1 / 1
作戦開始
しおりを挟む「お嬢様!」
コン、とノックの音が聞こえ、どうぞ、と返事をした一瞬後に礼節もあったもんじゃない勢いで扉が開かれいつもの綺麗なブラウンの髪が逆だっているかのようにも見える形相で部屋に入ってきた私の専属侍女を見た。
恐らくあの噂を聞いたのであろう彼女が、私の侍女になった時のことを思い出すと、むしろノックを忘れなかったことを褒めてあげたい気分だった。
彼女の叫び声と、それに驚いたのか私の足元に擦り寄ってきたペットのふわふわのおかげで自分の中の苛立ちも大分落ち着いて冷静さを取り戻した頭で、机の上の資料をもう一度眺めて、足元のペットを撫でた。
「マリー。」
「はい!」
「作戦実行よ。」
「仰せのままに!」
まるで騎士のような返事をして部屋から出ようとする時しっかりお辞儀を忘れなかったことも褒めてあげたいポイントに加算されたので、今度来た時にはしっかり褒めてあげようと思う。
「さて。」
先程足元に擦り寄ってきていたペットが擦り寄るレベルじゃなく私の足元を小さな身体で右往左往してふわふわとした毛を惜しみなく私のドレスに付けようとしているのが可愛いが、このまま犬毛まみれにされると困る。何しろこの子の毛は綺麗な銀色のため、目視しづらい。後々部屋を掃除する使用人達のことを考えて、落ち着かないわんこを抱き上げて膝に乗せた。
「どうしたのジル、今日は落ち着きがないわね。」
ふわふわの毛を撫でながらその顔を覗き込むと、私を慰めるようにペロリと頬を舐められた。
「クゥン…」
「大丈夫よ、賢い子。」
本当にこの子は驚く程賢い。私の気持ちを1番分かってくれているような気すらする。
きっとマリーが聞いた噂は私が聞いたものと同じだろう。
その噂は要約すると、私の婚約者である王宮騎士団副隊長様であり、次期マロエン伯爵であるシェルビンが我が家の経営する店舗に聖女を連れて来て、どう見てもペアであるデザインの服を仕立てるよう依頼した上に、聖女は国を守る存在だし、自分は店のオーナーの娘の婚約者だから代金は支払わないと言い残し店を後にしたのだが、どうしたもんか的な手紙が両親に届いたとの事だ。
膝の上で丸まった暖かい存在に思った以上に癒された為、眠りそうになったが、作戦実行を言い渡した状態で部屋で寝こけるなんて醜態をマリーに見せたくは無いので、ジルを足元に下ろして目の前の婚約者の行動を書き上げた資料を持って部屋を出た。
いざ、両親の元へ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる