完結『戦隊ヒーロー追放された俺、なぜか敵の幹部になって世界を変えていた件』

カトラス

文字の大きさ
1 / 55

【第1話】『そして、正義は俺を見捨てた』

しおりを挟む
 視界が、赤かった。

 それは流れ落ちる自分の血の色か、それとも空を焦がす炎のせいか。よくわからなかった。ただ一つ確かに言えるのは──今、自分たちは負けたという事実。

 空中に浮かぶ崩壊した都市の残骸。溶けかけたビル群。異様に静かな風が吹き抜ける。

「……う、ぐっ……!」

 がれきの中で、日向イツキは呻き声をあげて立ち上がる。血に塗れたマスクの下の顔が、歯を食いしばる音を立てた。

 かつて“セイガンレッド”と呼ばれた彼のボディスーツは、既に半壊している。赤いヒーロースーツの光沢は失われ、装甲のあちこちに焼け跡と亀裂が走っていた。

「イツキ! 生きてたのか……」

 声をかけてきたのはセイガンブルー──千堂レンだ。かつての仲間であり、同じ戦隊に所属していた。

「……ああ。なんとか……な」

 イツキが手を伸ばしかけたその時だった。

 レンの目が、冷たく細まった。

「……なんだその顔。悪びれた様子もないのか?」

「は……?」

 意味がわからず、イツキはまばたきした。

 だが、次の瞬間、彼の背後にいた仲間たちも姿を現す。セイガンイエロー、セイガングリーン、セイガンピンク──その誰もが、険しい表情だった。

「俺たちは、全滅寸前だったんだぞ……!」

「なにが“特攻する”だ……! あんたが突っ込んで、敵の総帥に一人で挑んだから、部隊が分断されて──!」

「作戦無視したのは、レッド……いや、お前だよ、日向イツキ」

 責め立てる言葉の嵐。焼けつくような瞳が突き刺さる。

「待て……あの時は、分断される前に奴を止めるチャンスだったんだ。あれを逃したら、被害はもっと……!」

「“正義のために俺が犠牲になればいい”って、いつもそうだよな、お前」

 レンが呟く。静かな言葉に、凍りつくような重みがあった。

「お前はいつだって、自分だけで勝手に突っ走ってきた。仲間を信じず、一人で抱え込んで……それでこのザマだよ」

「…………」

 イツキは言葉を失った。

 焼け跡の向こう、黒煙が立ち上る都市の片隅に、見覚えのある影が立っていた。

 ──ネメシスの総帥、“メフィウス”。

 彼はもう戦っていなかった。どこか皮肉げに微笑みながら、ただこちらを見下ろしていた。

「もう……お前は、ヒーローじゃない」

 ピンクの少女・ヒナが絞り出すように言った。

「今日限りで、セイガンファイブから……追放よ」

 鼓膜が破れそうなほど、世界が静かだった。瓦礫が風に吹かれてカラカラと転がる音だけが響いていた。

 イツキは、それをただ受け止めた。

 何も言い返さなかった。できなかった。

 気づいていた。自分が独りよがりだったことに。戦うことでしか生きられなかったことに。

 だが──。

「俺を……見捨てるのか」

 唇から、低く、呟きが漏れた。

「一緒に笑った仲間も、拳を合わせた絆も、全部……“負けた”ってだけで、捨てるのか……!」

 その言葉に、誰も答えなかった。

 やがて、ブルーがぽつりと呟いた。

「──さらばだ、“元”レッド」

 そして彼らは、去っていった。

 崩壊した空に、昭和風ヒーローのシルエットが沈んでいく。背中のマントが風に揺れて、やがて小さくなる。

 その場に残されたイツキは、膝をつき、苦笑した。

「……ああ。なら、俺もやるよ。“ヒーローじゃない”俺を……」

 その瞬間、視界の端に“何か”が映った。

 瓦礫の隙間から覗く、蛇のようにうねる黒い影。甘い香水の匂いが、風に乗って漂ってくる。

「──ずいぶん、情けない顔ねぇ。元レッドさん?」

 その声は、艶やかで、どこかくすぶった炎のように熱を帯びていた。

 彼女が姿を現したのは、まるで舞台の幕が上がるようだった。

 妖艶なボディライン。光沢のあるバイオスーツ。瞳の奥で妖しく輝く、琥珀の光。

 蛇型怪人《ラミア=カーニヴァル》が、くすりと笑う。

「うちの幹部候補になってみない? 今なら改造、タダでしてあげる」

 イツキは目を細め、ゆっくりと立ち上がった。

「……あんた、敵の幹部だろ?」

「ええ。敵だったわ。でも、今のあなたは……どっちなのかしらね?」

 ディストピアの空の下。
 炎と絶望に包まれた瓦礫の中心で、かつてのヒーローは、初めて“悪の手”を取った。

 これは、“正義”に見捨てられた男の、もうひとつの戦いのはじまりである。


※※

皆さま、本作『戦隊ヒーロー追放された俺、なぜか敵の幹部になって世界を変えていた件』を読んでくださって本当にありがとうございます!

この物語、地味に100話超えを視野に入れた長編構成となっておりまして、毎回ド派手に爆破したり、元仲間をざまぁしたり、怪人が溶かしたり、ヒーローがトラウマになったりと、作者の精神力をゴリゴリに削る重労働でございます(愛ゆえに)。

ですが、そんな深夜テンションで戦っている私を救ってくれるのが――そう、あなたの「お気に入り登録」や「感想」なんです!

お気に入りボタンを押す→作者のやる気ゲージが1本回復!
感想を送る→作者、涙を流しながら紅茶をすする!


皆さまの反応が、この物語を完走させる最大の燃料です!
書籍化も夢見つつ、今日もキーボードをカタカタ鳴らしながら、戦隊と怪人と陰謀を混ぜまくったストーリーを全力で執筆中。

今後も「まさかの展開」「読者の予想を裏切るキャラの掘り下げ」「怪人の無駄にグロい手術シーン」など盛りだくさんでお届け予定ですので、どうぞ応援よろしくお願いします!

どうか……どうかお気に入りを……
(作者、そっと正座)


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...