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パラディン
しおりを挟む「あ、そうそう、せっかくの機会だ。サキュバスを倒した君達の実力を私にみせてくれたまえ。ゴリアテっつ!」
リッチモンドの後方にある扉が勢いよく開くと、全身を甲冑で身を包んだ兵士が現れた。
「こやつは、ゴリアテ。かつては我が騎士団の団長だった男だ。つまりナイトの中のナイト、パラディンだよ。でも、ラミアが物足りない、もっと強くすると言って聞かなくてね。だから、ちょっと魔物とかけ合わせてみたんだよ。最初は嫌がったけどね。妻子を実験材料にするかも、と言ったら一つ返事だったよ。ちなみにゴリアテの娘はこやつが食べたし妻は君達が倒したサキュバスだったりする。さぁ、君達の力を見せてくれたまえ!!」
なんともリッチモンドは鬼畜外道な所業をする奴だな。
「なぁ、ロリミカ。ゴリアテ片付けたらリッチモンド斬っていいか?」
「いいよ! って言いたいところだけど、リッチモンドは我慢して。リッチモンドは操られてるだけって執事の話もあるし、何よりパラメキアの情勢を知ってると思うから、姉さん達の事もあるから……」
「ウガァ、グゴガァ」
この世界に来てから、初めて斬りたいと思う相手だったけど、仕方なしだな。操られてるのなら罪はないかもだから。
「で、この唸ってる元パラディンことゴリアテはどうするのよ?」
今にも襲ってきそうなゴリアテと対峙しているので、俺は早口で聞いていた。
「残念だけど、もはや人じゃないから倒すしかない」
なんとも、リッチモンドは斬るのは自重してゴリアテは……。
理不尽この上ないがやむなしだ。
「無文が相手してる間にリッチモンドは眠らせるから……ネルネルネーネ」
ロリミカは睡眠の詠唱魔法を唱えだした。
俺の前に対峙してるゴリアテは体長2メートル近くある巨漢だった。奴は背中に背負っていたバトルアックスを右手に持つと構えて戦闘体制が整えた。
「ウガァガァ、俺様を倒すだって……出来るものならやってみな!」
どうやら、化物になっても言葉は通じるようだ。
ゴリアテはバトルアックスを軽々と頭の上で回すと遠心力をかけて振り下ろしてきた。
「バスーン」
スキルのおかげで、瞬間的に身をかわしたが地面に叩きこまれ埃が舞い散る様子から喰らったらひとたまりもない。しかも、今までの相手と違い、よけてからの抜刀スキルが発動しない。やはり、パラディンだけあって、隙がないのか、とにかく間合いに易易と入らせてくれないようだ。
「ほれ、ほれ、ほれ、チェストっ!!」
再びゴリアテはアックスを振り下ろしてきた。今度は縦方向ではなく横むきだ。
「ブーン」
嫌な風を切る残音が耳に入る。
「ウヒィヒィヒィ。ほらほら、ほらっ、どうした? 倒すのじゃなかったのか。チェスト、チェスト!!」
アックスを縦横無尽に振り下ろしてくるゴリアテ。
スキル効果で避けてはいるが、そのうち当たるのではないかと不安に苛まれる。
「ロリミカっ。こいつ強いよ! 間合いに入れない」
埒が明かない俺はロリミカに泣き事を言う始末だ。
「ごめん、無文。あたし、今忙しいから……」
ロリミカを一瞬だけ見ると、詠唱魔法を引き続き唱えている。
リッチモンドの頭上ではハンモックがゆらゆらと揺らいでいてロリミカは「ネンネンコロリヨ、おコロリよ」と赤子を寝かせる母親のように魔法をかけていた。
「無文、スキルの効果を信じていいよ。そう簡単に当たらないから。それに、そろそろスキルに対して身体が慣れているはず、だから、オートに頼らず自分自身の感覚で行動してね。自分を信じて戦うのよ! それと……」
と、まぁ。
ロリミカからはこういうアドバイスが頭の中で聞こえてきた。
「それと……って何だよ?」
「うん、今は時間がないから詳しい説明は割愛するけど、無文に付けたスキルは適当に選んだわけじゃないからね。あっちの世界でスマホで色々調べた結果だから……だから適正あるから大丈夫よ!! あとはゴリアテの動きをイメージすると間合いにきっと入れるはず。知らんけどね」
この状況でのまさかのご発言!
いったい何を調べたのだよ、ロリミカさん。
褒められた自己分析じゃないが、俺の素性は廃寺寸前の住職で、それなりに欲があるスケベな男であってしてそれ以上でもそれ以下でもないのだけどな。
それに最後の言葉。スマホで学んだのか無責任この上ないやん。
「チェス、チェス、チェスト!!」
しかし、こうしてる間にもゴリアテの奴は容赦なくアックスを振り下ろしてくる。
ロリミカの言う事を信じて、戦わないと結果は【死】あるのみ。
だから 俺はさっきから必死に奴の攻撃を避けてるわけであってして……。
いや、ちょっと待てよ!
なんだかんだ、ゴリアテの攻撃を俺は避けている。
何度かかわしている内に目が慣れてきていて動きも読めてきていた。
しかも、ゴリアテの動きはアクションゲームの攻略のようにパターン化してる気がした。
だとしたら、両手持ちでの強烈な縦攻撃の次は片手に持ち替えての横攻撃のはずだ。
よし、試して見る価値はある。
俺はゴリアテに向かって駆け出していた。
両手持ちからの縦攻撃を仕掛けてきたゴリアテ。
空振りしたアックスを戻す時に隙が出来た。
俺はゴリアテが次のアックスを振りかざす前に間合いに入り、すかざす足首に蹴りを入れていた。
重い甲冑をつけてるだけに上下のバランスが悪いゴリアテは前のめりに躓く、更に屈んできたところの腹部に膝を入れてやった。
後方に仰け反るゴリアテは腕は万歳に近い。
「もらったぁ! スキありっ、ゴリアテ!!」
俺はここぞとばかりの居合い抜刀。
「シャキーン」
「ウガァ」
刃が肘下を捉えると、ゴリアテの両腕はアックス事鈍い回転をしながら胴体から離れていった。
斬られた腕から猛烈な血しぶきをあげるゴリアテ。
もう、奴には攻撃手段は残っていない。
はずだったが……。
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