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義兄4
しおりを挟む呆気に取られた様子の周りを他所に、ユーリスに手を伸ばした。
「いーい!んにいーい!いあああああああ!」
「!」
俯いていたユーリスが顔を上げてこちらを見る。パパも近寄ってきて、どれかしてみろ、と言って私をその胸にかかようとしたが、そちらはもっと嫌だとばかりにママにすがりつき泣いて、イヤイヤと腕を叩いてもう一度ユーリスに手を伸ばした。
「にーにいいいいああああああ!」
「ハルティナ…?」
ユーリスが私の名前を呼んでくれたので泣き止んでパッと笑顔を作ってみせた。
ユーリスに手を伸ばして笑う私を見たママは、ハッとして膝をおってユーリスに私を手渡そうと、手招きした。戸惑うユーリスが歩き出す前に、ママの腕からするりと抜け出し、必死に足と腕に力を入れてよたよたとユーリスの方へはいはい…と言うべきか、はいずろうとした。まだうまく力が入らない腕と足を必死に動かして向かう方向には確実にユーリスがいる。慌てたようにパパが私を抱きあげようとしたが、やー!とその手を叩いて一生懸命兄に向かう私を、誰かが泣いていたように思う。ふんぬふんぬと頑張ってはっていたら、不意に体に影がかかった。どすんどすんと子供らしからぬ音を立ててこちらに寄ってきてくれたのは兄ユーリスであった。不安げにこちらを見下ろしていた彼を見上げて笑いながら抱っこしてと腕を伸ばす。
「にーに!」
「ハルティナ…!」
屈んで私を抱きあげようと手を伸ばした腕に逆らわず抱っこされ、ぎゅっと服を握りしめ身体を預けた。
「にーに!にーに!」
思ったよりも安定したその抱き方に、周りも驚いているようだったが、私も少し驚いているが変わらず笑っておくことにする。
「そうか、ハルティナは僕を信じてくれているのか。」
信じているもなにも、当の本人で連れ去ろうとしたのはどっちかなんて分かっているのだから当たり前なんだけど、まあそういうことにしておこう。にこにこと機嫌良さそうに自分の腕の中にいる私を見て、決心したようにパパを見あげた。
「グレン公爵、確かに入ってはいけないと言われていたハルティナの自室に入り、ハルティナをこの目で見るまで、憎らしいと思っていたことは事実です。しかし、そんな醜い心を持ち、そしてこの醜い容姿を初めて見たにも関わらず、ハルティナは僕をにーにーと呼んで笑顔を向けてくれました。」
「ふむ…」
思う事があるのか、グレン公爵ことパパもユーリスの言葉に少し表情を和らげた。
「伸ばした手を迷いなく握ってくれました。その小さな手を見て、自分はなんと愚かな事を考えていたのか、と思いました。自分はこの子を守るべき立場なのにと。それと同時にこの子がいたら自分がもっと必要ない人間になる、とまだ思っていたことも事実です。でもハルティナを抱き上げたいと思い、遠くから散歩中のルーク夫人とハルティナを見て部屋の人形で抱き方も練習しておりました。」
ユーリス、そんな事を思っていたのか、と胸を打たれた。つらつらとそれを話すのは自分を信じて欲しいと切実に伝えようとしているからで、パパもママもそれをわかって黙って彼の話を聞いているのであろう。
「抱き上げ方に練習など必要ないわ!普通は皆知っているものよ!」
「お前は黙っていろ!」
メイドさんのあげた声をぴしゃり、とはねのけるパパの心証は今確実にユーリスを信じる方に傾いたであろう。
そうだよね、パパは知らなかったもんね、と心でうなづいて、ユーリスを見上げた。
「このユーリス、誓ってハルティナを連れ出してなどいません。連れ出したのはこのメイドの方です。僕はハルティナの泣き声を聞きつけてここに来ました。証人は、ハルティナです。」
最初の悔しげな表情はもう見えず、キリッとした顔をしてそう伝えて、私を見て微笑んだユーリスを見上げてまじまじと見てうなづいた。
「な、ハルティナ?」
「あー!」
「ハルティナ様!」
「やーー!」
「「!!!」」
その様子を見たパパとママはユーリスを私の部屋出入り自由にしてくれた。
しかし、まじまじと見てわかったけど、ユーリス普通にかっこいいだろ…なんで醜い判定されてるんだ…?
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