ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

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ジンとロードの過去編

第十話 紡がれた想い

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「あれ、なんで私、泣いてるの·····それに何も思い出せない」

メルティはいつの間にか目に涙を浮かべ、言葉にできない喪失感に襲われながらも涙を拭く。メルティの記憶からは完全にフィリアの記憶が消えてしまったのだ。

そしてそれはジンも同じであった。しかしその急激な喪失感と入れ替わるようにしてロードがまるで当然の如くジンの武器に宿ったのだ。

(······君は?)

(僕はロード。ジン、僕は君を助けに来たんだ)

ロードのその声にジンはなぜか懐かしさと安心感を感じた。

(ロード······何故かわからないけど私は前に一度君と出会った気がする)

(······!)

その言葉にロードも自分の意思が必死に何かを伝えようとしているのを感じる。

(どうして、私のことを知ってるの?)

(どうしてか僕の胸に初めから君だけがいたんだ······僕の意思が君を絶対に放してはいけないってそう言ってるんだ。だからジン、君には僕の全てをあげる)

そしてジンの武器は『意思のある武器』へと進化する。ロードが宿ったジンの武器は白く光り輝きまるで全てを切り裂いてしまうような美しい刃がそこに姿を現す。

「貴様、何をしたッ!!」

本能的に危険を感じたヘルメスは灼熱のブレスを吐き出す。それが放たれただけで辺りの温度は急激に上昇し、人の肉体が簡単に溶けてしまうほどの熱量を持った強烈なブレスはジンの元へ一瞬で辿り着く。

「「!!」」

しかしそのブレスは辺りの草原を焼きつくすことなく静かに振り下ろされたジンの一振りでかき消される。そしてそのあり得ない光景にケルスタイトとヘルメスは目を見張る。

(すごい、思った通りの一撃が入る。まるで考えてたことが現実になるみたい)

「今ならいける。いくよ、ロード」

(うん!)

ロードはただその一言に心が満たされる。ずっと待ち望んだようなその言葉にロードの意思が幸せの悲鳴をあげていた。

(ああ、幸せだ。まるでこの一言のために、ジンを幸せにするために僕は生まれてきた気がする)

「ハアァッ!!」

(ーあの硬い鱗を切り裂いて)

「バカがッ! 意思が宿ったところでそんな矮小なお前に何ができる!!」

そして斬撃を加えようとするジンを上から覇気のある顔で睨め付け、巨大な口に膨大な魔力を凝縮させる。

「おいヘルメス! 俺までやる気か!!」

「黙れ、今はそんなことどうでもいいわッ!」

そしてその口には魔力の凝縮に伴い真っ黒な玉が禍々しい渦を纏いながら威力を増していく。その玉は辺りの空気の気流を変化させ地面までもがそこに吸い込まれるように剥がれて吸い込まれていく。

「アビス・グラビティッッ(深淵の重力)」

その一撃はまるでブラックホールのようで辺りの空気までを吸い込むようにして魔力を帯び進んでいく。

「ありがとうロード。今の私ならもう何も怖くない」

そして全てを呑み込むようなその球体を前にジンは優しくロードを握った。

(ー私には分かる。きっとロードとのこの出会いは誰かが紡いでくれたものなんだ。繋いでくれたその存在が確かにあったんだ)

その思いは確かに剣を通じてロードに伝わりそれに応えるかのように絶対的な意思の強さがが武器全体を優しく包み込む。

「死ねぇええッ!!!」

(ありがとう、きっとあなたはこの胸にいるあたたかいこの存在なんだ)

ジンは胸に手を当てその決して手放したくない何かをギュッと胸の奥に押し込んだ。

「ロード・オブ・エクス(約束の王)!!」

その一撃はアビス・グラビティにぶつかると同時に白い光で全てを包み込んでいく。先ほどまで全てを吸い込んでいたその球体は白い光を吸い込もうとするが、抗えずに逆に吸い込まれていく。そして威力が殺され全てを呑み込んでいたはずのその球体は完全に白い光に呑み込まれた。

そしてジンの全力の一撃に応えるかのようにガルも雷を纏った爆風を発生させる。その雷は爆風と威力を殺し合うこともなく、ただ絶妙に混ざり合い威力を増していく。

「これで······終わらせるッ!!」

ジンとガルは驚く眼前の敵に同時に剣と牙を向ける。

「俺の鱗は破れんわ! 終わるのはお前たちだ!!」

ヘルメスは恐れることなくその一撃を鱗で受け止めようとする。そしてケルスタイトもガルの発動させた暴風から身を守るように全身を魔力で覆って最短距離でガルに詰めていく。

しかしヘルメスの漆黒の鱗にはロードが触れた瞬間先ほどの硬さが嘘だったかのようにヒビが広がっていき、ケルスタイトも傷の再生が雷によりかき消される。

「紡いでくれたこの想い分の力をッ、きっとあなたは私の中でずっと生き続けてくれているから」

そしてその強烈な一撃に二体の獣はバタンッと大きな音を辺りに響かせて同時に背中から倒れ込み、完全に意識を失った。

「やっ······たね、ガル」

そしてジンも再び小さくなったガルのふんわりとした毛並みにバフりと倒れ込んだのであった。
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