ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

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ボーンネルの開国譚2

二章 第一話 果樹園でのひと時

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しばらく寝室でゆっくりとしていると、ドアがバタンと大きな音を立てて開いた。

「ジン、やっと見つけた」

パールはジンを見つけると嬉しそうな顔をして近づいてきた。

「あっパール、どうしたの?」

「なんでもな~い」

そう言ってパールはジンに抱きついてきた。少し離れただけで寂しくなったのだ。

「パール、外行こっか。多分今もみんな作業してるから」

「うん!」

パールと外に出てしばらく歩くと、未だに建設が進行していた。そこでクレースは昨日ボコボコにしたトキワたち覗き魔一行を奴隷のように働かせていたのだ。頭がなくなったはずのコッツはいつの間にか元の姿に戻って一緒に肉体労働をさせられ、そしてゾンビのようになったヴァンはジンを見つけると救いを求めるように話しかけてくる。

「ジン······助けてくれ。 俺······死んじまう」

「う、うん、みんな一回休もうか」

その声を聞いてヴァンたちはパアっと顔を輝かせて同時にその場に倒れ込んだ。

「ジン、果樹園とリラックススペースはデキタヨ」

「本当!?」

ボルが指さした方向には丸文字で書かれた『憩いの場』という看板がかかっていた。そしてそのすぐ近くにはボルが外装から内装まで全ての設計を手がけた立派で洒落た果樹園が立っていたのだ。

「エルフのみんなが果樹園で取れた果実を使った飲み物を出してクレル。一度行ってミテ」

「うん、そうするね!」

そして一度クレースたちと一緒に果樹園に入ってみることにした。

「すごぉお」

パールは果樹園を見ると感嘆の声を上げる。果樹園では多種類のリンゴの木の他にも明るい色の木の実が実った木々が美しい景観を作り出していた。そしてその空間にピッタリとあった建物が建っており、周りには綺麗な花々が整然と並べられている。特筆すべきはエルフが寄贈してくれた大樹で果樹園の中央に威風堂々たる姿で立っていた。果樹園の管理全般を担うのはリエルとルースであり、他にも何人か女性のエルフが果樹園にある店の手伝いをしていた。

「すごいね、少し前までは何もなかったのに。クレース大丈夫? 無理してない?」

「ああ、大丈夫だ。あいつらに夜通し働かせたからな。一睡もさせていない」

そうクレースはドヤッとした顔で自慢げに言った。本当にありえないような作業スピードなのだ。

「いらっしゃいませ皆様」

そしてお店に入るとリエルとルースが笑顔で出迎えてくれた。訪れたその建物はシュレールの森の木材を使用したあたたかい雰囲気のある心地の良い空間だった。

「ありがとう、私のワガママ聞いてくれて」

「いえいえ、ジン様のために働けるなら光栄ですわ。どうぞごゆっくりしていってください」

そう言ってルースはグラスを全員に配る。

「さあジン様、おつぎします!」

いつの間にかゼグトスが横にきてどこから取り出して来たかわからないアップルジュースをジンのグラスに注いでいた。

「ありがとう、ゼグトスも一緒に休憩しよ」

「いえいえ、私はジン様を見ておきますので」

そう言ってゼグトスは終始傍らでジンのことをうっとりした顔をしながらずっと見ていた。そしてしばらくトキワやヴァンは死んだようにぐったりしてピクリとも動かずに顔を机に埋めていた。

「そういえば閻魁はどこに?」

「ああ、そういえばジンを探してたな。遊ぶ約束をしたとかどうとかで······まあ大丈夫だろ」

「あ、そういえば言っちゃたかも。また後で会いにいってくるね」

しばらくゆっくりして果樹園から出ると閻魁が拗ねたようにして立っていた。

「おいジン! どこにおったのだ探したぞ」

「ごめんごめん·····忘れてた」

「うっ、それはそうとだ。お主『鬼幻郷キゲンキョウ』に行ったことはあるか?」

「きげんきょう? 聞いたことない」

それを聞いて閻魁はパアッと顔を輝かせ自慢げに説明を始める。どうやら鬼幻郷は鬼帝ゲルオードの治める国に存在すると言われる場所らしい。

「それでの、我の失われし力がそこに封印されておるのだ。その力が元に戻ればゲルオードのやつなんぞ我の敵ではない。だから······その~······一緒に取りに行かね?」

少し照れた感じで閻魁は聞いてきた。

「クレース、どう思う?」

「まあ別に問題はないだろ。今後その力が必要になるかもしれんからな。明日にでも行くか」

「よっし! では決まりだな」

「よし! じゃあ俺たちも!」

「お前たちはここで作業を続けてろ。まだ全て完成してないだろ」

果樹園などに時間を割いてしまったため剛人族の住む家が未だ全て完成していなかったのだ。

「クソっそんな面白そうなところ俺が行かねえわけには······よしッお前ら今日で完成させるぞ!」

トキワはいつの間にか元気を取り戻し急ピッチで再び作業を進める。そしてまるで本物にゾンビのようになって真夜中に作業を終えるであった。
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