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秋葉と宗介
ゆい、男子高校生を拾う
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「ちょっとゆい!まって!」
買い物をした帰り、ゆいが突然零の手を振りほどき、全速力で走り出す。
第二子を妊娠中の零は身体が重く、あまり速く走ることが出来ない。
重い荷物を持ちながら、走って行ってしまった息子を一生懸命追いかけると、そこには蹲った男の子がいた。
「まあまー!ないてう!」
はあはあと息を切らし、壁に手をついて息を整える。
「もー!急に走っちゃダメっていつも言ってるでしょ!」
叱りながらも、蹲って泣いている男の子に目をやった。
「えっと…君、どうしたの?」
花嶺家が住むマンションの下で、男の子は蹲って泣いている。
こんな寒い冬に、こんなところで…。
零は一先ず男の子の事情を聞くことにした。
「少しずつでいいから、話してみて?」
男の子はゆいからハンカチを受け取ると、それで涙を拭った。
「俺、お腹に赤ちゃんができちゃったんです…」
開口一番、衝撃な告白をした。
「えっ?」
零は意味がわからず、もう一度聞く。
「元彼との子です…。
それで、親に話したら家を追い出されました」
制服を着ているから未成年のはずだし、男の子だし、元彼との子って…。
零のように、男性でも子宮を持って産まれてくる人は少なくない。
しかし、そのような男性は"強制結婚"という制度によりパートナーが選ばれる。
義務教育でもその事については学ぶし、そもそも幼い頃から散々言われ続けることだ。
恋人を作ってもどうせ別れることになるし、罰金を支払ってまでその恋人と一緒にいたいと思う人は少ない。
もちろん零もその一人で、圭吾以外との経験はない。
それなのに、どうして…
一先ずここでは寒すぎるので、近くのファミレスに移動した。
「相手は幼馴染です。
小さい頃からよく家に遊びに来てて。
それで中学の時から付き合ってて、半年前に別れました」
男の子の話を要約すると、こうだ。
家が近所でよく遊びに来ていた幼馴染の彼と、中学生の頃から付き合っていた。
その頃から身体の関係は持っていて、避妊はしていた。
しかし二人はもう高校三年生で、来年には彼が進学で他県に引っ越してしまう。
それに男の子も強制結婚があるので、数ヶ月前に別れてしまったと言う。
しかし、その2ヶ月後に妊娠が発覚したのだ。
「そっか…
妊娠のこと、彼にはもう話したの?」
男の子は悲しそうな表情で答える。
「いえ…秋葉は難関校を受験するんです。
そんな時に妊娠したなんて言ったら…。
それに、もう別れてるんで」
お腹を大事そうに撫でながら、話を続けた。
「親には、俺一人で産むって言ったんです。
秋葉との子ってことは隠して。
親同士仲良いんで、そこを壊すのも嫌だったから…」
男の子は再び涙を流し、ゆいはそれをハンカチで拭いた。
「君は偉いよ。自分のことで精一杯のはずなのに、そうやって秋葉くんや親御さんのことまで考えてたんでしょ?
よく頑張ったね」
零の言葉を聞くと、男の子は声を出して泣いた。
一人で考えて、決断して、妊娠が分かってからずっと、苦しかったのだろう。
タイミングを見計らって男の子の後ろから出て来た母親も、同じくらい泣いている。
「宗介…あんた何考えてんの…」
宗介は母親の顔を見て一瞬驚いだが、安心したのかその胸に飛び込む。
「お母さん…ごめんなさい…」
零は男の子を隣の家の子だと察し、圭吾に連絡しておいたのだ。
ちょうど帰ってきた圭吾はそのお宅に行き、事情を説明してファミレスまで連れて来ていた。
「圭吾さん、ありがとうございます」
パパを見て大興奮したゆいが圭吾に飛びつき、なんとか場の空気は和んだ。
宗介とそのお母さんは涙を拭いて落ち着くと、お礼を言って帰って行った。
「それにしても、よくわかったね」
せっかくなので3人で食事をしながら、さっきの話をする。
「ああ、あの子、会うと必ず笑顔で挨拶してくれるんです。
だから自然と…」
例の秋葉といる所を見ることもあった。
秋葉の方も元気よく挨拶してくれたし、あの子が宗介を見捨てるはずはないと、零は思った。
これは後日謝罪とお礼を兼ねて宗介のお母さんが菓子折りを持ってきてくれた時に聞いた話だが、
彼らは無事元通りの関係に戻り、秋葉が大学を卒業するまでは宗介と子供の生活費は二人の両親達が貸すことになったらしい。
その年の春、宗介は元気な女の子を出産した。
夏には生活も落ち着いて、愛する彼の元へ子供と二人で引っ越すのだと、嬉しそうに話してくれた。
_________________
ただ描きたかっただけのシチュエーションなので内容は薄いですが…
今回も最後までお読みいただきありがとうございます!
次回は宗介と秋葉について掘り下げた話を更新します。
買い物をした帰り、ゆいが突然零の手を振りほどき、全速力で走り出す。
第二子を妊娠中の零は身体が重く、あまり速く走ることが出来ない。
重い荷物を持ちながら、走って行ってしまった息子を一生懸命追いかけると、そこには蹲った男の子がいた。
「まあまー!ないてう!」
はあはあと息を切らし、壁に手をついて息を整える。
「もー!急に走っちゃダメっていつも言ってるでしょ!」
叱りながらも、蹲って泣いている男の子に目をやった。
「えっと…君、どうしたの?」
花嶺家が住むマンションの下で、男の子は蹲って泣いている。
こんな寒い冬に、こんなところで…。
零は一先ず男の子の事情を聞くことにした。
「少しずつでいいから、話してみて?」
男の子はゆいからハンカチを受け取ると、それで涙を拭った。
「俺、お腹に赤ちゃんができちゃったんです…」
開口一番、衝撃な告白をした。
「えっ?」
零は意味がわからず、もう一度聞く。
「元彼との子です…。
それで、親に話したら家を追い出されました」
制服を着ているから未成年のはずだし、男の子だし、元彼との子って…。
零のように、男性でも子宮を持って産まれてくる人は少なくない。
しかし、そのような男性は"強制結婚"という制度によりパートナーが選ばれる。
義務教育でもその事については学ぶし、そもそも幼い頃から散々言われ続けることだ。
恋人を作ってもどうせ別れることになるし、罰金を支払ってまでその恋人と一緒にいたいと思う人は少ない。
もちろん零もその一人で、圭吾以外との経験はない。
それなのに、どうして…
一先ずここでは寒すぎるので、近くのファミレスに移動した。
「相手は幼馴染です。
小さい頃からよく家に遊びに来てて。
それで中学の時から付き合ってて、半年前に別れました」
男の子の話を要約すると、こうだ。
家が近所でよく遊びに来ていた幼馴染の彼と、中学生の頃から付き合っていた。
その頃から身体の関係は持っていて、避妊はしていた。
しかし二人はもう高校三年生で、来年には彼が進学で他県に引っ越してしまう。
それに男の子も強制結婚があるので、数ヶ月前に別れてしまったと言う。
しかし、その2ヶ月後に妊娠が発覚したのだ。
「そっか…
妊娠のこと、彼にはもう話したの?」
男の子は悲しそうな表情で答える。
「いえ…秋葉は難関校を受験するんです。
そんな時に妊娠したなんて言ったら…。
それに、もう別れてるんで」
お腹を大事そうに撫でながら、話を続けた。
「親には、俺一人で産むって言ったんです。
秋葉との子ってことは隠して。
親同士仲良いんで、そこを壊すのも嫌だったから…」
男の子は再び涙を流し、ゆいはそれをハンカチで拭いた。
「君は偉いよ。自分のことで精一杯のはずなのに、そうやって秋葉くんや親御さんのことまで考えてたんでしょ?
よく頑張ったね」
零の言葉を聞くと、男の子は声を出して泣いた。
一人で考えて、決断して、妊娠が分かってからずっと、苦しかったのだろう。
タイミングを見計らって男の子の後ろから出て来た母親も、同じくらい泣いている。
「宗介…あんた何考えてんの…」
宗介は母親の顔を見て一瞬驚いだが、安心したのかその胸に飛び込む。
「お母さん…ごめんなさい…」
零は男の子を隣の家の子だと察し、圭吾に連絡しておいたのだ。
ちょうど帰ってきた圭吾はそのお宅に行き、事情を説明してファミレスまで連れて来ていた。
「圭吾さん、ありがとうございます」
パパを見て大興奮したゆいが圭吾に飛びつき、なんとか場の空気は和んだ。
宗介とそのお母さんは涙を拭いて落ち着くと、お礼を言って帰って行った。
「それにしても、よくわかったね」
せっかくなので3人で食事をしながら、さっきの話をする。
「ああ、あの子、会うと必ず笑顔で挨拶してくれるんです。
だから自然と…」
例の秋葉といる所を見ることもあった。
秋葉の方も元気よく挨拶してくれたし、あの子が宗介を見捨てるはずはないと、零は思った。
これは後日謝罪とお礼を兼ねて宗介のお母さんが菓子折りを持ってきてくれた時に聞いた話だが、
彼らは無事元通りの関係に戻り、秋葉が大学を卒業するまでは宗介と子供の生活費は二人の両親達が貸すことになったらしい。
その年の春、宗介は元気な女の子を出産した。
夏には生活も落ち着いて、愛する彼の元へ子供と二人で引っ越すのだと、嬉しそうに話してくれた。
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ただ描きたかっただけのシチュエーションなので内容は薄いですが…
今回も最後までお読みいただきありがとうございます!
次回は宗介と秋葉について掘り下げた話を更新します。
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