完結 元エリート刑務官、転移先は異世界のブラック監獄!? 下っ端スタートから囚人たちと更生改革します!』

カトラス

文字の大きさ
37 / 62

第36話『侵食する影──地下魔物の巣』

しおりを挟む
 レオンの復活からわずか数日。



 俺たちは、その影響が思った以上に大きいことを、すぐに知ることになる。



 ある夜、D棟の下層部から異様な音が響き渡った。

 ギィ……ギィ……と、鉄を爪で引き裂くような、不快で不自然な音。

 そして、それに混じって聞こえる、何かが“這いずる”ような水音。



「何だ……? 今の音、聞いたか?」



 警戒態勢で巡回中だったベルンが、ランタンの火を高く掲げながら言った。

 俺とナナ、そしてジリアとヴェルも即座に駆けつける。



 異常は、D棟の地下側廊下──本来なら使われていない廃棄通路から発生していた。



「この気配……」

 ヴェルが眉をひそめた。

「魔物だ。しかも、地下にいたはずのやつらが、上に……!」



 やはり、レオンの封印が緩んだことで、ダンジョン内の結界が不安定になっているのかもしれない。



 ――その証拠に。



 廊下の奥から、闇より這い出たのは、変質した人型の魔物だった。

 膨れ上がった肉体。目は虚ろで、牙が口元から飛び出している。



「食堂……ノ……パン……」



 元人間だ。間違いなく、かつてここで命を落とした囚人のなれの果て。

 腐敗した魔素に侵され、怨念ごと蘇った存在。



「来るぞッ!!」

 ジリアの叫びと同時に、俺たちは武器を抜いた。



 ベルンが前に出て、鉄槌を振るう。

 ナナは、訓練で覚えたばかりの回復呪文をヴェルに掛け、援護に回る。

 ヴェルは魔弾を放ち、ジリアは素早い身のこなしで囚人だった魔物の側面を取る。



「これだけじゃねぇな……まだ、奥から来るぞ!」

 レオンの声が響いた。



 彼はすでに剣を構え、廊下の奥へと走っていった。

 そして、暗闇の先に現れた第二の魔物──六本の腕を持つ巨大な蜘蛛型のクリーチャーを、躊躇なく叩き斬る。



「遅ぇぞ、ハヤト! とっとと結界張って食い止めろ!」



「こっちも手一杯なんだよ、クソ勇者!」



 怒鳴り合いながらも、俺は懐から紙札を取り出し、ヴェルと連携して簡易封印術を展開する。



 だが……それでも食い止め切れない。



 魔物たちは、ダンジョンから溢れ出しつつある魔素を吸い込むことで、異常に活性化していた。



「このままだと、監獄の内部まで奴らに侵食される……」

 ジリアが呟く。



「地下の結界を強化するしかないな……」

 ヴェルが汗を拭いながら言った。



「となると、俺たちはまた地下に潜ることになる」

 ナナが、うっすらとした笑みを浮かべる。

「覚悟は、もうできてるよ」



 ベルンがうなずき、ジリアも無言で頷いた。



 そして、レオンは短く言った。

「……だったら、行くしかねぇな。俺たちで、地獄の穴を塞ぐんだ」



 ──だがその時、背後から聞こえた絶叫が、空気を切り裂いた。



「う、うわああああああっ!!!」



 それは、ロト・ギャンベルの声だった。



 俺たちが振り返ると、彼は配膳室の入口で震えていた。

 その足元から、黒い触手のような影がうごめき、ロトの足を掴んだ瞬間──



 突如として現れたアンデッドの魔物が、彼を引きずり倒し、そのまま背中に噛みついた。



「ギィイイイイイイイィッ!!!」



 絶叫と共に、ロト・ギャンベルの姿は、闇へと呑み込まれていった。



 ──だがそれだけでは終わらない。



 数時間後、廊下を巡回していたナナが凍りついた。



「まさか……あれ、ロト……?」



 その先には、血と内臓を引きずりながら徘徊するアンデッドと化したロトの姿。

 両目は虚ろで、口からは腐敗した肉片と黒い液体が垂れていた。



「ハヤト……に、俺は……騙され……た……」



 呻き声のように呟きながら、手にした警棒を力なく振り回している。



「チッ……くだらねぇ執念だな」

 レオンが前に出る。



 剣を軽く一閃。

 アンデッドと化したロトの身体は一瞬で真っ二つに斬られ、燃え尽きるように塵となって消滅した。



「まだ未練が残ってたか……だが、もう眠れ」



 レオンの静かな呟きが、場に響いた。



 こうして、俺たちは再び“封印の修復”という新たな任務を担い、

 地下魔物たちとの、本格的な戦いへと身を投じていく。



 ──それは、ガランツァ監獄だけでなく、この世界そのものに広がる“闇”の序章にすぎなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...