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ボーンネルの開国譚
第三話 シュレールの森
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ジンは家に戻るとロードを手に取る。
(ジン、戦いに行くのかい?)
ジンの『意思のある武器』であるロードがそうジンに語りかけた。
(うん、クレースが心配でね。もし何かあったら嫌だから、力を借りるね)
(わかった、任せて)
「バウっ!」
ガルも乗り気だ。そうしてロードを手に取るとジンは真剣な面持ちでガルとロードとシュレールの森に向かった。
シュレールの森に到着すると牙蜘蛛というBランクの魔物が七体倒れており、血のついた刀を地面に突き刺して真剣な顔をしたクレースが立っていた。
クレースの持つ刀は『威雷』という名でクレースと契約をしている『意思のある武器』である。そしてクレースはジンがきたのに気づくと大きく目を見開いて駆け寄ってきた。
「ど、どうしてここにいる、危ないから早く帰ろう」
クレースは心配そうにジンに怪我がないかを確認した。傍から見ればクレースのジンに対する態度は過保護と思われるかもしれない。しかしクレースのジンに対する愛は本物なのだ。だからこれほどまでに過保護になってしまう。
シュレールの森から帰ると、二人でゼフの鍛冶場に集まり会話をしていた。
「本当にいたね、Bランクがあんなに」
「ああ、でも牙蜘蛛は本来竜の草原にいる魔物だろう。問題はなぜボーンネル領にまで入ってきたかだな」
竜の草原はボーンネル領の西にあり、竜の草原とボーンネルがシュレールの森を挟む形になっている。普段は竜の草原から魔物が流れ込んでくることなどほとんどないのだ。
「まあ、今考えてもどうにもならん。このことはまた考えよう。それより前にした話は考えてくれたか?」
そうクレースは真剣な顔で聞いてきた。クレースが以前相談してきたことは至って単純だが、実際にやるとなればかなり大変なことだ。ボーンネルには現在、国を治める王が存在しておらず多種族がそれぞれの地域で別々に暮らしている。そしてクレースはこの国をまとめ上げて私に王様になれというのだ。
「うーん、なんというかあまり気が進まないなあ。どうして王様が必要なの?」
「このまま王がいなければ異種族間での争いがさらに多発する。現に争いが起こっている地域もあるしな……それに私は、ジンの下につくこと以外は考えられん」
「でも私は人の上に立つのは嫌だな。私はさ、みんなが種族も身分も関係なく同じ一本の線に並んで仲良く暮らしていくのが夢なんだ」
私の言葉を聞いてクレースは優しく笑った。
「そうか、正直なところジンならそういうとわかっていたがな。だが今の言葉を聞いて確信した。ジン、この国の王足り得るのはお前しかいない。そのために、私はずっとお前の側にいる」
クレースは真剣に私の瞳を見つめる。
······私は、クレースのことが大好きだ。クレースだけじゃなく、ゼフじいもガルもここにいるみんなが。
クレースは、いつも私を信頼する目で見てくれる。だから私は彼女の愛を、ありったけの信頼で返したい。
「私はクレースを信じるよ、今までもこれからも」
「そういってくれて嬉しい」
今度は安心したようにクレースはまた優しく笑いかけた。
(そう、それがジン。私の命よりも大事な存在。
私はいつまでもジンを愛している。
そして私はジンを信じ続ける。
お前はいずれ、王となる)
クレースはなんの疑いもなくただそれを確信していた。
ー翌日。
ジンはクレースと一緒にゼフの鍛冶場に向かった。
「ジンと朝からデートとはなぁ、えへへぇ」
クレースはいつものようにジンにだけデレっデレの姿を見せる。
「変なこと言わないの、早く行くよ」
そして鍛冶場に着くと、昨日話した事の次第をゼフに詳しく説明した。
「······ということなんだ」
「そうか······」
ゼフじいは私の話に静かに頷きながらゆっくりと聞いてくれた。そしてしばらく考え込むと口を開いた。
「わしはジンが決めたなら一向に構わん」
そういつもの頼りがいのある声で力強く言ってくれた。
「ただ一つ言うのなら、ひとりで王になろうとはするな。
たった一人の力で王になろうとする者は狂王が成れの果てだ。実際にそういうものがいたからな······
皆と共に成長し、皆を頼り、皆に頼られるのが本来王のあるべき姿だ」
ゼフから発せられるその言葉はジンの心の奥深くまで響くほどに重みのある言葉だった。
「どうも最近シュレールの森のエルフが魔物に苦戦しているとインフォル聞いたぞ。まずはそこに行ってきたらどうだ?」
「そうか、エルフがか。確かにBランクの魔物はかなりの数いたからな」
「じゃあ行こうクレース」
「ああ、その代わりトキワの奴も連れて行こう。あいつはあんなだが腕は確かだからな」
その時、トキワが慌てて鍛冶場に入ってきた。
「シュレールの森で火事だっ!サラマンダーがでたらしい」
「何!? サラマンダーはAランクだろ」
クレースはジンと一緒に行こうとしたがジンの姿はすでになかった。
「ジンは!?」
「いつの間に」
めずらしく焦るゼフをみてトキワは直感的にやばいと感じた。
そして二人はそれぞれ武器を手に取るとシュレールの森に急いだ。
(ジン、戦いに行くのかい?)
ジンの『意思のある武器』であるロードがそうジンに語りかけた。
(うん、クレースが心配でね。もし何かあったら嫌だから、力を借りるね)
(わかった、任せて)
「バウっ!」
ガルも乗り気だ。そうしてロードを手に取るとジンは真剣な面持ちでガルとロードとシュレールの森に向かった。
シュレールの森に到着すると牙蜘蛛というBランクの魔物が七体倒れており、血のついた刀を地面に突き刺して真剣な顔をしたクレースが立っていた。
クレースの持つ刀は『威雷』という名でクレースと契約をしている『意思のある武器』である。そしてクレースはジンがきたのに気づくと大きく目を見開いて駆け寄ってきた。
「ど、どうしてここにいる、危ないから早く帰ろう」
クレースは心配そうにジンに怪我がないかを確認した。傍から見ればクレースのジンに対する態度は過保護と思われるかもしれない。しかしクレースのジンに対する愛は本物なのだ。だからこれほどまでに過保護になってしまう。
シュレールの森から帰ると、二人でゼフの鍛冶場に集まり会話をしていた。
「本当にいたね、Bランクがあんなに」
「ああ、でも牙蜘蛛は本来竜の草原にいる魔物だろう。問題はなぜボーンネル領にまで入ってきたかだな」
竜の草原はボーンネル領の西にあり、竜の草原とボーンネルがシュレールの森を挟む形になっている。普段は竜の草原から魔物が流れ込んでくることなどほとんどないのだ。
「まあ、今考えてもどうにもならん。このことはまた考えよう。それより前にした話は考えてくれたか?」
そうクレースは真剣な顔で聞いてきた。クレースが以前相談してきたことは至って単純だが、実際にやるとなればかなり大変なことだ。ボーンネルには現在、国を治める王が存在しておらず多種族がそれぞれの地域で別々に暮らしている。そしてクレースはこの国をまとめ上げて私に王様になれというのだ。
「うーん、なんというかあまり気が進まないなあ。どうして王様が必要なの?」
「このまま王がいなければ異種族間での争いがさらに多発する。現に争いが起こっている地域もあるしな……それに私は、ジンの下につくこと以外は考えられん」
「でも私は人の上に立つのは嫌だな。私はさ、みんなが種族も身分も関係なく同じ一本の線に並んで仲良く暮らしていくのが夢なんだ」
私の言葉を聞いてクレースは優しく笑った。
「そうか、正直なところジンならそういうとわかっていたがな。だが今の言葉を聞いて確信した。ジン、この国の王足り得るのはお前しかいない。そのために、私はずっとお前の側にいる」
クレースは真剣に私の瞳を見つめる。
······私は、クレースのことが大好きだ。クレースだけじゃなく、ゼフじいもガルもここにいるみんなが。
クレースは、いつも私を信頼する目で見てくれる。だから私は彼女の愛を、ありったけの信頼で返したい。
「私はクレースを信じるよ、今までもこれからも」
「そういってくれて嬉しい」
今度は安心したようにクレースはまた優しく笑いかけた。
(そう、それがジン。私の命よりも大事な存在。
私はいつまでもジンを愛している。
そして私はジンを信じ続ける。
お前はいずれ、王となる)
クレースはなんの疑いもなくただそれを確信していた。
ー翌日。
ジンはクレースと一緒にゼフの鍛冶場に向かった。
「ジンと朝からデートとはなぁ、えへへぇ」
クレースはいつものようにジンにだけデレっデレの姿を見せる。
「変なこと言わないの、早く行くよ」
そして鍛冶場に着くと、昨日話した事の次第をゼフに詳しく説明した。
「······ということなんだ」
「そうか······」
ゼフじいは私の話に静かに頷きながらゆっくりと聞いてくれた。そしてしばらく考え込むと口を開いた。
「わしはジンが決めたなら一向に構わん」
そういつもの頼りがいのある声で力強く言ってくれた。
「ただ一つ言うのなら、ひとりで王になろうとはするな。
たった一人の力で王になろうとする者は狂王が成れの果てだ。実際にそういうものがいたからな······
皆と共に成長し、皆を頼り、皆に頼られるのが本来王のあるべき姿だ」
ゼフから発せられるその言葉はジンの心の奥深くまで響くほどに重みのある言葉だった。
「どうも最近シュレールの森のエルフが魔物に苦戦しているとインフォル聞いたぞ。まずはそこに行ってきたらどうだ?」
「そうか、エルフがか。確かにBランクの魔物はかなりの数いたからな」
「じゃあ行こうクレース」
「ああ、その代わりトキワの奴も連れて行こう。あいつはあんなだが腕は確かだからな」
その時、トキワが慌てて鍛冶場に入ってきた。
「シュレールの森で火事だっ!サラマンダーがでたらしい」
「何!? サラマンダーはAランクだろ」
クレースはジンと一緒に行こうとしたがジンの姿はすでになかった。
「ジンは!?」
「いつの間に」
めずらしく焦るゼフをみてトキワは直感的にやばいと感じた。
そして二人はそれぞれ武器を手に取るとシュレールの森に急いだ。
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