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【第49話】『最後の戦隊、動き出す』
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雨上がりの灰色の空の下、旧セイガン本部跡地に残された訓練場の広場に、かつての戦友たちが集っていた。
イツキ、レン、サクラ──そして、その傍らにはラミアの姿もあった。
風が吹き抜け、むき出しの鉄骨が軋む音と、濡れたアスファルトに水滴が落ちる音が静かに響く。崩れかけた観覧席の前で、四人は輪になって立っていた。
「……こうして顔を合わせるの、どれくらいぶりだろうな」
レンがぼそりと呟いた。その声には懐かしさと、どこかためらいが混じっていた。
「イツキ」
名を呼んだのはサクラだった。目を伏せ、ほんのわずかに口を噛んでいる。
「……あの日、あなたを追放する決定を、私たちが受け入れてしまったこと……ずっと、後悔してた」
レンも黙って頷く。
「本当は、俺たちだけでも止めるべきだった。でも……俺はお前に嫉妬していた。自由奔放に行動するセイガンレッドに……それに厳しく今となっては洗脳されていたセイガンの意思に逆らう勇気が、あのときはなかった……でも、全ては言い訳だ。すまないイツキ」
イツキはじっと二人を見つめ、静かに息を吐いた。
「……過ぎたことだ。俺だって、自分を信じきれてなかった。だから、結果はああなった」
ラミアがそっとイツキの隣に立つ。
「それでも、あなたは戻ってきた。あなたがいたから、私たちは……ネメシスも、再び立ち上がれた」
イツキはわずかに目を細める。
「……今思えば、あのとき俺が戦った“総帥”は、やっぱり偽物だったんだ」
その言葉にレンが息をのんだ。
「模写怪人……だったのか?」
「たぶん。行動も、思考も、どこか人間味がなかった。今の総帥──クレインと比べても、あまりにも“機械的”すぎたし、総帥の戦いを知ってしまったからな。今でも総帥相手だったら瞬殺されるからな」
サクラは肩を震わせ、呟いた。
「じゃあ……私たちは、誰かの手のひらで、あの日を……」
「そう思うと、悔しくて仕方ない」
レンが拳を握り締める。その手は震えていた。
「……グリーンやイエローに、謝りたい」
風が止まり、一瞬、訓練場全体が静寂に包まれる。
サクラがそっと口を開いた。
「……イエローは、最後まで私のそばにいてくれた。『本当にこれでいいの?』って……泣きながら聞かれた」
レンも続けるように、口を開いた。
「グリーンは、最後の出撃前、俺に言ったよ。『イツキは間違ってない。お前たちが信じてやれ』って……」
その言葉に、イツキは顔を上げ、曇天の空を見上げた。
「そうか……アイツら、そんなこと……」
ラミアが前に出て、三人を見渡す。
「誰が正しかったとか、誰が間違ってたとか、もう意味はないわ。彼らの死を、これからどう活かすか。それが私たちに課された“選択”なの」
イツキは静かに頷いた。
「ああ。だからこそ、今度は間違えたくない。……正義って言葉が、俺たちの手で汚れないように」
沈黙のあと、レンがふっと笑った。
「イツキ、お前……変わったな。前より、ずっと強くなった」
「お前らがバカやってる間に、ちょっとな」
軽口に、サクラも微笑む。
「じゃあ、次は間違えないように……三人で進もう。あの空の向こうへ」
イツキ、レン、サクラ。そしてラミア。
再び交差した四人の絆は、過去の後悔を越え、新たな希望へと向かっていた。
訓練場の瓦礫の隙間から、一本の草が芽吹いていた。あたかも、それが新しい未来を象徴するかのように。
彼らは、その芽吹きを踏まぬように歩き出す。もう、失わないために。
■
ネメシス本部の演習棟、仄暗い光に包まれた戦闘演習室。
鋼鉄の壁面に無数のホロスクリーンが浮かび上がり、過去の戦闘記録が機械音とともに再生されている。空調の低い唸りが空間を支配し、人の声が消えたような静けさがあった。
その静寂を破るように、ブーツの硬質な足音が響く。
ゼクスが歩みを進め、その後ろに一人の少女が現れた。
彼女の名はカレン。
かつてセイガンが国民の士気向上のために育てたプロパガンダアイドルであり、ステージでは常に笑顔を絶やさなかった。しかしその裏で、彼女は九頭によって怪人化改造の対象にされ、命すら玩具のように弄ばれた過去を持つ。
今、その姿は以前とは一変していた。
華やかだった衣装の代わりに、冷ややかな色合いの戦闘用ジャケットを身に纏い、視線は真っ直ぐに前を射抜く覚悟に満ちていた。
「カレン……まさかお前が、ここに来るなんてな」
イツキが呟く。驚きというより、微かな戸惑いと苦さを含んだ声だった。
ラミアが横に並び、静かに問いかける。
「その選択、本当に……自分の意志なの?」
カレンは一拍の沈黙ののち、力強く頷いた。
「ええ。セイガンでは私は“希望の象徴”だった。でもそれは誰かの筋書きに踊らされる傀儡にすぎなかったの」
彼女の手が微かに震えていた。
だがその拳は、確かに自分の意志で握り締められている。
「九頭の実験室で、私は“歌う兵器”として改造されかけた。……それでも、誰かに壊されるだけの存在でいたくないと思った」
サクラが俯いたまま小さく問う。
「それでも……また身体をいじられるのに、自分から選ぶなんて……」
「違うの、サクラさん。私は“利用される側”じゃなく、“選ぶ側”になるって決めたの。Ω計画の理念に触れて、やっと気づけた。私は私の意志で変わりたい」
ゼクスが後方から進み出て、端末を操作しながら口を開く。
「身体構造は解析済みだ。適合率は良好。余剰な強化は施さず、人格の維持を最優先とする。ネメシスの戦隊戦力として編成する。つまり君たちのアイドルだ……能力は後方支援で君たちの生体再生を手助けできる。彼女の存在は戦隊にとっては必要不可欠な存在となる」
イツキが一度、目を閉じた。
過去、あの檻の中で見たカレンの姿を思い出す。怯えながらも、決して泣かなかった少女。
「──ならば、俺たちの仲間として迎える。過去の傷は消えなくても……今を選ぶお前の意思を、信じたい」
カレンはゆっくりと微笑んだ。
それは誰かのために作られた笑顔ではない。
自分自身に、そして新たな歩みに向けた誓いの表情だった。
「ありがとう、イツキさん……これが、私の正義。誰の指示でもなく、私自身の歌を響かせたい」
その瞬間、補助スタッフが台車を押して現れる。
台車には、彼女の新たな装甲ユニットが収められていた。
白と深紅を基調にした精鋭仕様の装甲。それはアイドル時代のイメージとは一線を画す、“覚悟”の具現だった。
「コードネームは《オルター・カレン》」
ゼクスが短く告げる。
「作られた偶像ではなく、自らの選択で立つ戦士──それが、お前の新たな姿だ」
カレンは静かに装甲に手を触れる。
その指先はかすかに震えていたが、迷いはなかった。
──もう誰にも、支配されはしない。
かつて“希望の象徴”として利用された少女は今、自らの意志で新たな戦場へと踏み出した。
自由の名の下に、真実の正義を歌うために。
■
ネメシス本部──戦略統制会議室。
重厚な鋼の扉が閉ざされ、空調の微かな唸りすら耳に残るほど静まり返った空間。壁際に浮かぶホロスクリーンには、五人の名前と顔が静かに投影されていた。
会議卓の中央に立つのはゼクス。鋭い視線で全体を見渡すと、明瞭な声で宣言した。
「……本日をもって、ネメシス新戦隊“Ω(オメガ)シャングリラ”の配備を正式決定する」
その言葉と同時に、室内の空気が緊張に包まれる。
隣に立つノアが一歩前に出た。年若く見えながらも、その目には確かな意志が宿っていた。
「この部隊はただの戦力補填ではない。Z-DIVに対抗し得る象徴であり、過去に切り捨てられた者たちの希望でもある」
スクリーンに映る五人の戦士たち。
──イツキ。裏切られ、追放された元ヒーロー。
──ラミア。人ではなく創られた命として戦場を歩んできた相棒。
──レンとサクラ。己の選択を悔いながらも、再び正義を模索する仲間。
──そして、カレン。
演習室から姿を現したカレンは、新造された白と深紅の戦闘装甲を纏っていた。その瞳に宿る光は、かつてのアイドルとはまるで別人だった。
「カレンです。私は、自分の意志でネメシスに来ました。Ω計画に賭けたい。人形としてではなく、戦士として……生きるために」
その言葉に会議室の空気が揺れた。かつて“政府の歌姫”と呼ばれた少女の口から放たれた決意。
ゼクスが静かに頷いた。
「彼女は九頭の手によって素材として処分されかけた。だが今、自ら選んでこの力を手に入れた。彼女こそ、新時代の象徴だ」
イツキが腕を組みながら言う。
「……戦う理由があるなら、俺は仲間として迎える。だが、過去に囚われるな。前だけを見ろ」
カレンは静かに笑みを浮かべた。その笑みは、かつての作られた笑顔ではなく──意志を宿した人間のそれだった。
ノアがもう一度壇上に立ち、拳を握る。
「Ωシャングリラは、“選ばれなかった者たち”の反撃だ。正義に捨てられ、社会に排除され、それでも歩みを止めなかった人々が紡ぐ──反旗の名だ」
最後にゼクスが言い放つ。
「この五人をもって、ネメシスの新たな光とする。我々はこの戦隊に、正義の定義を委ねる」
かつての影が、いま新たな名を得て立ち上がる。
Ωシャングリラ──それは、自由と贖罪と再起を背負い、世界に新たな風を吹き込む者たちの名だった。
■
薄灰色の空から静かに雨が降り注ぐ。
ひび割れたコンクリートの街路を濡らす水音の中、防衛施設《シェルトファウス》の鋼鉄ゲートが軋んだ。
低く唸る警報音が鳴り響き、作戦管制室の空気が緊張に包まれる。
「接近アラート。異常生命体、識別コード不明。出現地点──旧文化センター区域。危険度S相当」
その報告に、管制員たちが息を呑む。
重い沈黙の中、イツキはゆっくりと立ち上がった。
「……誰かが泣く前に動く。それが俺たちの役目だ」
彼の横で、ラミアが冷静にタブレットを操作し、すばやく戦闘データをまとめる。
「行動パターン、既存の敵性体と異なるわ。反応速度、処理能力、すべてが逸脱している。カレン、問題ない?」
新型戦闘スーツに身を包んだカレンは、淡く微笑んでヘルメットを掲げた。
「うん。もう“誰かに作られた私”じゃない。これは……私が選んだ力。あの場所から救ってくれた皆のためにも、証明するよ。私は、ここにいる」
サクラが近づき、そっとカレンの肩に手を置いた。
「あなたが来てくれて嬉しい。……私たち、仲間だよ。何があっても」
レンが端末の画面を閉じ、口元に静かな笑みを浮かべる。
「予定外こそが、戦場の醍醐味だ。さぁ、始めようか」
五人の視線が交差する。
それぞれがヘルメットを装着し、電子ロックがカチリと鳴った。
「Ωシャングリラ、出撃──」
その様子をモニター越しに見ていたゼクスが、小さくうなずく。
隣に立つノアが、重みのある声で言葉を添える。
「この時代に必要なのは、選ばれた“光”じゃない。闇を知った者たちが放つ、もう一つの“希望”だ」
装甲ゲートが開く。
激しく吹きすさぶ風雨の中へ、五つの光が飛び出した。
イツキ。
ラミア。
レン。
サクラ。
そして──カレン。
彼らは過去に裏切られ、痛みを抱え、それでも歩みを止めなかった。
その名は《Ωシャングリラ》。
正義に見捨てられた者たちが、新たな“正義”を問い直す。
戦いは静かに幕を開けた。
これは、選ばれなかった者たちによる、選び直すための戦いだ。
イツキ、レン、サクラ──そして、その傍らにはラミアの姿もあった。
風が吹き抜け、むき出しの鉄骨が軋む音と、濡れたアスファルトに水滴が落ちる音が静かに響く。崩れかけた観覧席の前で、四人は輪になって立っていた。
「……こうして顔を合わせるの、どれくらいぶりだろうな」
レンがぼそりと呟いた。その声には懐かしさと、どこかためらいが混じっていた。
「イツキ」
名を呼んだのはサクラだった。目を伏せ、ほんのわずかに口を噛んでいる。
「……あの日、あなたを追放する決定を、私たちが受け入れてしまったこと……ずっと、後悔してた」
レンも黙って頷く。
「本当は、俺たちだけでも止めるべきだった。でも……俺はお前に嫉妬していた。自由奔放に行動するセイガンレッドに……それに厳しく今となっては洗脳されていたセイガンの意思に逆らう勇気が、あのときはなかった……でも、全ては言い訳だ。すまないイツキ」
イツキはじっと二人を見つめ、静かに息を吐いた。
「……過ぎたことだ。俺だって、自分を信じきれてなかった。だから、結果はああなった」
ラミアがそっとイツキの隣に立つ。
「それでも、あなたは戻ってきた。あなたがいたから、私たちは……ネメシスも、再び立ち上がれた」
イツキはわずかに目を細める。
「……今思えば、あのとき俺が戦った“総帥”は、やっぱり偽物だったんだ」
その言葉にレンが息をのんだ。
「模写怪人……だったのか?」
「たぶん。行動も、思考も、どこか人間味がなかった。今の総帥──クレインと比べても、あまりにも“機械的”すぎたし、総帥の戦いを知ってしまったからな。今でも総帥相手だったら瞬殺されるからな」
サクラは肩を震わせ、呟いた。
「じゃあ……私たちは、誰かの手のひらで、あの日を……」
「そう思うと、悔しくて仕方ない」
レンが拳を握り締める。その手は震えていた。
「……グリーンやイエローに、謝りたい」
風が止まり、一瞬、訓練場全体が静寂に包まれる。
サクラがそっと口を開いた。
「……イエローは、最後まで私のそばにいてくれた。『本当にこれでいいの?』って……泣きながら聞かれた」
レンも続けるように、口を開いた。
「グリーンは、最後の出撃前、俺に言ったよ。『イツキは間違ってない。お前たちが信じてやれ』って……」
その言葉に、イツキは顔を上げ、曇天の空を見上げた。
「そうか……アイツら、そんなこと……」
ラミアが前に出て、三人を見渡す。
「誰が正しかったとか、誰が間違ってたとか、もう意味はないわ。彼らの死を、これからどう活かすか。それが私たちに課された“選択”なの」
イツキは静かに頷いた。
「ああ。だからこそ、今度は間違えたくない。……正義って言葉が、俺たちの手で汚れないように」
沈黙のあと、レンがふっと笑った。
「イツキ、お前……変わったな。前より、ずっと強くなった」
「お前らがバカやってる間に、ちょっとな」
軽口に、サクラも微笑む。
「じゃあ、次は間違えないように……三人で進もう。あの空の向こうへ」
イツキ、レン、サクラ。そしてラミア。
再び交差した四人の絆は、過去の後悔を越え、新たな希望へと向かっていた。
訓練場の瓦礫の隙間から、一本の草が芽吹いていた。あたかも、それが新しい未来を象徴するかのように。
彼らは、その芽吹きを踏まぬように歩き出す。もう、失わないために。
■
ネメシス本部の演習棟、仄暗い光に包まれた戦闘演習室。
鋼鉄の壁面に無数のホロスクリーンが浮かび上がり、過去の戦闘記録が機械音とともに再生されている。空調の低い唸りが空間を支配し、人の声が消えたような静けさがあった。
その静寂を破るように、ブーツの硬質な足音が響く。
ゼクスが歩みを進め、その後ろに一人の少女が現れた。
彼女の名はカレン。
かつてセイガンが国民の士気向上のために育てたプロパガンダアイドルであり、ステージでは常に笑顔を絶やさなかった。しかしその裏で、彼女は九頭によって怪人化改造の対象にされ、命すら玩具のように弄ばれた過去を持つ。
今、その姿は以前とは一変していた。
華やかだった衣装の代わりに、冷ややかな色合いの戦闘用ジャケットを身に纏い、視線は真っ直ぐに前を射抜く覚悟に満ちていた。
「カレン……まさかお前が、ここに来るなんてな」
イツキが呟く。驚きというより、微かな戸惑いと苦さを含んだ声だった。
ラミアが横に並び、静かに問いかける。
「その選択、本当に……自分の意志なの?」
カレンは一拍の沈黙ののち、力強く頷いた。
「ええ。セイガンでは私は“希望の象徴”だった。でもそれは誰かの筋書きに踊らされる傀儡にすぎなかったの」
彼女の手が微かに震えていた。
だがその拳は、確かに自分の意志で握り締められている。
「九頭の実験室で、私は“歌う兵器”として改造されかけた。……それでも、誰かに壊されるだけの存在でいたくないと思った」
サクラが俯いたまま小さく問う。
「それでも……また身体をいじられるのに、自分から選ぶなんて……」
「違うの、サクラさん。私は“利用される側”じゃなく、“選ぶ側”になるって決めたの。Ω計画の理念に触れて、やっと気づけた。私は私の意志で変わりたい」
ゼクスが後方から進み出て、端末を操作しながら口を開く。
「身体構造は解析済みだ。適合率は良好。余剰な強化は施さず、人格の維持を最優先とする。ネメシスの戦隊戦力として編成する。つまり君たちのアイドルだ……能力は後方支援で君たちの生体再生を手助けできる。彼女の存在は戦隊にとっては必要不可欠な存在となる」
イツキが一度、目を閉じた。
過去、あの檻の中で見たカレンの姿を思い出す。怯えながらも、決して泣かなかった少女。
「──ならば、俺たちの仲間として迎える。過去の傷は消えなくても……今を選ぶお前の意思を、信じたい」
カレンはゆっくりと微笑んだ。
それは誰かのために作られた笑顔ではない。
自分自身に、そして新たな歩みに向けた誓いの表情だった。
「ありがとう、イツキさん……これが、私の正義。誰の指示でもなく、私自身の歌を響かせたい」
その瞬間、補助スタッフが台車を押して現れる。
台車には、彼女の新たな装甲ユニットが収められていた。
白と深紅を基調にした精鋭仕様の装甲。それはアイドル時代のイメージとは一線を画す、“覚悟”の具現だった。
「コードネームは《オルター・カレン》」
ゼクスが短く告げる。
「作られた偶像ではなく、自らの選択で立つ戦士──それが、お前の新たな姿だ」
カレンは静かに装甲に手を触れる。
その指先はかすかに震えていたが、迷いはなかった。
──もう誰にも、支配されはしない。
かつて“希望の象徴”として利用された少女は今、自らの意志で新たな戦場へと踏み出した。
自由の名の下に、真実の正義を歌うために。
■
ネメシス本部──戦略統制会議室。
重厚な鋼の扉が閉ざされ、空調の微かな唸りすら耳に残るほど静まり返った空間。壁際に浮かぶホロスクリーンには、五人の名前と顔が静かに投影されていた。
会議卓の中央に立つのはゼクス。鋭い視線で全体を見渡すと、明瞭な声で宣言した。
「……本日をもって、ネメシス新戦隊“Ω(オメガ)シャングリラ”の配備を正式決定する」
その言葉と同時に、室内の空気が緊張に包まれる。
隣に立つノアが一歩前に出た。年若く見えながらも、その目には確かな意志が宿っていた。
「この部隊はただの戦力補填ではない。Z-DIVに対抗し得る象徴であり、過去に切り捨てられた者たちの希望でもある」
スクリーンに映る五人の戦士たち。
──イツキ。裏切られ、追放された元ヒーロー。
──ラミア。人ではなく創られた命として戦場を歩んできた相棒。
──レンとサクラ。己の選択を悔いながらも、再び正義を模索する仲間。
──そして、カレン。
演習室から姿を現したカレンは、新造された白と深紅の戦闘装甲を纏っていた。その瞳に宿る光は、かつてのアイドルとはまるで別人だった。
「カレンです。私は、自分の意志でネメシスに来ました。Ω計画に賭けたい。人形としてではなく、戦士として……生きるために」
その言葉に会議室の空気が揺れた。かつて“政府の歌姫”と呼ばれた少女の口から放たれた決意。
ゼクスが静かに頷いた。
「彼女は九頭の手によって素材として処分されかけた。だが今、自ら選んでこの力を手に入れた。彼女こそ、新時代の象徴だ」
イツキが腕を組みながら言う。
「……戦う理由があるなら、俺は仲間として迎える。だが、過去に囚われるな。前だけを見ろ」
カレンは静かに笑みを浮かべた。その笑みは、かつての作られた笑顔ではなく──意志を宿した人間のそれだった。
ノアがもう一度壇上に立ち、拳を握る。
「Ωシャングリラは、“選ばれなかった者たち”の反撃だ。正義に捨てられ、社会に排除され、それでも歩みを止めなかった人々が紡ぐ──反旗の名だ」
最後にゼクスが言い放つ。
「この五人をもって、ネメシスの新たな光とする。我々はこの戦隊に、正義の定義を委ねる」
かつての影が、いま新たな名を得て立ち上がる。
Ωシャングリラ──それは、自由と贖罪と再起を背負い、世界に新たな風を吹き込む者たちの名だった。
■
薄灰色の空から静かに雨が降り注ぐ。
ひび割れたコンクリートの街路を濡らす水音の中、防衛施設《シェルトファウス》の鋼鉄ゲートが軋んだ。
低く唸る警報音が鳴り響き、作戦管制室の空気が緊張に包まれる。
「接近アラート。異常生命体、識別コード不明。出現地点──旧文化センター区域。危険度S相当」
その報告に、管制員たちが息を呑む。
重い沈黙の中、イツキはゆっくりと立ち上がった。
「……誰かが泣く前に動く。それが俺たちの役目だ」
彼の横で、ラミアが冷静にタブレットを操作し、すばやく戦闘データをまとめる。
「行動パターン、既存の敵性体と異なるわ。反応速度、処理能力、すべてが逸脱している。カレン、問題ない?」
新型戦闘スーツに身を包んだカレンは、淡く微笑んでヘルメットを掲げた。
「うん。もう“誰かに作られた私”じゃない。これは……私が選んだ力。あの場所から救ってくれた皆のためにも、証明するよ。私は、ここにいる」
サクラが近づき、そっとカレンの肩に手を置いた。
「あなたが来てくれて嬉しい。……私たち、仲間だよ。何があっても」
レンが端末の画面を閉じ、口元に静かな笑みを浮かべる。
「予定外こそが、戦場の醍醐味だ。さぁ、始めようか」
五人の視線が交差する。
それぞれがヘルメットを装着し、電子ロックがカチリと鳴った。
「Ωシャングリラ、出撃──」
その様子をモニター越しに見ていたゼクスが、小さくうなずく。
隣に立つノアが、重みのある声で言葉を添える。
「この時代に必要なのは、選ばれた“光”じゃない。闇を知った者たちが放つ、もう一つの“希望”だ」
装甲ゲートが開く。
激しく吹きすさぶ風雨の中へ、五つの光が飛び出した。
イツキ。
ラミア。
レン。
サクラ。
そして──カレン。
彼らは過去に裏切られ、痛みを抱え、それでも歩みを止めなかった。
その名は《Ωシャングリラ》。
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
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