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もしものふたり
フライング
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※もしものふたり の世界線です。
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「ふあ~…おはよう零…今日もはやいね…」
土曜日の朝、圭吾は平日のように朝早く起こされることもなく、昼前までぐっくりと眠っていた。
昨晩も遅くまで愛し合っていたのに、零はそんなことをまるで感じさせないほどピンピンしている。
「わ、すごい欠伸。そんなにはやくもないですよ、おはようございます」
零は圭吾に顔を洗うよう促し、スリッパをパタパタと鳴らしながら朝食を並べた。
今日はトーストと、スクランブルエッグ、そして刻んだフルーツ入りのヨーグルトだ。
朝はコーヒーなどで軽めに済ませる圭吾だが、零と暮らしてからは食べる量も増えた。
と言っても零よりは少ない。
零はこの頃よく食べ、よく眠る。
不思議に思った圭吾が聞いてみると、
「だってもう、お腹にいるかもしれないでしょう。
だからたくさん寝てたくさん食べて、栄養をつけないと」
と言った。
洗面所から顔を洗って戻ってきた圭吾は、
さっそく零の用意した朝食に手をつける。
「ん~、おいしい。
いつもありがとね」
圭吾は幸せそうに食べている。
零はその目の前で、赤ちゃんについての雑誌を読んでいる。
最近の花嶺家は段々と赤ちゃんを迎えるためのグッズが増え、圭吾が一人で暮らしていた時よりも明るい雰囲気がある。
元々同棲していた時から零の好みで白が基調の家具が増えつつあったが、
最近はまた妊娠前の動けるうちにと、
なるべく段差を減らし、家具の角にはクッション性のあるカバーが付けられている。
まだ気が早いよ、とたまに来る零の母や圭吾の母にツッコまれるが、
零と圭吾は既に浮かれて手の付けようが無くなっていた。
「あ、そうだ圭吾さん」
零は雑誌を読む手を止め、思い出したように圭吾に話しかける。
「妊娠検査薬を試せるのはちょうど明後日あたりです。
今朝散歩中に買ってきたんですけど…」
少し言いづらそうにする零の言葉を、圭吾は静かに待った。
そうして漸く、
「フライングですけど、今日試してみてもいいですかね…」
と言う。
圭吾は少し迷った。
もしもこれで陽性のラインが出なくて、零が一日中落ち込んでしまうことになったら、ということが懸念されたのだ。
だが零のしたいことを否定はできない。
「いいよ、試してみようか」
圭吾がそう言うと、零はパッと顔を明るくした。
「はい!じゃあ、あの…今やってきてもいいですか?」・・・・・ーー━━━━
零がトイレから戻ってきて、検査薬を裏にして圭吾の前に差し出す。
二人は緊張しながら、反応がでるまで約一分待つ。
その間に、圭吾は前もって言っておく。
「零、まだ妊活を始めたばかりだし、今日はまだフライングだし、これで出なくても俺は諦めないからね」
零ににこ、と笑って、圭吾の手を握る。
「はい、赤ちゃんにもタイミングがあると思うので…」
零は少し安心していた。
元々自分の言い出したことだし、これで圭吾が妊活に対して消極的になってしまうのではないかと。
だが今、こうして圭吾の口から諦めないと聞けたので、少し緊張が解れた。
約一分後、また少し緊張しながら検査薬を表にする。
妊娠検査薬には小さな窓が二つあり、片方は検査終了の線、そしてもう片方は…。
「ない、ね…」
陽性の場合、その片方にも線が出る。
二人が確認した検査薬には、終了の線のみがくっきりと浮かんでいた。
零は少し肩を落とし、圭吾は検査薬から目を離さずにいた。
「元々フライングだから…。
また明後日試してみようか」
やはり零は落ち込み、その日の夕飯は出前となった。
そもそも零は男性で、妊娠確率は女性よりも低い。
そのため、こんなにはやく妊娠するのもおかしいのだ。
それをわかっていても、誰よりも楽しみにしていた零は落ち込んでしまう。
もしかすると自分は不妊症なのかもしれない、とまで思った。
「零、言ったでしょ。
俺は諦めないからね、二人で頑張ろう」
零はその言葉に、また少し救われた。
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「ふあ~…おはよう零…今日もはやいね…」
土曜日の朝、圭吾は平日のように朝早く起こされることもなく、昼前までぐっくりと眠っていた。
昨晩も遅くまで愛し合っていたのに、零はそんなことをまるで感じさせないほどピンピンしている。
「わ、すごい欠伸。そんなにはやくもないですよ、おはようございます」
零は圭吾に顔を洗うよう促し、スリッパをパタパタと鳴らしながら朝食を並べた。
今日はトーストと、スクランブルエッグ、そして刻んだフルーツ入りのヨーグルトだ。
朝はコーヒーなどで軽めに済ませる圭吾だが、零と暮らしてからは食べる量も増えた。
と言っても零よりは少ない。
零はこの頃よく食べ、よく眠る。
不思議に思った圭吾が聞いてみると、
「だってもう、お腹にいるかもしれないでしょう。
だからたくさん寝てたくさん食べて、栄養をつけないと」
と言った。
洗面所から顔を洗って戻ってきた圭吾は、
さっそく零の用意した朝食に手をつける。
「ん~、おいしい。
いつもありがとね」
圭吾は幸せそうに食べている。
零はその目の前で、赤ちゃんについての雑誌を読んでいる。
最近の花嶺家は段々と赤ちゃんを迎えるためのグッズが増え、圭吾が一人で暮らしていた時よりも明るい雰囲気がある。
元々同棲していた時から零の好みで白が基調の家具が増えつつあったが、
最近はまた妊娠前の動けるうちにと、
なるべく段差を減らし、家具の角にはクッション性のあるカバーが付けられている。
まだ気が早いよ、とたまに来る零の母や圭吾の母にツッコまれるが、
零と圭吾は既に浮かれて手の付けようが無くなっていた。
「あ、そうだ圭吾さん」
零は雑誌を読む手を止め、思い出したように圭吾に話しかける。
「妊娠検査薬を試せるのはちょうど明後日あたりです。
今朝散歩中に買ってきたんですけど…」
少し言いづらそうにする零の言葉を、圭吾は静かに待った。
そうして漸く、
「フライングですけど、今日試してみてもいいですかね…」
と言う。
圭吾は少し迷った。
もしもこれで陽性のラインが出なくて、零が一日中落ち込んでしまうことになったら、ということが懸念されたのだ。
だが零のしたいことを否定はできない。
「いいよ、試してみようか」
圭吾がそう言うと、零はパッと顔を明るくした。
「はい!じゃあ、あの…今やってきてもいいですか?」・・・・・ーー━━━━
零がトイレから戻ってきて、検査薬を裏にして圭吾の前に差し出す。
二人は緊張しながら、反応がでるまで約一分待つ。
その間に、圭吾は前もって言っておく。
「零、まだ妊活を始めたばかりだし、今日はまだフライングだし、これで出なくても俺は諦めないからね」
零ににこ、と笑って、圭吾の手を握る。
「はい、赤ちゃんにもタイミングがあると思うので…」
零は少し安心していた。
元々自分の言い出したことだし、これで圭吾が妊活に対して消極的になってしまうのではないかと。
だが今、こうして圭吾の口から諦めないと聞けたので、少し緊張が解れた。
約一分後、また少し緊張しながら検査薬を表にする。
妊娠検査薬には小さな窓が二つあり、片方は検査終了の線、そしてもう片方は…。
「ない、ね…」
陽性の場合、その片方にも線が出る。
二人が確認した検査薬には、終了の線のみがくっきりと浮かんでいた。
零は少し肩を落とし、圭吾は検査薬から目を離さずにいた。
「元々フライングだから…。
また明後日試してみようか」
やはり零は落ち込み、その日の夕飯は出前となった。
そもそも零は男性で、妊娠確率は女性よりも低い。
そのため、こんなにはやく妊娠するのもおかしいのだ。
それをわかっていても、誰よりも楽しみにしていた零は落ち込んでしまう。
もしかすると自分は不妊症なのかもしれない、とまで思った。
「零、言ったでしょ。
俺は諦めないからね、二人で頑張ろう」
零はその言葉に、また少し救われた。
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