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秋葉と宗介
宗介と秋葉の話
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宗介は手に持つ検査薬を見て、一人トイレの中で絶望した。
どうしよう、という言葉だけが頭の中を巡り、気がつくと暗い部屋のベットで泣いていた。
お腹の子は絶対に秋葉の子だ。
こんなことがあっていいわけがない。
秋葉は受験を控えているし、宗介だって就職の為に内定を貰わないといけない。
子供なんて、育てられるはずがないのだ。
それでも確かにそのお腹には尊い命が宿っている。
とりあえず、栄養のあるものを食べないと。
宗介は混乱しながらも、母親から夕飯に呼ばれ席に着く。
顔色が悪いと心配され、いつ気づかれるかと不安になる。
それからというもの、空いた時間があればスマホを開き、ネットでたくさん調べた。
未成年の母親を支援してくれる制度や、強制結婚を破棄する手続き、その他にもたくさんのことを調べ、メモに書いた。
この子は絶対に産む。
それで、身体を売ってでも立派に育てなくちゃ。
その事だけで頭をいっぱいにし、バイトのシフトも増やした。
貯金は少しだけど、なんとか出産費用は作れそう。
それで、親に頭下げてしばらくはこの家で育てて、それから…。
宗介は毎晩声を殺して泣いた。
不安で不安で堪らない。
一人で産むなんて、そんな無謀なことができるのだろうか。
親に言うのは中絶可能な週数を過ぎてから。
絶対に産んで、この子をこの手で抱きたい。
それだけの思いで必死にバイトをした。
親にはやっぱり進学する、と嘘をついて、毎日図書館で勉強していると嘘をついて、悪阻に耐えながらも働いた。
学校は遅刻して、妊婦健診にも行った。
赤ちゃんが健康だと知る度に、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
だんだん人の形をしてきて、胎動も感じられるようになった。
そして、やっとの思いで中絶ができなくなる23週を迎えた。
初産なのでお腹はそこまで目立たない。
それに、ちょうど冬になったので厚着をしていればそうそうバレることはないだろう。
妊婦健診を終えて帰宅し、帰りの早い宗介を不思議に思った母親と対面した。
真剣な面持ちで向かい合い、母子手帳やエコー写真をテーブルに並べた。
「お腹に赤ちゃんができました。
俺一人で産むつもり。
でも、母さんたちには迷惑かけないから、安心して」
何度も頭で考えた言葉を、なんとか噛まず、途切れずに言えた。
怖くて、震える手をお腹にあてる。
母親は予想通りの反応だった。
ふざけるんじゃないと、怒鳴られた。
幸い手は出されなかったけれど、頭を冷やしてこいと外に出された。
宗介は今まで我慢していたものが溢れ出し、マンションの前で蹲って歩けなくなる。
それから、ゆいと零に連れられファミレスに行き、全ての事情を話した。
圭吾によって連れてこられた母親は、宗介が今まで見た事もない顔をしていて、驚きつつも安心した。
その表情には、間違いなく宗介への愛情が滲み出ていたからだ。
「母さんが、気づかないとでも思う?
あんたにも考えがあるんだろうからいつ話してくれるのか待ってたけどね。
そんな馬鹿みたいなことを言わせるためにこの数ヶ月心を鬼にして待ってたんじゃないよ」
母親は宗介のお腹を気遣って毛布をかけた。
おかしいところはないか、お腹の張りはないかと細かくチェックして、それから安心したような表情を見せた。
母親は、宗介の様子がおかしいことに気がついていた。
もちろん秋葉と付き合っていたことも、妊娠するような行為をしていたことも、全て分かっていた。
ただ、これから母親になる宗介を甘やかしてはいけない。
中絶させる気なんてなかったし、宗介の決断をちゃんと聞いて応援しようと決意していた。
でも、途中で手を差し伸べて甘やかすのは、宗介のためにはならない。
しっかりと考えて、宗介なりに子供を幸せにする方法を考えて、それで頼ってきてくれたら、手を貸すつもりでいた。
それなのに、やっと話してくれたかと思えばこれだ。
子供の父親は隠すし、親にも迷惑をかけないと断言した。
誰にも頼らず自分だけで責任を負って子供を産むなんて、考えが甘すぎる。
そんなことができるはずがない。
身体も心も壊れてしまうだろう。
「いい?誰にも頼らないで子供を産む人なんて滅多にいないわ。
ちゃんと大人になって結婚してから子供を産む人だって、色んな人に頼って母親になるの。
それをあんた、結婚もしてない未成年が、一人で稼いで育てるなんて無謀よ」
宗介は母親に叱られ、心から反省をした。
最悪身体で稼ごうなんて考えていた自分が馬鹿馬鹿しい。
赤ちゃんができたのは、宗介だけの責任ではない。
いくら大学受験があるからって、秋葉にも責任を取る義務がある。
それから、宗介と宗介の両親、秋葉と秋葉の両親を交えて話し合いをした。
子供を産んでしばらくは、実家で育てること。
秋葉はその間も空いた時間をバイトに費やし、宗介と子供のために生活費を稼ぐこと。
足りない分は二人の両親が貸すという形で支援すること。
秋葉と宗介は二人の両親に深く頭を下げ、お礼を言った。
それからあっという間に春が来て、秋葉は第一志望だった大学に入学し、実家を出た。
夏には二人の子、美桜が保育園に通える月齢を迎え、それと同時に家族3人一緒に住めることになった。
宗介はパートを始め、二人の両親から借りる生活費も前より少なくなった。
週に一度の休みは家族3人水入らずで過ごす。
「ほら美桜~
ぱぱがお馬さんしてくれるって!」
生活は大変だけど、この上ないほど幸せ。
秋葉は宗介と美桜のために必死で稼ぎ、大学に通う。
宗介も夜勤疲れの秋葉のために毎日栄養のあるものを作り、美桜に母乳を与える。
そうやって、これからも家族3人一緒に成長していくのだ。
_________________
一話に纏めようと説明口調なお話になってしまいました。
3人の日常的なものも書きたいですね。
どうしよう、という言葉だけが頭の中を巡り、気がつくと暗い部屋のベットで泣いていた。
お腹の子は絶対に秋葉の子だ。
こんなことがあっていいわけがない。
秋葉は受験を控えているし、宗介だって就職の為に内定を貰わないといけない。
子供なんて、育てられるはずがないのだ。
それでも確かにそのお腹には尊い命が宿っている。
とりあえず、栄養のあるものを食べないと。
宗介は混乱しながらも、母親から夕飯に呼ばれ席に着く。
顔色が悪いと心配され、いつ気づかれるかと不安になる。
それからというもの、空いた時間があればスマホを開き、ネットでたくさん調べた。
未成年の母親を支援してくれる制度や、強制結婚を破棄する手続き、その他にもたくさんのことを調べ、メモに書いた。
この子は絶対に産む。
それで、身体を売ってでも立派に育てなくちゃ。
その事だけで頭をいっぱいにし、バイトのシフトも増やした。
貯金は少しだけど、なんとか出産費用は作れそう。
それで、親に頭下げてしばらくはこの家で育てて、それから…。
宗介は毎晩声を殺して泣いた。
不安で不安で堪らない。
一人で産むなんて、そんな無謀なことができるのだろうか。
親に言うのは中絶可能な週数を過ぎてから。
絶対に産んで、この子をこの手で抱きたい。
それだけの思いで必死にバイトをした。
親にはやっぱり進学する、と嘘をついて、毎日図書館で勉強していると嘘をついて、悪阻に耐えながらも働いた。
学校は遅刻して、妊婦健診にも行った。
赤ちゃんが健康だと知る度に、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
だんだん人の形をしてきて、胎動も感じられるようになった。
そして、やっとの思いで中絶ができなくなる23週を迎えた。
初産なのでお腹はそこまで目立たない。
それに、ちょうど冬になったので厚着をしていればそうそうバレることはないだろう。
妊婦健診を終えて帰宅し、帰りの早い宗介を不思議に思った母親と対面した。
真剣な面持ちで向かい合い、母子手帳やエコー写真をテーブルに並べた。
「お腹に赤ちゃんができました。
俺一人で産むつもり。
でも、母さんたちには迷惑かけないから、安心して」
何度も頭で考えた言葉を、なんとか噛まず、途切れずに言えた。
怖くて、震える手をお腹にあてる。
母親は予想通りの反応だった。
ふざけるんじゃないと、怒鳴られた。
幸い手は出されなかったけれど、頭を冷やしてこいと外に出された。
宗介は今まで我慢していたものが溢れ出し、マンションの前で蹲って歩けなくなる。
それから、ゆいと零に連れられファミレスに行き、全ての事情を話した。
圭吾によって連れてこられた母親は、宗介が今まで見た事もない顔をしていて、驚きつつも安心した。
その表情には、間違いなく宗介への愛情が滲み出ていたからだ。
「母さんが、気づかないとでも思う?
あんたにも考えがあるんだろうからいつ話してくれるのか待ってたけどね。
そんな馬鹿みたいなことを言わせるためにこの数ヶ月心を鬼にして待ってたんじゃないよ」
母親は宗介のお腹を気遣って毛布をかけた。
おかしいところはないか、お腹の張りはないかと細かくチェックして、それから安心したような表情を見せた。
母親は、宗介の様子がおかしいことに気がついていた。
もちろん秋葉と付き合っていたことも、妊娠するような行為をしていたことも、全て分かっていた。
ただ、これから母親になる宗介を甘やかしてはいけない。
中絶させる気なんてなかったし、宗介の決断をちゃんと聞いて応援しようと決意していた。
でも、途中で手を差し伸べて甘やかすのは、宗介のためにはならない。
しっかりと考えて、宗介なりに子供を幸せにする方法を考えて、それで頼ってきてくれたら、手を貸すつもりでいた。
それなのに、やっと話してくれたかと思えばこれだ。
子供の父親は隠すし、親にも迷惑をかけないと断言した。
誰にも頼らず自分だけで責任を負って子供を産むなんて、考えが甘すぎる。
そんなことができるはずがない。
身体も心も壊れてしまうだろう。
「いい?誰にも頼らないで子供を産む人なんて滅多にいないわ。
ちゃんと大人になって結婚してから子供を産む人だって、色んな人に頼って母親になるの。
それをあんた、結婚もしてない未成年が、一人で稼いで育てるなんて無謀よ」
宗介は母親に叱られ、心から反省をした。
最悪身体で稼ごうなんて考えていた自分が馬鹿馬鹿しい。
赤ちゃんができたのは、宗介だけの責任ではない。
いくら大学受験があるからって、秋葉にも責任を取る義務がある。
それから、宗介と宗介の両親、秋葉と秋葉の両親を交えて話し合いをした。
子供を産んでしばらくは、実家で育てること。
秋葉はその間も空いた時間をバイトに費やし、宗介と子供のために生活費を稼ぐこと。
足りない分は二人の両親が貸すという形で支援すること。
秋葉と宗介は二人の両親に深く頭を下げ、お礼を言った。
それからあっという間に春が来て、秋葉は第一志望だった大学に入学し、実家を出た。
夏には二人の子、美桜が保育園に通える月齢を迎え、それと同時に家族3人一緒に住めることになった。
宗介はパートを始め、二人の両親から借りる生活費も前より少なくなった。
週に一度の休みは家族3人水入らずで過ごす。
「ほら美桜~
ぱぱがお馬さんしてくれるって!」
生活は大変だけど、この上ないほど幸せ。
秋葉は宗介と美桜のために必死で稼ぎ、大学に通う。
宗介も夜勤疲れの秋葉のために毎日栄養のあるものを作り、美桜に母乳を与える。
そうやって、これからも家族3人一緒に成長していくのだ。
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一話に纏めようと説明口調なお話になってしまいました。
3人の日常的なものも書きたいですね。
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