ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

文字の大きさ
40 / 240
ボーンネルの開国譚2

二章 第二話 久々のお出かけ

しおりを挟む
翌日。最近ますますくっ付いてぐっすり眠るパールをやっとの思いで引き剥がしてベッドから起き上がった。今日は隣国へお出かけする日なのだ。閻魁のためといってもやっぱり新しい場所に行くことはワクワクする。みんなに事情を話すとエルダンは「任せてください」と言って留守を請け負ってくれて、リンギルとヴァン、それにコッツは死んだように動かなくなっているみたいだったので一緒にお留守番を頼むことにした。ちなみにトキワはなぜか元気で「もちろん俺も行く」と言ってついてくるのだそう。あれだけ働いたっていうのにすごいタフだ。

「ジン、おはよう」

起き上がるとそのタイミングでクレースが嬉しそうな顔をして部屋に入ってきた。

「おはよう。そういえばボルは大丈夫? ボルも休まず指揮してくれたでしょ」

そう、ボルはトキワに付き合わされてずっと働きづめなのだ。というか一番働いていると言っても過言ではない。

「ああ、あいつの体力もあのバカと同じで無尽蔵だからな。話したら嬉しそうについて行くと言っていたぞ」

「あはは、大丈夫かなあ。まあ人数は多い方が楽しいもんね。ゼフじいは来ないのかな?」

「まあゼフがここを離れれば警備が心配になるからな。一応留守を頼んでおいた」

「うん、わかった」

みんなは一緒に朝から「憩いの場」という看板がかかってあったリラックススペースに集まっているらしい。実際に家具などの細部までが完成したのは今日の朝らしいがほんの数日でかなりの大きさのオシャレな建物が立っていた。中に入ると白を基調とした家具の置かれた現代風の部屋と畳が敷いてある落ち着いた雰囲気の部屋に本棚に並べられた大量の本が目立つ図書館のようなゆったりとした部屋など、それぞれの好みに合った部屋がいくつか存在した。ボルにリラックスできる場所を作って欲しいと軽い感じでお願いしたもののまさかこれほどのものが完成しているとは思わなかった。

「うわあすごいね。あっゼフじい」

ゼフは畳の部屋で座布団に座りゆっくりとお茶を飲んでいた。

「おうジン、おはよう」

「ゼフじいも家具作ってくれてありがとう。ここのことはしばらく頼むね」

「ああ、任せて行っておいで。気を付けるんじゃぞ」

「それで最終的には誰が行くことになったの?」

「ジンと私にガル、パール、閻魁、それにボルとトキワだな。ああそれとゼグトスお前も来るのか?」

「ええ、もちろん私はジン様について行きますので」

「あれそういえば閻魁とトキワは······あっいた」

閻魁とトキワは真っ白なソファの上と絨毯の引かれた上にそれぞれゴロンっと寝転び気持ちよさそうに眠っていた。どうやら建設でかなり疲れたようでボルが言うには作業が終わった後はずっとこの状態のようだ。

「おいお前たち、おいていくぞ」

「············」

返事がない。どうやらただの屍のようだ。

ーガンッッ!!

辺りに鈍い音が響くとその二人は頭を抱えて起き上がった。そしてそのまま痛そうにして頭から手を離すことなく両者無言でその場にうずくまり悶える。

「さっさと起きろ。もう一発殴るぞ」

その言葉を聞いて二人は真顔で直立不動の状態になる。

「さあ、我回復。行くぞ!」

「よし、行くかあ」

ゲルオードの治める国は「ギルゼンノーズ」と言われ、その中央に『ギーグ』と言われる巨大な都市がありかなり発展した都市である。ギーグは活気のある都市でゲルオードの支配下の元で国内全体は安定している。だが荒原地帯が多く土がよくないため農業はあまり発展していない。

「そういえば閻魁、鬼幻郷への行き方は知ってるの?」

「へ?······」

「はあ、まあお前らしいか。では一度ギーグまで向かって情報を集めるか、インフォルも鬼幻郷のことは知らないと言っていたからな」

そして1時間ほど支度をしてついに旅立つ準備が整った。

「ゼフじい、ここは任せるね! いってきます」

「いってらっしゃい。怪我なく帰ってくるんじゃぞ」

ゼフは若干心配そうな顔をしながらも笑って見送ってくれた。そしてついに一行はギルゼンノーズへと向かって出発するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...