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第三十二話 『薔薇は枯れ、牙を剥く──シャルロッテへの制裁 PART1』
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午後の城中庭は、陽光が緑の芝を優しく照らし、噴水の水滴が虹色に光っていた。庭師たちが刈り込みを整え、遠くからは楽団の練習曲が微かに響いてくる。薔薇の香りが風に乗って漂い、鮮やかな花弁が静かに舞い落ちる。
そんな華やかな風景の中を、美青年の姿をしたニールがゆっくりと歩み寄ってきた。陽光を受けた銀色の瞳が輝き、外套の裾が芝生を掠めて揺れる。その姿は猫のしなやかさと人間の優雅さを兼ね備え、視線を奪うほどだった。
薔薇のアーチの下で、シャルロッテが小鳥に餌をやっていた。彼女の金色の髪は陽光を受けて輝き、その笑顔は無邪気に見えるが、私はその奥に潜む残酷さを知っている。
「お約束通り、来ましたよ」
ニールが柔らかな笑みを浮かべて告げると、シャルロッテは小鳥から手を離し、期待を隠せない表情で振り向いた。
「……本当に来てくださったのね」
その声には高揚と微かな緊張が混じり、頬に淡い紅が差している。
「ええ。ですが……ここでは少々、人目が多い」
ニールは周囲を見渡し、低く囁く。
「もっと静かな場所で、あなたと二人きりで話がしたいのです」
シャルロッテの瞳が好奇心で輝き、「どこへ?」と問いかける。
「城を出て少し歩いたところに、小さな作業小屋があります。墓場の近くで、人通りはほとんどない……安心してお話できる場所です」
その言葉に、シャルロッテは息を弾ませた。「そんな場所で……二人きり?」
「もちろん」
ニールの声は甘く、同時に獲物を絡め取る糸のように確かだった。シャルロッテは迷いなく頷き、ドレスの裾をつまみ上げて歩き出す。ニールはその隣を、護衛であり恋人でもあるかのような距離で伴う。
私は遠くから二人を見つめ、墓場近くへと向かうその足取りを、影の中から静かに追い続けた。
視界の先で、二人は城門を抜けた。門番の視線を巧みに避けながら、芝の小道から石畳の大路へ、そして城下の雑踏へと足を移す。市場のざわめきや商人の掛け声が一瞬耳に届き、すぐに背後へと遠ざかっていく。
そこからは、人影の少ない裏道を進む。石畳はやがて土の小道に変わり、道端の雑草が足元をかすめた。私は草陰に身を潜め、樹木の影から影へと身を滑らせながら、一定の距離を保って後を追う。二人の足音が小道に吸い込まれていくたび、私の心拍は少しずつ高まった。
墓場が近づくにつれ、空気は次第に冷たく湿っていく。土と枯葉の匂いが鼻を刺し、古びた墓標が風に揺れて微かなきしみを立てた。遠くで犬の遠吠えが響き、その音が冷えた空気に溶け込んで、背筋をゆっくりと這い上がってくる。
しかしシャルロッテは、その不穏さに気付く様子もない。視線は隣を歩くニールに釘付けで、笑みを浮かべながら言葉を交わしている。私はその様子を逃さぬよう、視線を鋭く保ったまま、影の中から静かに尾行を続けた。
墓場の外れにある古びた作業小屋は、外壁の板が剥がれ、釘は赤茶けた錆を浮かべていた。雨跡が黒く筋を描き、低い屋根には枯葉が積もり重なっている。軋む扉を押し開けると、冷たく湿った空気が一気に流れ込み、頬を撫でた。中は薄暗く、唯一の窓は埃と泥で曇り、外の光をほとんど通さない。
湿気に混じって、長年放置された木材の腐臭が重く漂う。床板には暗い染みが点々と広がり、隅には錆びた鍬や鎌、埃をかぶった麻袋が積み上げられていた。
「さあ、中へ。ここなら……誰にも邪魔されません」
ニールは銀色の瞳を細め、扉を閉める音をわざとゆっくり響かせた。その仕草は、外界を遮断し、この場を二人だけの密室に変える演出のようだった。
懐から取り出されたのは、小さなガラスの小瓶。掌にすっぽり収まる大きさで、淡い琥珀色の液体がとろりと揺れている。
「これは……?」
シャルロッテが首を傾げると、ニールは口元に薄い笑みを浮かべ、囁き声で答えた。
「気持ちよくなる薬ですよ。あなたに……もっと素敵な時間を過ごしてほしくて」
その声は、香水のように甘く耳に溶け込み、心を撫でる。シャルロッテの瞳が好奇心と淡い期待で潤み、ためらいもなく小瓶を受け取った。
「怖がらなくていい。少し口にすれば、すぐに分かります」
ニールの促しに、シャルロッテは瓶の口を開ける。ほのかに花蜜のような甘い香りが立ち上り、彼女はうっとりと目を閉じ、一口……また一口と喉に流し込む。
「……あたたかい……」
微笑む彼女の声がわずかに掠れ、呼吸が少し速くなる。頬は桜色に染まり、指先が無意識に胸元へ触れる。その一挙一動を、ニールはまるで獲物の変化を見逃さぬ猛禽のような眼差しで、飢えを隠すようにじっと見つめていた。
数分もしないうちに、彼女の頬が薄紅に染まり、首筋にうっすらと汗が滲む。呼吸は荒く、胸の上下に合わせて衣擦れの音が小屋の中にやけに大きく響いた。
その瞳から理性の光が消え、視線は自然とニールへと吸い寄せられていく。彼女は甘えるように、ためらいもなく一歩、また一歩と距離を詰めた。
ニールは銀の瞳を細め、微笑みを崩さない。その瞳は、獲物が罠に絡め取られる瞬間を愉しむ捕食者のそれだった。
シャルロッテの瞳は、熱に潤んでとろけそうだった。頬は上気し、荒い息遣いが唇から漏れるたびに、室内の湿った空気がわずかに揺れる。
その足取りは迷いなく、まるで引き寄せられるようにニールへと近づいていく。床板がきしむたび、私の胸の奥に張り詰めた糸が少しずつ震えた。
ニールはその進行を止めず、ただ微笑を浮かべて立っていた。銀色の瞳が妖しく光り、まるで獲物が罠の中心へ自ら足を踏み入れるのを楽しんでいるようだ。
私は扉の外でその様子を見届け、心の中で冷たく呟く――今だ。
ギィ、と軋む音を立てて扉を押し開けた。冷たい外気が流れ込み、二人の間に漂っていた甘い空気を切り裂く。
薄暗い小屋の中、私はまっすぐにシャルロッテを見据えた。その視線は鋭く、まるで獲物を定める刃のように彼女の心臓を射抜いていた。
私は躊躇なく扉を押し開けた。ギィ、と鈍い軋みが静寂を裂き、冷たい外気が一気に室内へ流れ込む。
その風の中、私は一歩踏み込み、二人の間に影を落とす。
シャルロッテの視線が驚きに揺れ、頬の紅潮がさらに濃くなる。ニールは口元だけで笑みを深め、私を迎えた。
「……楽しそうね、シャルロッテ」
私の声は低く、冷ややかに。薄暗い小屋の中で、その言葉が静かに沈み、そしてゆっくりと彼女の耳へ染み込んでいった。
私はゆっくりと、湿った床板を踏みしめながらシャルロッテへと歩を進めた。小屋の中は薄暗く、天井の隙間から差し込む光はほとんど力を持たず、腐りかけた木の匂いと土の湿気が重く漂っている。遠くで風が墓標を鳴らし、その音が室内に微かな振動を伝えていた。
彼女はまだ、熱に浮かされた瞳でニールを見上げ、頬を朱に染めて微笑んでいる。私の存在に気づく様子もなく、その視線は獲物に寄り添う蝶のように揺らいでいた。
「……私のこと、覚えているか」
低く、湿った空気を切り裂くような声を放つと、木壁に反響し鈍く響いた。シャルロッテの瞳がゆっくりと私へ向くが、焦点は合わず、霞がかったように私を映している。
「お前たち三姉妹に……水責めの拷問をされ、飽きたらこの近くに捨てられ……犬に食われかけた」
シャルロッテは、足元もおぼつかない様子でふらつきながら前に出た。頬は紅潮し、瞳は熱に潤み、理性の残滓はとうに消えている。彼女は私を見据えることもせず、ゆるく笑みを浮かべて言った。
「……いっぱいやったから、覚えてない」
その言葉は、まるで罪の重さなど最初から存在しないかのような軽さだった。子どもが遊びの出来事を語るような無邪気さすら感じられる。吐息には媚薬に侵された甘い気配が混じり、空気をねっとりと染める。
「……覚えてない、だと?」
私は低く問い返す。胸の奥で、ひやりとした失望が沈殿していくのをはっきりと感じた。あれほどの屈辱と痛みを与えられたというのに、彼女の記憶には何一つ刻まれていない。その事実が、逆に私の怒りを静かに、鋭く研ぎ澄ませていく。
「お前にとっては、遊びだったのね」
口元に笑みを浮かべる。しかしその笑みは、温もりの欠片もない、氷の刃のように張り詰めたものだった。沈黙の中、私の内側で怒りは炎のように燃え立つのではなく、音もなく広がる黒い煤のように、じわじわと全身を満たしていった。
言葉を紡ぐごとに、あの冷たく重い水の感触、肺を圧迫する苦しさ、そして牙が肉を裂く直前の恐怖が脳裏に鮮明によみがえる。胸の奥に沈んだ憎悪は、年月を経てもなお赤々と燃え続けていた。
シャルロッテはぼんやりとした笑みを浮かべたまま、「……あなたは、王女様……なぜ……?」と夢の中で呟くように問う。その声音には疑問も警戒もなく、ただ媚薬に蝕まれた恍惚だけが宿っていた。
私はその様子を見下ろし、口元に冷たい笑みを刻む。彼女の中では、もはや過去の罪も私の正体も、どうでもよくなっている――それが、むしろ私の意志をより冷酷に研ぎ澄ませていった。
そんな華やかな風景の中を、美青年の姿をしたニールがゆっくりと歩み寄ってきた。陽光を受けた銀色の瞳が輝き、外套の裾が芝生を掠めて揺れる。その姿は猫のしなやかさと人間の優雅さを兼ね備え、視線を奪うほどだった。
薔薇のアーチの下で、シャルロッテが小鳥に餌をやっていた。彼女の金色の髪は陽光を受けて輝き、その笑顔は無邪気に見えるが、私はその奥に潜む残酷さを知っている。
「お約束通り、来ましたよ」
ニールが柔らかな笑みを浮かべて告げると、シャルロッテは小鳥から手を離し、期待を隠せない表情で振り向いた。
「……本当に来てくださったのね」
その声には高揚と微かな緊張が混じり、頬に淡い紅が差している。
「ええ。ですが……ここでは少々、人目が多い」
ニールは周囲を見渡し、低く囁く。
「もっと静かな場所で、あなたと二人きりで話がしたいのです」
シャルロッテの瞳が好奇心で輝き、「どこへ?」と問いかける。
「城を出て少し歩いたところに、小さな作業小屋があります。墓場の近くで、人通りはほとんどない……安心してお話できる場所です」
その言葉に、シャルロッテは息を弾ませた。「そんな場所で……二人きり?」
「もちろん」
ニールの声は甘く、同時に獲物を絡め取る糸のように確かだった。シャルロッテは迷いなく頷き、ドレスの裾をつまみ上げて歩き出す。ニールはその隣を、護衛であり恋人でもあるかのような距離で伴う。
私は遠くから二人を見つめ、墓場近くへと向かうその足取りを、影の中から静かに追い続けた。
視界の先で、二人は城門を抜けた。門番の視線を巧みに避けながら、芝の小道から石畳の大路へ、そして城下の雑踏へと足を移す。市場のざわめきや商人の掛け声が一瞬耳に届き、すぐに背後へと遠ざかっていく。
そこからは、人影の少ない裏道を進む。石畳はやがて土の小道に変わり、道端の雑草が足元をかすめた。私は草陰に身を潜め、樹木の影から影へと身を滑らせながら、一定の距離を保って後を追う。二人の足音が小道に吸い込まれていくたび、私の心拍は少しずつ高まった。
墓場が近づくにつれ、空気は次第に冷たく湿っていく。土と枯葉の匂いが鼻を刺し、古びた墓標が風に揺れて微かなきしみを立てた。遠くで犬の遠吠えが響き、その音が冷えた空気に溶け込んで、背筋をゆっくりと這い上がってくる。
しかしシャルロッテは、その不穏さに気付く様子もない。視線は隣を歩くニールに釘付けで、笑みを浮かべながら言葉を交わしている。私はその様子を逃さぬよう、視線を鋭く保ったまま、影の中から静かに尾行を続けた。
墓場の外れにある古びた作業小屋は、外壁の板が剥がれ、釘は赤茶けた錆を浮かべていた。雨跡が黒く筋を描き、低い屋根には枯葉が積もり重なっている。軋む扉を押し開けると、冷たく湿った空気が一気に流れ込み、頬を撫でた。中は薄暗く、唯一の窓は埃と泥で曇り、外の光をほとんど通さない。
湿気に混じって、長年放置された木材の腐臭が重く漂う。床板には暗い染みが点々と広がり、隅には錆びた鍬や鎌、埃をかぶった麻袋が積み上げられていた。
「さあ、中へ。ここなら……誰にも邪魔されません」
ニールは銀色の瞳を細め、扉を閉める音をわざとゆっくり響かせた。その仕草は、外界を遮断し、この場を二人だけの密室に変える演出のようだった。
懐から取り出されたのは、小さなガラスの小瓶。掌にすっぽり収まる大きさで、淡い琥珀色の液体がとろりと揺れている。
「これは……?」
シャルロッテが首を傾げると、ニールは口元に薄い笑みを浮かべ、囁き声で答えた。
「気持ちよくなる薬ですよ。あなたに……もっと素敵な時間を過ごしてほしくて」
その声は、香水のように甘く耳に溶け込み、心を撫でる。シャルロッテの瞳が好奇心と淡い期待で潤み、ためらいもなく小瓶を受け取った。
「怖がらなくていい。少し口にすれば、すぐに分かります」
ニールの促しに、シャルロッテは瓶の口を開ける。ほのかに花蜜のような甘い香りが立ち上り、彼女はうっとりと目を閉じ、一口……また一口と喉に流し込む。
「……あたたかい……」
微笑む彼女の声がわずかに掠れ、呼吸が少し速くなる。頬は桜色に染まり、指先が無意識に胸元へ触れる。その一挙一動を、ニールはまるで獲物の変化を見逃さぬ猛禽のような眼差しで、飢えを隠すようにじっと見つめていた。
数分もしないうちに、彼女の頬が薄紅に染まり、首筋にうっすらと汗が滲む。呼吸は荒く、胸の上下に合わせて衣擦れの音が小屋の中にやけに大きく響いた。
その瞳から理性の光が消え、視線は自然とニールへと吸い寄せられていく。彼女は甘えるように、ためらいもなく一歩、また一歩と距離を詰めた。
ニールは銀の瞳を細め、微笑みを崩さない。その瞳は、獲物が罠に絡め取られる瞬間を愉しむ捕食者のそれだった。
シャルロッテの瞳は、熱に潤んでとろけそうだった。頬は上気し、荒い息遣いが唇から漏れるたびに、室内の湿った空気がわずかに揺れる。
その足取りは迷いなく、まるで引き寄せられるようにニールへと近づいていく。床板がきしむたび、私の胸の奥に張り詰めた糸が少しずつ震えた。
ニールはその進行を止めず、ただ微笑を浮かべて立っていた。銀色の瞳が妖しく光り、まるで獲物が罠の中心へ自ら足を踏み入れるのを楽しんでいるようだ。
私は扉の外でその様子を見届け、心の中で冷たく呟く――今だ。
ギィ、と軋む音を立てて扉を押し開けた。冷たい外気が流れ込み、二人の間に漂っていた甘い空気を切り裂く。
薄暗い小屋の中、私はまっすぐにシャルロッテを見据えた。その視線は鋭く、まるで獲物を定める刃のように彼女の心臓を射抜いていた。
私は躊躇なく扉を押し開けた。ギィ、と鈍い軋みが静寂を裂き、冷たい外気が一気に室内へ流れ込む。
その風の中、私は一歩踏み込み、二人の間に影を落とす。
シャルロッテの視線が驚きに揺れ、頬の紅潮がさらに濃くなる。ニールは口元だけで笑みを深め、私を迎えた。
「……楽しそうね、シャルロッテ」
私の声は低く、冷ややかに。薄暗い小屋の中で、その言葉が静かに沈み、そしてゆっくりと彼女の耳へ染み込んでいった。
私はゆっくりと、湿った床板を踏みしめながらシャルロッテへと歩を進めた。小屋の中は薄暗く、天井の隙間から差し込む光はほとんど力を持たず、腐りかけた木の匂いと土の湿気が重く漂っている。遠くで風が墓標を鳴らし、その音が室内に微かな振動を伝えていた。
彼女はまだ、熱に浮かされた瞳でニールを見上げ、頬を朱に染めて微笑んでいる。私の存在に気づく様子もなく、その視線は獲物に寄り添う蝶のように揺らいでいた。
「……私のこと、覚えているか」
低く、湿った空気を切り裂くような声を放つと、木壁に反響し鈍く響いた。シャルロッテの瞳がゆっくりと私へ向くが、焦点は合わず、霞がかったように私を映している。
「お前たち三姉妹に……水責めの拷問をされ、飽きたらこの近くに捨てられ……犬に食われかけた」
シャルロッテは、足元もおぼつかない様子でふらつきながら前に出た。頬は紅潮し、瞳は熱に潤み、理性の残滓はとうに消えている。彼女は私を見据えることもせず、ゆるく笑みを浮かべて言った。
「……いっぱいやったから、覚えてない」
その言葉は、まるで罪の重さなど最初から存在しないかのような軽さだった。子どもが遊びの出来事を語るような無邪気さすら感じられる。吐息には媚薬に侵された甘い気配が混じり、空気をねっとりと染める。
「……覚えてない、だと?」
私は低く問い返す。胸の奥で、ひやりとした失望が沈殿していくのをはっきりと感じた。あれほどの屈辱と痛みを与えられたというのに、彼女の記憶には何一つ刻まれていない。その事実が、逆に私の怒りを静かに、鋭く研ぎ澄ませていく。
「お前にとっては、遊びだったのね」
口元に笑みを浮かべる。しかしその笑みは、温もりの欠片もない、氷の刃のように張り詰めたものだった。沈黙の中、私の内側で怒りは炎のように燃え立つのではなく、音もなく広がる黒い煤のように、じわじわと全身を満たしていった。
言葉を紡ぐごとに、あの冷たく重い水の感触、肺を圧迫する苦しさ、そして牙が肉を裂く直前の恐怖が脳裏に鮮明によみがえる。胸の奥に沈んだ憎悪は、年月を経てもなお赤々と燃え続けていた。
シャルロッテはぼんやりとした笑みを浮かべたまま、「……あなたは、王女様……なぜ……?」と夢の中で呟くように問う。その声音には疑問も警戒もなく、ただ媚薬に蝕まれた恍惚だけが宿っていた。
私はその様子を見下ろし、口元に冷たい笑みを刻む。彼女の中では、もはや過去の罪も私の正体も、どうでもよくなっている――それが、むしろ私の意志をより冷酷に研ぎ澄ませていった。
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