【完結】お暇ならショートでも。

カトラス

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戦国賭博 (SF)

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 銀河系の彼方にある遊星Xから、小型の円盤型宇宙船が発進された。

 宇宙船の乗組員は三人で、彼らは、ある特命をうけて遊星Xを出発したのである。

 その特命とは…… 実は彼らの遊星では、高度に文明が発達しており、全てのことがオートメーション化されていた。

 すなわち、その遊星の住人達は働くことをせずに暮らしていける社会になっていた。

 全くもって夢のような社会なのであるが、一つ住人達には不満な事があった。
 それは、退屈なのである。住人達は暇で暇で仕方がないのである。

 そこで、遊星を治めている総統は何か住人達を夢中にさせる娯楽は無いものかと思案した。何年も思案した結果、ある画期的アイデアを総統は思いついたのだ。


 それは、ギャンブルである。

 ギャンブルといっても、そんじょそこらのギャンブルではない。彼らの先祖が創り出した惑星の生物達を戦わせて、どちらが勝つか賭けるのである。

 元々、彼らの先祖が作った生物の人間と呼ばれるものは、彼らの文明の科学力によって好戦的な生物に調整されている。戦う事が大好きなのである。

 あとは、その人間という生物にきっかけさえあたえてやれば、殺しあってくれるのであった。 

 
 この総統が考え出した国営ギャンブルに、遊星の住人達は総統の思惑通り夢中になってくれた。

 住人達はギルという大量の通貨をかけて暇つぶしをする。

 そして、遊星末に行われる対戦カード選びと、人間と呼ばれる生物を戦わせるきっかけ作りの為に、宇宙船は太陽系第三番惑星地球に向かって次元高速ワープを繰り返して向かっているのであった。

 三回目の次元高速ワープが終わったときに、宇宙船のコックピットモニターには青々とした惑星が写しだされていた。

「艦長、地球軌道上に到着いたしました」

「うむ、ご苦労。では、探査ミクロマシーンを地球内に射出しろ!」

「了解です、艦長」

 宇宙船のハッチから数万個の探査ミクロマシーンが地球に向かって放出された。ミクロマシーンは地球内のあらゆる地域を飛びまわって、その地域に存在している知的生命体の欲望を感知する。つぶさに欲望を数値化して宇宙船の解析機に通信してくるのであった。解析機はすぐにデーターを分析して、その地域における戦争や紛争を察知するのである。

 艦長は解析機を操作している乗組員に声をかけた。

「どうだ、現在、戦争を起こしそうな地域はあるか?」

「はい、小さい島国なのですが、大量の怒りと憎悪がうずまいている地域があります。恐らく、戦争がまもなく起こるか、もうすでに始まっているかと思われます」

「よし、その地域の映像が欲しいなぁ。ただちにイメージアナライズを放出して、さらに詳しく調査しよう」

「了解です」

 ほどなくして、イメージアナライズから鮮明な映像が宇宙船内の大型モニターに転送されてきた。

 転送されてきた映像には、甲冑に身を包んだ兵士が二列に並んで従軍している姿が写しだされている。兵団は先頭から後方まで数キロにも及んでいて映像では全体像がつかみきれないほどの数である。

「これは、凄いな!」

 艦長は感嘆の声をあげた。

「あの中央部分で偉そうに担がれているのは何者なのだ?」

 艦長の見ている映像には兵団の中央部分の位置に御輿に担がれている醜い顔をした小男がふんぞり返っている姿が写っている。 

「アナライズによりますと、駿河国の今川義元という名のものであります。奴は京の都にいる帝にお目通りする為進軍している模様であり、途中にある敵勢力を撃破していく目論見のようであります」

「とゆうことは――戦争が始まるのであるな」

「はい、義元の進軍途中には尾張国があって、そこの織田信長という名の男と戦うものかと思われます」

「で、義元と信長の戦力はどれくらいなのだ?」

「はい、義元の兵士は四万で信長が三千でございます」

「さ……三千だと? 十倍以上の戦力差ではないかぁ! 信長というものは狂っているのか?」

「……そこまでは、流石のアナライズでも計りしれません」

「うむ。とりあえず、本星の総統に如何するか報告をする。通信回線で総督につなげろ」

  

 通信回線に総統の姿が写しだされた。艦長は事の次第を総統に説明した。

「ご苦労であったぞ、艦長。私としては、いささか戦力差があるものの、賭けの対象としては、面白いカードだと思っておる。恐らく我が国民は義元に確実にかけてくるだろう。そして、間違いなく義元が勝つと思う。

しかしだなぁ、信長が勝ったら大盤くるわせで面白いと思わないかぁ?」

「はい、確かに信長が勝ったら面白いと思いますが、アナライズによりますと信長が勝つ確立は1パーセントもありませぬ。オッズにいたしましても、信長勝利が百倍以上になっております」

「だからこそじゃ、信長が勝つと面白いのじゃ! いいかぁ、艦長。頭を使え! そして信長を勝たせるのじゃ。いかなることをしてでもな」

「それは……違法行為になるのではなりませぬか?」

「私が認めておるのだから構わぬ。信長が勝った方が、ますます国民がギャンブルの意外性に気付き、狂乱するというものだ。このところ、本命ばかりが勝ってしまって、いささか国民が興ざめしておるところでもあるからなぁ」

「了解いたしました総統閣下、いかなることをしてでも、信長を勝たせてみせます」

「任したぞ艦長――それと勝負確定後の証拠隠滅は抜かり無きようになぁ、他言もしてはならぬぞ」

「了解であります総統閣下。それでは準備にとりかかりますので、これにて通信を終わらせていただきます」



 総統との通信を終えた艦長は乗組員に命じて、宇宙船を地球内に侵入するようにした。

 大気の壁を破って宇宙船は尾張の国の上空に待機した。宇宙船の真下には信長の居城が見えている。

 ちょうどその時、信長が単騎、馬に乗り居城から飛び出して来た。

「よし、チャンスだぞ! これより信長を捕獲する。奴のあとを追尾して捕獲するのだ」

「了解です、艦長」

 操縦士は宇宙船を低空に移動させると、信長の真上に位置取り、キャプチャービームを信長めがけて発射した。信長はレインボーの光に包まれて、馬ごと宙を浮いて宇宙船の格納庫に吸い込まれていった。

 突然の出来事に驚く信長。信長の視界に見たこともないまばゆい光が壁中に広がっていた。信長が興味をもって船内の光に包まれた壁を見ていると、突然壁の一部が開いて、中から、信長が見たこともない生物が現れた。その生物はおよそ、人の形はしているものの、頭が以上に大きくて、髪の毛が無くツルツルであってして、目が大きく、鼻が無かった。また大きい頭部に比べて体が異様に細く手足だけが長い。信長は、その生物を見た瞬間悪寒が走ったのであった。

「この、もののけめぇ!」

 信長は腰につけている刀を抜くと、異様な生物に向かって斬りかかっていった。刀の刃先が生物の体に触れようとした瞬間、生物の体にブルーの光が包みこみ、信長の刀の刃先は消滅した。そして、信長の頭の中で声がした。

「無駄なことはよせ、私は、そなた達の神であるぞ! 神に剣を向けるのか? 信長よ!」

「この世に、神などおらぬわぁ! おるとしたら、我こそが神なるぞ! このもののけめぇ」

「血気さかんな奴だなぁ、貴様が信じるか、信じないかは私にとってはどうでもいいことだ。なるほど……貴様は神になりたいのか、さすれば貴様に力を与えてやろう。この国の支配者になりたいのであろう?」

「なんだとぉ、俺に力をくれるだと? そのようなものはいらぬわぁ」

「全くもってして欲のない奴だな、そなた達の言葉で天晴れと言うのかなぁ。しかし、支配者にはなりたいのであろう?」

「あぁ、確かに俺は天下をとりたいと思っておる。でも、それは自分の力でじゃ!」

「まぁ、そなたの言うことも、もっともな事である。しかし、そなたは現在窮地に立たされておる。義元が大軍を率いて、そなたの国に迫っておるからなぁ。どうする信長よ、勝てるのかぁ? 義元に」

「それは、わからん。もし、負けたとしても、もののふとしての本望じゃ」

「それでは、我々は困るのだ。そなたには、勝ってもらわないと困るのだ。そなたが、望まないにしろ、勝手ながら協力だけはさせてもらうよ」

「勝手にしろ! ここは気分が悪い。帰らせてくれ」

「わかった、わかった信長よ。帰らせてやる代わりに、今から私が言うことだけを覚えておいてくれ。義元の軍勢は桶狭間という場所で突然の雷雨によって休憩しておる。義元の軍勢は休憩中眠っておるので、そこを少数でせめるのだ。さすれば、歴史に名前が残る勝利になるであろう。勿論、私が今言った事は夢だと思ってくれても結構である。では、信長よ、さらばじゃ」

 艦長は信長にそう言ってから、信長を催眠電波によって眠らせると元の地上に戻した。



 その頃、遊星Xでは、総統によってギャンブル対戦カードが発表されていた。

 今川義元VS織田信長、オッズは義元の1、5倍に対して信長は108倍である。総統の思惑通りに国民の多くは義元に大金のギルを賭けていた。総裁は無論、信長に大量のギルを賭けている。

 総統は再びギャンブルの勝利の確証を得るために、地球にいる宇宙船に連絡をとった。

「どうだぁ、艦長抜かりはないだろうなぁ! あとで八百長がばれないように細工もしておくのだぞ」

「はい。総統閣下、さきほど信長には勝ち方をレクチャーしておきました。それと、万が一の時ようにと、明智光秀なる男をキャプチャーして、脳内にコントロールパネルをインプラントしております」

「うむ、よくやった。成功のあかつきには、そちの出世は約束しようぞ!」

「ありがとうございます。総統閣下」



 馬に乗ったまま、深い眠りから覚めた信長は上機嫌であった。なぜなら、彼は神のお告げを聞いて義元に対して勝利を確信していたからだ。一旦、信長は城内に戻ると、敦盛を舞ったのち、配下の武将に出陣を下知した。その後、神社にて戦勝祈願をした信長は、配下の武将達を集めて叫んだ。

「決戦は桶狭間だぞ!」

 

 宇宙船は桶狭間上空に移動すると、環境制御装置を起動させた。瞬く間に桶狭間上空に暗雲が立ち込めて、雷雲とともに大粒の雨が地上に降り注ぐ。そのため、義元の軍勢は一時行軍を停止させた。さらに休憩中の義元の軍勢に対して、催眠ガスを放出した。あっとゆうまに義元の軍勢は眠りについた。

 山間に潜んで、義元の動向を窺っていた信長は、義元の軍勢が眠りについたのを確認すると武将達に突撃命令を発した。

「皆の者、この機を逃すのではないぞ! 義元の首をとったものには、褒美をつかわすぞ! 皆の者、功名をあげるのだ。全軍突撃ぃ!!」

 一気にときの声を上げて信長の軍勢は義元めがけてなだれこんだ。そして、武将の一人があっとゆうまに義元の首頭をかかげて雄たけびをあげた。

「我、義元の首をとったなりぃ!」



 遊星Xでは、武将が首を掲げた時、激しい罵声が飛び交っていた。モニターには審議のランプが点灯しているが、判定はくつがえることは無い。しかし、その後、総統府には抗議の民衆がおしよせた為に、総統は国民に対して調査委員会を発足させて、直ちに地球に向かって調査員を派遣させた。

 しかし、調査員が地球に到着した時には、すでに明智光秀によって証拠隠滅がなされていて八百長が露呈することはなかった。

 このことに味をしめた総統は、再び八百長を行うべきと、宇宙船を地球に飛び立たせた。



 地球軌道上には、またしても総統の特命をうけた宇宙船が待機していた。

 宇宙船のハッチからは探査ミクロマシーンが射出される。ミクロマシーンからは、いままでに無い、激しい邪気が分析機に送られてくる。今度の戦争予想地はドイツと呼ばれる国であった。ただちに、詳しい調査をするために、イメージアナライズが放出された。

 アナライズから、宇宙船に映像が送られてきた。映像にはチョビ髭をはやした貧弱な青年の顔が写しだされていた。激しい邪気はこの貧弱な青年から発しられている。

 職業は画家になっていて、その男の名は……アドルフ・ヒットラーと記されていた。
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