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御懐妊
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吾輩は大坂城に長らく居ついて、久しぶりに夜中に帰って、お土産を持って帰ってくるご主人に会う予定だが。
いつの間にか年が変わり、天正十七年の元日に秀吉が足利義昭・織田信雄・織田秀信・羽柴秀長・宇喜多秀家ら諸大名および公家衆が大坂城に出仕させ、新年祝賀の太刀進上を受けた。
そして、一月十日に秀吉が入京、三日後に参内して歳首を賀し、秀長に淀城を改修して、茶々の産所としました。そのため、茶々様はこののち淀殿と呼ばれるようになった。
やがて、別荘に戻ると、何者かに女中のお菊が殺害されていて、ご主人が激怒していた。
□□□□…………茶々(お菊)
「おめでとうございます。姫様はご懐妊されています」
起きたら白髪頭の知らない男前のお爺さんにそう言われた。
……え、誰?
「ほ、本当か……?!嘘を言っているんじゃないだろうな?!」
優しそうな男前のお爺さんに詰め寄ったのは、猿みたいな爺さんが派手な着物を着ている。
……え、こっちも誰?
「何故嘘をつく理由があるのですか?素直に喜んではいかがですかな?」
猿顔のお爺さんが眉を寄せて、険しい顔付きで男前を見る。男前はその剣幕にたじろいだ様だったが、やや困惑した顔つきで私とお爺さんを見比べて断言した。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
指名された私は、布団に横になったまま恐る恐る手を挙げる。
「あの~、すみません。ちょっと、いいですか?」
「なんだ?」
眉間に皺を寄せて威圧的に見てくる男前。顔が良いと迫力あるなあと、どうでもいい事を考えながら、私はずっと思っていた疑問を口にした。
「あの、お二人共、どちら様ですかね?」
「……は?」
「姫様?」
白髪のお爺さんはお医者さんらしい。
名は曲直瀬道三。かっこいいけど、八十を一つ越えてるそうだ。
顔はしわくちゃだけれど、鼻筋は通っていて、若い頃はさぞかし男前だったんだろうなあって予想できる。
それで猿顔のお爺さんは、秀吉さん。にこやかにしていたらいいのに、ずっと険しい顔つきで腕組みをしている。
何回か曲直瀬道三さんとやり取りした結果、難しい顔で結論を出した。
「……記憶が、混濁されている可能性があります」
いや、全くそんな事ないんだけど……。
菊という自分の名前も、しっかり覚えている。
そこまでは思い出せるのに、この状況も曲直瀬道三さんと秀吉さんの記憶は全くない。
むしろ本当に会ったことある?って感じ。だって、二人共小柄で彫の浅い顔立ちだし、着物姿の人との関わりなんて今まで一切なかったんだもの。
内心、道三さんの言葉を否定してみるけど、正直ここがどこだかもよく分かっていない。
そして、衝撃な事が一つ。
何故か菊から、浅井茶々という名前に変わっていた。
……え、私いつの間にこの名前にしたの?
黙って見ていた秀吉さんが口を開いた。
「演技という可能性はないのか?」
「姫様は階段から落ちた際、頭を強く打っておられるのですよね?」
「そうだ。儂の目の前で右の側頭部と上体から床に落下していた。侍女のお袖も目撃している」
「でしたら、一時的に記憶が混濁されている可能性は充分にあります。処方出来る薬はありませんし、経過観察になるかと」
秀吉さんは顎に手をあてて考え込む。
考え込んでいたけれど、結論が出なかったのか深々と溜め息をついた。
「……そうか。だが、私は演技という可能性を捨てたわけではない。茶々自身の受け答えがしっかりしているからな。道三、しっかり見極めろ」
「はい」
お爺さん先生に偉そうに言った秀吉さんは、今度は私を視界に映した。冷たい雰囲気を持つ彼に見られて、自然と背筋が伸びる。
「貴女も自分一人の身体ではないからな。気を付けろ」
なんか私にもすごく偉そうに言ってきたのだけれど、気圧されて頷いた。
秀吉さんは堂々と部屋から出て行った。すごいな、関白だから様になっている。
そして、ずっと私は疑問に思ってたんだけど……。
「曲直瀬道三さん。ここ、どこですか?」
この京都御所みたいに豪華な部屋、一体どこなんだろうか?
「ここは関白様の所有するお城ですぞ。、山城国久世郡淀にあり、桂川と宇治川の合流点に挟まれた納所に立地しております」
「へえ、山城国久世郡淀。……全然知らないや。」
「はははは。山城国は日ノ本の中心ですぞ。やはり少し記憶が混濁されている可能性がありますな」
…………おかしい。おかしくない?
さすがに日本の中心は京の都は覚えている。というか、山城国ってなに?
記憶が混濁していると結論付けられちゃったんだけど、これってもしかして何を言っても記憶が云々って話になってしまうの?
「……っていうか、ここ関白様のお家だったんですね」
家具とかがクラシックに纏めているのに、掛け軸の掛かった床の間が金色だったり、そこまで華美でない天井が二段になっていたり、今寝てる布団なんか絹織物だし……、これ、素人目から見ても分かる。絶対にお金かかってる。
秀吉さん、絶対金持ちだ……。猿顔なのにお金持ちって、多少不細工でもモテるわ……。
床の間の壺の価値は全く分からないけど。
「関白様のお屋敷であると共に、茶々様のお屋敷でもありますよ」
「え、私の?!なんで?!」
「それは勿論、関白様と茶々様はご夫婦でいらっしゃいますからな」
一瞬、部屋に沈黙が訪れた。
……え?夫婦?
……あの猿顔の爺さんと?
私、めちゃくちゃ平均的な日本人顔なんだけど、隣並んだら違い過ぎない?
「……えっ、夫婦?」
「そうですよ」
にこにこと穏やかな笑みを浮かべる曲直瀬道三さん。
どう見ても冗談を言っているような雰囲気ではない。……雰囲気ではないんだけど、私、いつの間に結婚してたの?
というか、夫婦なのに子供が出来る心当たり一回しかないって……。秀吉さんの態度を見ても、どうやら夫婦仲はそんなに良くないみたいだし。
でも離婚してないってことは、これって所謂仮面夫婦ってやつなのでは……?
「姫様が階段から転落されたのも、おそらく妊娠によるめまいかもしれませんね。悪い病気でもないので、記憶の方も経過観察になります」
「は、はあ……。あの本当に私、妊娠してるんですか?」
「ええ。お腹にハッキリと妊娠線が出ていますから」
「妊娠線?」
浴衣の寝巻きを着ていたので、襟元からお腹の方を覗いてみた。胸が邪魔して見えなかった。
昨日までまな板だったのに、巨乳になっている。
ちょっと気分があがった。違う、問題はそこじゃない。
「妊娠すると約五ヶ月目から下腹に妊娠線が浮かび上がってくるのですよ」
「……へぇー。なんかすっごい」
「一般的ですよ」
え、妊娠線出てくるとか聞いたことない。
とりあえず、曲直瀬道三さん的には妊娠は確実らしい。
「とりあえずお袖を呼びましょうか。女性同士の方が話しやすいこともありますからな」
よっこいしょ、と声を出し、何やら重そうな道具箱を持った曲直瀬道三さんは襖を開けて出て行く。
その襖も細かい模様が描かれていて、見るからに高そう。目が覚めたら、結婚してて、しかも妊婦になってたって展開が急すぎる。
私、一応結婚できる歳だけど、まだ大学生。まだまだ恋愛すらしてないし、結婚だって実感が湧かない。キスすらまだなはずなのに、いきなり妊娠。ねえ、こんなの無理だよ。
子供産むって、出来るわけないじゃん。
◇◇◇◇
何やら奇っ怪な事になった、と秀吉は頭を抱えた。天下統一成し遂げた猿顔のお爺さんは五十一歳になって重大な悩み事があった。
側室である茶々。結婚一年目にして、三十二歳年下の彼女がよく分からない。
結婚当初から夫婦仲は冷え切っていた。それはもう永久凍土並に。一応政略結婚だから、恋愛結婚と比べて熱々ではないだろうなとは秀吉自身も思ってはいたが、ここまで酷いとは予測していなかった。
当時の秀吉は五十歳。
長く一緒に暮らしていた正室・北政所はもちろん、大阪城には京極竜子、甲斐姫、摩阿姫、など十人程の側室が暮らしていましたが、他の女性は、豊臣秀吉の子供はできませんでした。
京極竜子は、豊臣秀吉の側室になる前に、結婚相手との間に三人の子供をもうけていましたが、豊臣秀吉の子を妊娠することはありませんでした。
でもほんと少しだけ、ほんのひと握りだけ、秀吉は期待していたのである。
それだけでなく、茶々の見た目は秀吉の好みど真ん中なのである。何よりも可愛い茶々が産んだ子を、自分が父親だと認めさえすれば、お市の方と言う織田信長系の血を継ぐ子が、豊臣家の跡継ぎになります。そうなれば、全国の大名はひれ伏し、自分の死後も豊臣家は安泰となるだろうと考えた。
「お袖と申します。関白様からは話は聞いています。姫様の侍女を務めております。これからもよろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそよろしくお願いします……」
秀吉さんと入れ替わるようにして入ってきたのは、中年のおばさん。
ちょっと小太りな所も、しわくちゃの顔をくしゃりと笑う所も、人懐こそうな雰囲気を出している。なんかいい人そう。
「ご懐妊おめでとうございます。関白殿下もさぞお喜びでしょう」
「いや、そんなことは……」
子供が出来るような心当たりが一度しかない、と秀吉さんは言っていた。
どう考えてもこれ歓迎ムードじゃないのは私でも分かる。
「……って、関白殿下?」
秀吉さんの呼称で引っかかった。お袖さんはニコニコと優しそうに笑っている。
「はい。秀吉殿下はこの国の関白様ですから」
「か……っ?!関白?!」
思わず目を見開いて驚く私に「あんまり興奮されては駄目ですよ」と馬をなだめるようにお袖さんは言った。
いや、関白ってそんな。
なんかすごく秀吉さんって、近所のお爺さんに呼び掛ける感じの雰囲気で話しかけちゃってたけど大丈夫?殺されない?
冷や汗がダラダラ流れ落ちる。ん?それじゃあ、私は?
「あれ?つまり妻の私って……?」
「ええ。秀吉殿下の側室、立派な妃様ですよ」
「へ、へえ~……」
目が泳ぐ。
私、ただの女中なんだけど……、なんかヤバくない?結構ヤバい地位にいるんじゃない?これ。
でも、関白の側室ってだけで何か特別なことは……あるか、それにしても、わざわざ側室なんて言葉が出てきたんだろ……。
「……側室って、ただの妾って感じなんですかね?」
「いえ、側室は正式な妻であり、側室は全ての意向に従うようになっています」
「お……おう……」
なんか凄いよく分からないシステムが出てきた……。後宮での女の泥仕合的な臭いがプンプンする。
あれだね!これは関わらない方がいい話だね!
私いつの間にか側室になってるし、妊娠もしてるから、関わらない方が難しそうだけど!
貧乏人は一夫一婦制が当たり前の私にとっては、一夫多妻制……受け入れられそうにない。
離婚出来ないかな。完全にドン引きしてしまった私の様子を何か勘違いしたのか、お袖さんが心配そうに覗き込んでくる。
「色々な事があったばかりでお疲れになられましたか?ただでさえ大事なお身体なのですから、あまりご無理はなさらないで下さい」
「へっ、……あ、いや、全然大丈夫です!」
慌てて両手を振る。むしろよく寝て快調。普通に布団から出て動き回りたい。
「身体はもう何ともないので、動きたいなって感じです」
階段から落ちて頭打っていたくらいだから、許されるかな~っと、ダメ元で聞いてみた。けれど、お袖さんはあっさり頷いてくれる。
「あまり長時間でなければいいですよ。姫様は茶道がお好きでしたから、茶室にでも参りますか?」
お袖さんの提案に私は思わず固まった。
……あれ、私ってば茶道好きだったの?
初耳なんですけど。と言うより、濃茶の作法が思い出せないのですけどね。
それに、濃茶なんて苦くて、薄茶以外無理、好きじゃない、むしろ茶道とか考えられないと……、茶室行きを断ろうとして、ふと思いつく。
意外と些細な切っ掛けで、抜けてしまった記憶を思い出せるかもしれない、と。
「……それじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「ええ、勿論ですとも。この子も連れて行きましょうね」
お袖さんは何度も頷いて、両手で庭先の土鍋の中から何かを引きずり出す。
「……猫?」
「ええ、姫様が可愛がっておられます。小虎ちゃんです」
随分とふてぶてしそうな猫だ。目付きがとても悪くて、不機嫌なのか眉間に皺を寄せている。
長毛種、だっけ?あんまり猫には詳しくないのだけれど、茶色とこげ茶で毛が長かった。そしてかなり重量のありそうな見た目をしている。要するに、かなりおデブ猫。
「大丈夫です。病気は何も持っておりません」
「いや、そうじゃなくて……かなり不健康そうだなあ……って」
「ええ。姫様と関白殿下がよくおやつをあげていらっしゃいますので」
「マジか」
何やってんだ茶々様……、このどっしり体型はどう考えても不健康極まりない。猫に申し訳がない。
「よし!小虎ちゃんを今日から瘦せさせましょう、お袖さん!」
「はい。かしこまりました」
拳を握り締めた私に、お袖さんはニコニコと穏やかに微笑んだ。
城の中に茶室があるって一体どういう事なのだろうか。
金持ちだ、金持ちだとは思っていたけれど、まさか部屋の中が金ぴか。窓に面していない壁は天井まで金ぴか。
しかも、高そうな掛け軸に茶道具が置かれていた。
あんぐりと口を大きく開ける私を、お袖さんは室内に置かれていた釜の前へと案内する。
秀吉さん、関白様っていってたもんね……。やっぱり関白様が住むところって違うなあ……。
室内を見渡したけれど、私の記憶にあるものは何もない。やっぱりそうだよね……、自分が茶道しているイメージなんて湧かないもん。
ぼーとしていると、私の手の甲に誰かの手が覆いかぶさった。骨ばった、私より少し大きいしわしわの手。私の手が収まってしまう、男の人の手。一瞬心臓が音を立てて軋んだ。
前にも見た覚えがある。暗い場所で。でも一体どこで?そんな記憶はどこにもない。一度も体験した事がないはずなのに。どこか既視感あるその光景に、私は焦った。
急いで死ななければ、死ななければいけない。手遅れにならないうちに、急いで死ななければ。
どんな方法を使っても。気がついたらその手を振り払っていた。声なき悲鳴と共に。
手を振り払って、その人から距離を取る。少しだけよろめいたけれど、近くにいたお袖さんが支えてくれた。
「……って、秀吉さん?!」
顔を上げると秀吉さんが眉間に皺を寄せて、私に振り払われた手を見ていた。
……というか、手!手が触れちゃったんですけど、物凄い憎悪。茶々さんの記憶、おぞましい嫌悪感。魂を押し殺した。私のなかの闇の部分だ。どうやら、茶々さんが心を殺した。その体に私の魂が住み着いた?
「……すまない。驚かせた」
「えっ、あっ、こちらこそごめんなさいっ!振り払っちゃって……!」
「いや、いい。こちらこそ不用意だった。……だが、危なっかしいから思わず手が出てしまった。貴女の身体は一人ではない。大事にしろ。お袖もいるのだし、もっと周囲を頼れ」
……な、なんか、凄い小言を言われてる。
「あ!そうでした!実は、濃茶の作法が思い出せないのです」
「……なに?」
■■■■…………
秀吉は思い返していた。五か月前に祝言を上げた後、茶々の部屋に行き床入りの前に秀次に貰った水饅頭を食べた。すると疲労がとれて、久々に下半身が元気に力が漲った。
「うーーん」確かに身に覚えがある。
しかし、秀吉は茶々に拒否された覚えの方が記憶に残っている。流石に夫婦の営みは避けては通れないと分かっていたらしく、すっかり臆病になってしまっそれを初夜は無理やり…。
それ以来、ろくに口も訊かないほど、儂が触れると嫌がる。本気で拒絶する。自らを拒絶する人間に対して、進んで接触するのは気が重い。そして、更に妻である彼女に嫌われるのは避けたかった。
しかし、久しぶりに茶々元に行けば、目の前で階段から転落された。流石に肝を冷やした。
それだけではない。妊娠していた事も驚きだったが、頭を打ったせいか茶々が一変していた。
いつの間にか年が変わり、天正十七年の元日に秀吉が足利義昭・織田信雄・織田秀信・羽柴秀長・宇喜多秀家ら諸大名および公家衆が大坂城に出仕させ、新年祝賀の太刀進上を受けた。
そして、一月十日に秀吉が入京、三日後に参内して歳首を賀し、秀長に淀城を改修して、茶々の産所としました。そのため、茶々様はこののち淀殿と呼ばれるようになった。
やがて、別荘に戻ると、何者かに女中のお菊が殺害されていて、ご主人が激怒していた。
□□□□…………茶々(お菊)
「おめでとうございます。姫様はご懐妊されています」
起きたら白髪頭の知らない男前のお爺さんにそう言われた。
……え、誰?
「ほ、本当か……?!嘘を言っているんじゃないだろうな?!」
優しそうな男前のお爺さんに詰め寄ったのは、猿みたいな爺さんが派手な着物を着ている。
……え、こっちも誰?
「何故嘘をつく理由があるのですか?素直に喜んではいかがですかな?」
猿顔のお爺さんが眉を寄せて、険しい顔付きで男前を見る。男前はその剣幕にたじろいだ様だったが、やや困惑した顔つきで私とお爺さんを見比べて断言した。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
指名された私は、布団に横になったまま恐る恐る手を挙げる。
「あの~、すみません。ちょっと、いいですか?」
「なんだ?」
眉間に皺を寄せて威圧的に見てくる男前。顔が良いと迫力あるなあと、どうでもいい事を考えながら、私はずっと思っていた疑問を口にした。
「あの、お二人共、どちら様ですかね?」
「……は?」
「姫様?」
白髪のお爺さんはお医者さんらしい。
名は曲直瀬道三。かっこいいけど、八十を一つ越えてるそうだ。
顔はしわくちゃだけれど、鼻筋は通っていて、若い頃はさぞかし男前だったんだろうなあって予想できる。
それで猿顔のお爺さんは、秀吉さん。にこやかにしていたらいいのに、ずっと険しい顔つきで腕組みをしている。
何回か曲直瀬道三さんとやり取りした結果、難しい顔で結論を出した。
「……記憶が、混濁されている可能性があります」
いや、全くそんな事ないんだけど……。
菊という自分の名前も、しっかり覚えている。
そこまでは思い出せるのに、この状況も曲直瀬道三さんと秀吉さんの記憶は全くない。
むしろ本当に会ったことある?って感じ。だって、二人共小柄で彫の浅い顔立ちだし、着物姿の人との関わりなんて今まで一切なかったんだもの。
内心、道三さんの言葉を否定してみるけど、正直ここがどこだかもよく分かっていない。
そして、衝撃な事が一つ。
何故か菊から、浅井茶々という名前に変わっていた。
……え、私いつの間にこの名前にしたの?
黙って見ていた秀吉さんが口を開いた。
「演技という可能性はないのか?」
「姫様は階段から落ちた際、頭を強く打っておられるのですよね?」
「そうだ。儂の目の前で右の側頭部と上体から床に落下していた。侍女のお袖も目撃している」
「でしたら、一時的に記憶が混濁されている可能性は充分にあります。処方出来る薬はありませんし、経過観察になるかと」
秀吉さんは顎に手をあてて考え込む。
考え込んでいたけれど、結論が出なかったのか深々と溜め息をついた。
「……そうか。だが、私は演技という可能性を捨てたわけではない。茶々自身の受け答えがしっかりしているからな。道三、しっかり見極めろ」
「はい」
お爺さん先生に偉そうに言った秀吉さんは、今度は私を視界に映した。冷たい雰囲気を持つ彼に見られて、自然と背筋が伸びる。
「貴女も自分一人の身体ではないからな。気を付けろ」
なんか私にもすごく偉そうに言ってきたのだけれど、気圧されて頷いた。
秀吉さんは堂々と部屋から出て行った。すごいな、関白だから様になっている。
そして、ずっと私は疑問に思ってたんだけど……。
「曲直瀬道三さん。ここ、どこですか?」
この京都御所みたいに豪華な部屋、一体どこなんだろうか?
「ここは関白様の所有するお城ですぞ。、山城国久世郡淀にあり、桂川と宇治川の合流点に挟まれた納所に立地しております」
「へえ、山城国久世郡淀。……全然知らないや。」
「はははは。山城国は日ノ本の中心ですぞ。やはり少し記憶が混濁されている可能性がありますな」
…………おかしい。おかしくない?
さすがに日本の中心は京の都は覚えている。というか、山城国ってなに?
記憶が混濁していると結論付けられちゃったんだけど、これってもしかして何を言っても記憶が云々って話になってしまうの?
「……っていうか、ここ関白様のお家だったんですね」
家具とかがクラシックに纏めているのに、掛け軸の掛かった床の間が金色だったり、そこまで華美でない天井が二段になっていたり、今寝てる布団なんか絹織物だし……、これ、素人目から見ても分かる。絶対にお金かかってる。
秀吉さん、絶対金持ちだ……。猿顔なのにお金持ちって、多少不細工でもモテるわ……。
床の間の壺の価値は全く分からないけど。
「関白様のお屋敷であると共に、茶々様のお屋敷でもありますよ」
「え、私の?!なんで?!」
「それは勿論、関白様と茶々様はご夫婦でいらっしゃいますからな」
一瞬、部屋に沈黙が訪れた。
……え?夫婦?
……あの猿顔の爺さんと?
私、めちゃくちゃ平均的な日本人顔なんだけど、隣並んだら違い過ぎない?
「……えっ、夫婦?」
「そうですよ」
にこにこと穏やかな笑みを浮かべる曲直瀬道三さん。
どう見ても冗談を言っているような雰囲気ではない。……雰囲気ではないんだけど、私、いつの間に結婚してたの?
というか、夫婦なのに子供が出来る心当たり一回しかないって……。秀吉さんの態度を見ても、どうやら夫婦仲はそんなに良くないみたいだし。
でも離婚してないってことは、これって所謂仮面夫婦ってやつなのでは……?
「姫様が階段から転落されたのも、おそらく妊娠によるめまいかもしれませんね。悪い病気でもないので、記憶の方も経過観察になります」
「は、はあ……。あの本当に私、妊娠してるんですか?」
「ええ。お腹にハッキリと妊娠線が出ていますから」
「妊娠線?」
浴衣の寝巻きを着ていたので、襟元からお腹の方を覗いてみた。胸が邪魔して見えなかった。
昨日までまな板だったのに、巨乳になっている。
ちょっと気分があがった。違う、問題はそこじゃない。
「妊娠すると約五ヶ月目から下腹に妊娠線が浮かび上がってくるのですよ」
「……へぇー。なんかすっごい」
「一般的ですよ」
え、妊娠線出てくるとか聞いたことない。
とりあえず、曲直瀬道三さん的には妊娠は確実らしい。
「とりあえずお袖を呼びましょうか。女性同士の方が話しやすいこともありますからな」
よっこいしょ、と声を出し、何やら重そうな道具箱を持った曲直瀬道三さんは襖を開けて出て行く。
その襖も細かい模様が描かれていて、見るからに高そう。目が覚めたら、結婚してて、しかも妊婦になってたって展開が急すぎる。
私、一応結婚できる歳だけど、まだ大学生。まだまだ恋愛すらしてないし、結婚だって実感が湧かない。キスすらまだなはずなのに、いきなり妊娠。ねえ、こんなの無理だよ。
子供産むって、出来るわけないじゃん。
◇◇◇◇
何やら奇っ怪な事になった、と秀吉は頭を抱えた。天下統一成し遂げた猿顔のお爺さんは五十一歳になって重大な悩み事があった。
側室である茶々。結婚一年目にして、三十二歳年下の彼女がよく分からない。
結婚当初から夫婦仲は冷え切っていた。それはもう永久凍土並に。一応政略結婚だから、恋愛結婚と比べて熱々ではないだろうなとは秀吉自身も思ってはいたが、ここまで酷いとは予測していなかった。
当時の秀吉は五十歳。
長く一緒に暮らしていた正室・北政所はもちろん、大阪城には京極竜子、甲斐姫、摩阿姫、など十人程の側室が暮らしていましたが、他の女性は、豊臣秀吉の子供はできませんでした。
京極竜子は、豊臣秀吉の側室になる前に、結婚相手との間に三人の子供をもうけていましたが、豊臣秀吉の子を妊娠することはありませんでした。
でもほんと少しだけ、ほんのひと握りだけ、秀吉は期待していたのである。
それだけでなく、茶々の見た目は秀吉の好みど真ん中なのである。何よりも可愛い茶々が産んだ子を、自分が父親だと認めさえすれば、お市の方と言う織田信長系の血を継ぐ子が、豊臣家の跡継ぎになります。そうなれば、全国の大名はひれ伏し、自分の死後も豊臣家は安泰となるだろうと考えた。
「お袖と申します。関白様からは話は聞いています。姫様の侍女を務めております。これからもよろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそよろしくお願いします……」
秀吉さんと入れ替わるようにして入ってきたのは、中年のおばさん。
ちょっと小太りな所も、しわくちゃの顔をくしゃりと笑う所も、人懐こそうな雰囲気を出している。なんかいい人そう。
「ご懐妊おめでとうございます。関白殿下もさぞお喜びでしょう」
「いや、そんなことは……」
子供が出来るような心当たりが一度しかない、と秀吉さんは言っていた。
どう考えてもこれ歓迎ムードじゃないのは私でも分かる。
「……って、関白殿下?」
秀吉さんの呼称で引っかかった。お袖さんはニコニコと優しそうに笑っている。
「はい。秀吉殿下はこの国の関白様ですから」
「か……っ?!関白?!」
思わず目を見開いて驚く私に「あんまり興奮されては駄目ですよ」と馬をなだめるようにお袖さんは言った。
いや、関白ってそんな。
なんかすごく秀吉さんって、近所のお爺さんに呼び掛ける感じの雰囲気で話しかけちゃってたけど大丈夫?殺されない?
冷や汗がダラダラ流れ落ちる。ん?それじゃあ、私は?
「あれ?つまり妻の私って……?」
「ええ。秀吉殿下の側室、立派な妃様ですよ」
「へ、へえ~……」
目が泳ぐ。
私、ただの女中なんだけど……、なんかヤバくない?結構ヤバい地位にいるんじゃない?これ。
でも、関白の側室ってだけで何か特別なことは……あるか、それにしても、わざわざ側室なんて言葉が出てきたんだろ……。
「……側室って、ただの妾って感じなんですかね?」
「いえ、側室は正式な妻であり、側室は全ての意向に従うようになっています」
「お……おう……」
なんか凄いよく分からないシステムが出てきた……。後宮での女の泥仕合的な臭いがプンプンする。
あれだね!これは関わらない方がいい話だね!
私いつの間にか側室になってるし、妊娠もしてるから、関わらない方が難しそうだけど!
貧乏人は一夫一婦制が当たり前の私にとっては、一夫多妻制……受け入れられそうにない。
離婚出来ないかな。完全にドン引きしてしまった私の様子を何か勘違いしたのか、お袖さんが心配そうに覗き込んでくる。
「色々な事があったばかりでお疲れになられましたか?ただでさえ大事なお身体なのですから、あまりご無理はなさらないで下さい」
「へっ、……あ、いや、全然大丈夫です!」
慌てて両手を振る。むしろよく寝て快調。普通に布団から出て動き回りたい。
「身体はもう何ともないので、動きたいなって感じです」
階段から落ちて頭打っていたくらいだから、許されるかな~っと、ダメ元で聞いてみた。けれど、お袖さんはあっさり頷いてくれる。
「あまり長時間でなければいいですよ。姫様は茶道がお好きでしたから、茶室にでも参りますか?」
お袖さんの提案に私は思わず固まった。
……あれ、私ってば茶道好きだったの?
初耳なんですけど。と言うより、濃茶の作法が思い出せないのですけどね。
それに、濃茶なんて苦くて、薄茶以外無理、好きじゃない、むしろ茶道とか考えられないと……、茶室行きを断ろうとして、ふと思いつく。
意外と些細な切っ掛けで、抜けてしまった記憶を思い出せるかもしれない、と。
「……それじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「ええ、勿論ですとも。この子も連れて行きましょうね」
お袖さんは何度も頷いて、両手で庭先の土鍋の中から何かを引きずり出す。
「……猫?」
「ええ、姫様が可愛がっておられます。小虎ちゃんです」
随分とふてぶてしそうな猫だ。目付きがとても悪くて、不機嫌なのか眉間に皺を寄せている。
長毛種、だっけ?あんまり猫には詳しくないのだけれど、茶色とこげ茶で毛が長かった。そしてかなり重量のありそうな見た目をしている。要するに、かなりおデブ猫。
「大丈夫です。病気は何も持っておりません」
「いや、そうじゃなくて……かなり不健康そうだなあ……って」
「ええ。姫様と関白殿下がよくおやつをあげていらっしゃいますので」
「マジか」
何やってんだ茶々様……、このどっしり体型はどう考えても不健康極まりない。猫に申し訳がない。
「よし!小虎ちゃんを今日から瘦せさせましょう、お袖さん!」
「はい。かしこまりました」
拳を握り締めた私に、お袖さんはニコニコと穏やかに微笑んだ。
城の中に茶室があるって一体どういう事なのだろうか。
金持ちだ、金持ちだとは思っていたけれど、まさか部屋の中が金ぴか。窓に面していない壁は天井まで金ぴか。
しかも、高そうな掛け軸に茶道具が置かれていた。
あんぐりと口を大きく開ける私を、お袖さんは室内に置かれていた釜の前へと案内する。
秀吉さん、関白様っていってたもんね……。やっぱり関白様が住むところって違うなあ……。
室内を見渡したけれど、私の記憶にあるものは何もない。やっぱりそうだよね……、自分が茶道しているイメージなんて湧かないもん。
ぼーとしていると、私の手の甲に誰かの手が覆いかぶさった。骨ばった、私より少し大きいしわしわの手。私の手が収まってしまう、男の人の手。一瞬心臓が音を立てて軋んだ。
前にも見た覚えがある。暗い場所で。でも一体どこで?そんな記憶はどこにもない。一度も体験した事がないはずなのに。どこか既視感あるその光景に、私は焦った。
急いで死ななければ、死ななければいけない。手遅れにならないうちに、急いで死ななければ。
どんな方法を使っても。気がついたらその手を振り払っていた。声なき悲鳴と共に。
手を振り払って、その人から距離を取る。少しだけよろめいたけれど、近くにいたお袖さんが支えてくれた。
「……って、秀吉さん?!」
顔を上げると秀吉さんが眉間に皺を寄せて、私に振り払われた手を見ていた。
……というか、手!手が触れちゃったんですけど、物凄い憎悪。茶々さんの記憶、おぞましい嫌悪感。魂を押し殺した。私のなかの闇の部分だ。どうやら、茶々さんが心を殺した。その体に私の魂が住み着いた?
「……すまない。驚かせた」
「えっ、あっ、こちらこそごめんなさいっ!振り払っちゃって……!」
「いや、いい。こちらこそ不用意だった。……だが、危なっかしいから思わず手が出てしまった。貴女の身体は一人ではない。大事にしろ。お袖もいるのだし、もっと周囲を頼れ」
……な、なんか、凄い小言を言われてる。
「あ!そうでした!実は、濃茶の作法が思い出せないのです」
「……なに?」
■■■■…………
秀吉は思い返していた。五か月前に祝言を上げた後、茶々の部屋に行き床入りの前に秀次に貰った水饅頭を食べた。すると疲労がとれて、久々に下半身が元気に力が漲った。
「うーーん」確かに身に覚えがある。
しかし、秀吉は茶々に拒否された覚えの方が記憶に残っている。流石に夫婦の営みは避けては通れないと分かっていたらしく、すっかり臆病になってしまっそれを初夜は無理やり…。
それ以来、ろくに口も訊かないほど、儂が触れると嫌がる。本気で拒絶する。自らを拒絶する人間に対して、進んで接触するのは気が重い。そして、更に妻である彼女に嫌われるのは避けたかった。
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