

 水兵が立ち去ると中将は言った。

「待たせたな。始めてくれ。せっかくのスープが冷めてしまう」

「では、お先に」

 中将の言葉というよりは参謀長の言葉で、皆各々スプーンを取り、トーストに手を付け始めた。

「艦長は?」

「まだのようです」

 カトー少将が答えた。

「さもありなん、というところではないでしょうか。小官なら平気な顔をして長官に相まみえて朝食など摂れません」

 彼のその一言で、その場の空気がさらにグッと冷えた。

 ヤヨイの皿が運ばれてきた。湯気の上がるその皿に戸惑っているとほぼ向かい側の長官が親し気に、

「遠慮せず食べたまえ少尉」

 それで、ミルクのカップを取った。

 ワワン中将も先に運ばれてきた香ばしいコーヒーのカップを取り、その香りを愉しんだ。

 食事が始まり、場がある程度和んだと判断し、ヤヨイは先ほど水兵から仕入れた情報を披露することにした。それで士官たちの反応を見たかったのだ。

「あの・・・」

 カトー参謀長は明らかに眉を顰め、チェン少佐は片目を釣り上げた。両脇の大尉と少佐の反応は死角になっていてわからない。ワワン中将だけがにこやかに応じてくれた。

「何だね?」

「あの、先ほど甲板にいた水兵さんから聞いたのですが・・・」

 中将はウム、とかぶりを振った。

「前に駆逐艦でこの近辺をパトロールしたことがあって、その時と今とは雰囲気が違うと・・・。以前は威嚇や挑発ばかりしてきたのに、異様に静かすぎる、こんなのは初めてだ、というのですが・・・」

 反応を待った。

 誰も、何も言わず、皆黙々と食事を続けていた。沈黙を破ったのは例よってカトー参謀長だった。細い指でトーストを裂き、切れ端をスープに浸しては口に運んでいた。

「そんな遠目の利く水兵がいたとはな。まだオカまで4海里はあるだろう。仮に発見されたとしても、このミカサの威容に恐れをなして指でも咥えているのではないか」

「いえ、参謀長。昨夜のうちに3海里圏内に入りました」

 参謀長の隣のラカ少佐がスプーンを置き、ナプキンで口を拭いた。

「そうか・・・」

 ワワン中将の皿が運ばれてきた。彼がナプキンを取って膝にかけるのを待ってチェン少佐が口を開いた。

「実は自分もそれを感じていました。何か以前と違って反応が奇妙だと」

 彼はクロワッサンにママレードを塗りながら中将の向こう側のカトー少将に言った。

「今朝未明にデービス大尉に当直を交代する際、ちょうどブリッジに来られた艦長にもお伝えしたのです」

「ほう、彼がブリッジへ、な・・・。で、ルメイ艦長は何と?」

 少将は口髭をモグモグと動かしながら、目だけは少しうつむき加減で尋ねた。

「確かにそうだなと。警戒をさらに厳にとの指示を受け、それで先任士官と協議し警戒を強化したのです」

 朝、水兵たちが立っていたのはそういうわけだったのだ。

 ちょうどヤヨイがシャワーを浴びて涼んでいた時だ。あの後ルメイはブリッジに上がったのだろう。彼はまだミカサの艦長であり続けようとしているわけだ。

 テーブルの上には再び重い沈黙の空気が充ちた。その沈黙は長かった。

「では失礼ですが、お先に・・・」

 右手のハンター少佐が食事を終えて席を立とうとしたところだった。

「ところで少尉。君の今日の予定はどうなっているのかね」

 ふいにワワン中将が口を開き、皆驚いて一斉にヤヨイに注目した。席を立ちかけたハンター少佐も浮かしかけた腰を再び席に落ちつけた。

「いいえ、特には。大学へ定時連絡をするのと、せっかくの機会なのでヨードル海曹長に艦内を案内していただこうかと思っていたのですが・・・」

「それはいい! 結構なことではないか。大いに見学してもらいたい。そして見学が終わったらいつでもいいから私の部屋に来てくれぬか。君に少しチナのことを話して聞かせようと思うのだ」

 寡黙だと思っていた長官にしては、少々長すぎる言葉が流れてきた。

 その場の一同は皆食事の手を止め、さらに沈黙を深めた。

 ワワン中将自ら、仕掛けてきた!

 ヤヨイはそんな印象を受けた。

 そこにいる人物をもう一度確かめた。

 カトー参謀長にラカ参謀。それにチェン副長と通信長のデービス大尉。そして、席を立ちかけ、再び腰を下ろした砲術長ハンター少佐。

「はい、喜んで」

「私にもちょうど君ぐらいの孫娘がいるのだ。首都のリセで元気にやっているらしいのだが、なかなか会えなくてな。孫娘の代わりに君に老人の相手をしてもらいたいのだ。

 ・・・イヤかね」

「とんでもありません、閣下!」

 もちろん、即答した。

「身に余る光栄です。喜んでお供させていただきます!」

「そうか。それはありがたいな・・・」

 そして再三の沈黙。

 その沈黙の重みを図るように落ち着いてナプキンを使う長官。再びスプーンを口に運ぶラカ少佐。そして、

「では、お先に失礼します」

 ハンター少佐が席を立った。

 それを見送るようにナプキンを置いて、長官が席を立った。

「・・・では私も、失礼するとしようか。では少尉、後ほどな」

 長官が席を立ったのをしおに、参謀長と副長、デービス大尉もまた席を立ち、最後のラカ少佐がナプキンを使いコーヒーを一口、含んだ。

 食物の軽さに比べ、あまりにも重い朝食が、終わった。


 


 

 ヨードル曹長との約束の1000にはまだ間があった。

 ヤヨイは真っすぐワワン中将の居室に向かった。

 幕僚室の続き、艦長室と同じ将官専用のフロアにそれはあった。誰に訊かずとも、ドアの外に衛兵が立っているからそれと知れた。銃を携えた衛兵が立っているのは長官室と参謀長室のその二つだけだった。

 衛兵はヤヨイがドアに近づくと捧げ銃(ささげつつ)をして礼を取った。

「ヴァインライヒ少尉です」

 ノックに対し、入りたまえ、の声が聞こえた。

「失礼します!」

 居室の老提督は、何やらデスクに向かって書き物をしていたが、ヤヨイが入室するやクルリと椅子を回し、

「やあ、来たな」

 と言った。

 他の幕僚たちやブリッジで司令官席に座っている時の彼とは違う、より親しみの籠った眼差しで迎えてくれた。

「どれ。天気も良いし、海も凪いでいる。少しデッキでも散策するとしようか」

 そう言って先に立って部屋を出、ヤヨイを従えてスタスタと上甲板へ降りるタラップを駆け下った。
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