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ボーンネルの開国譚2
二章 第二十七話 骸の王
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ベインによって閻魁たち四人は百鬼閣の真上に飛ばされ、巨大な姿となった閻魁が天井を突き破っていた。
『破壊衝動』に取り込まれた閻魁はかつて災厄と呼ばれた頃の姿を取り戻していたのだ。
閻魁の禍々しい力は最早抑えることが出来ず、辺りを高濃度の妖力で満たしていた。
「グハハハッ!!」
天井に大穴の空いた六階層ではけたたましい叫び声を上げる閻魁が自我を失ったように破壊の限りを尽くし、それを上空からヘリアル達が見つめていた。
「想像以上だな、コイツの力は」
「ええ、百鬼閣への被害は大きいですがこの力を利用すれば侵入者を一掃することも可能でしょう」
「だが流石にこのまま行くと他の幹部にも被害が及びかねんぞ」
その時、閻魁は自身の立っている地面を強烈な一撃で叩き潰した。そして拳は地面を揺らし、亀裂がその点を中心に広がっていく。
「すでに閻魁は破壊することしか頭にないようですね」
「このまま床を突き破って下まで行きそうじゃの」
レイのいた4階から上の階にいたもの達はすでに全員出払っていた。そのため誰もいない空間で閻魁は再び暴れ回る。その姿はまさに災厄そのもので龍化したヘリアルでさえ、手が出せないような状態であったのだ。
「念の為防御結界を張っておくか、こちらの戦力が削がれるのは面白くないからな」
そしてヘリアルは閻魁のいる五階層全体を覆い尽くすように結界を張った。
「敵が来れば、結界を開けて誘導すればいい。しばらく暴れさせた後に仕留めて力を奪うこともよいやもしれんな」
一方、百鬼閣一階層。
「トキワさん、どうかされましたか?」
「まあな、鬼族が使ってた妖力波ってのがあっただろ。あれを魔力で応用すれば俺たちも遠くから会話できんじゃねえのかなって思ってよ」
「なるほど、それは素晴らしい」
ゼグトスは向かってくる敵を蹴散らしながら嬉しそうにそう言った。
「もう少しで······よっし」
(聞こえるか、ゼグトス)
(はい、問題ありません。試しにジン様と繋がせていただきますね)
(なるほど、そういうわけか。いいぜ)
そしてその声は三階に向かっていたジンの元にも聞こえてきた。
(ジーンっ! 聞こえるか?)
「うわっ、びっくりした。頭の中に声が聞こえる」
(聞こえるよ、トキワこれ作ったの?)
(おう、名付けて”魔力波”だ。これでクレース達とも連絡が取れるぜ)
(ジン様、ご無事で?)
(うん、大丈夫だよゼグトス。今私は三階に来たところ、多分閻魁はもう少し上だと思う)
(そうでしたか、エルムさんたちはお任せを)
(うん頼むね)
(おう、またな)
「······おかしいな、閻魁のやつとは繋がらねえ」
そして今度はクレース達の方へと繋げてみた。
(おいクレース、そっちは大丈夫そうか?)
(うえっ、きもちわる。トキワか?)
繋がった瞬間クレースからつい心の声がもれた。
(おいおいひでえな。今俺がつくったんだよ、これで遠くからでも会話ができんぜ)
(ではジンにつなげ)
(すまねえ、今切っちまった)
(クソがッ)
(トキワ、そこ危ないかもシレナイ)
(ん? どういうことだ?)
(パールの魔法をクレースが弾き返してガイコツたちを一掃する)
(そ、そうか気を付ける。じゃあまたな)
そんな中、パールはひとりで以前やったように手の中に魔力を込めていた。
「前より少しはできるようになったけど、やっぱしまだうまくはできない」
「構わん、一回くらい私を信じてみろ。ジンにいいところ見せたいだろ?」
「····がんばる」
パールはゆっくりと目を閉じて集中する。
(なんだかなつかしい。昔のことを思い出すみたい)
パールは何故か今自分の練り上げている魔法をずっと昔にやったことのあるというような不思議な感じがした。
(今は集中しないと、ジンになでてもらうもん)
手の中に生み出された光は徐々に輝きを増していき魔力の密度は以前よりも格段に上昇していた。パールは目を瞑りながらゆっくりと慎重にその光に魔力を注いでいく。
「もう、ちょっと····」
目を開いて上手く手の中に収められた光の玉をパールは若干の不安を感じつつも見てみた。
「できた」
出来上がった光の玉は神々しく輝き、そこには一切の闇が感じられない純粋なパールの魔力が込められていた。
「これは····マズイ」
(ええ····私もこれは吸収しきれません)
「あの魔法は······まさか!? お前達ッ撤退しろ!!」
いち早く危険を感じ取ったクシャルドは残りの全魔力を消費して巨大な魔法陣を展開する。
「久遠に眠りしその御霊
我が魔力を糧とし、朧なる世に降臨せよ
今、我が声はがらんの御霊に届けられん
いでよ骸の王!!」
クシャルドの声に応じて巨大な魔法陣は地面を揺らし、辺りの空気を一瞬にして呑み込む。
「グラトン! 一度兵を後退させろ」
グラトンという幹部の一人はクレースに勝負を挑むためにここまで来ていた。
「ったく分かったよ。お前ら一旦撤退だ!!」
そして魔法陣は光り輝きそこに巨大な何かが現れる。
「あれは······」
巨大化した閻魁をも上回るその存在はクシャルドの全魔力と引き換えにその場に召喚される。巨大な骸骨の姿をした
その存在は一瞬にしてまわりに威圧感を与え、その右目には深く呑み込まれてしまいそうな紅色の宝石が輝いていた。
『破壊衝動』に取り込まれた閻魁はかつて災厄と呼ばれた頃の姿を取り戻していたのだ。
閻魁の禍々しい力は最早抑えることが出来ず、辺りを高濃度の妖力で満たしていた。
「グハハハッ!!」
天井に大穴の空いた六階層ではけたたましい叫び声を上げる閻魁が自我を失ったように破壊の限りを尽くし、それを上空からヘリアル達が見つめていた。
「想像以上だな、コイツの力は」
「ええ、百鬼閣への被害は大きいですがこの力を利用すれば侵入者を一掃することも可能でしょう」
「だが流石にこのまま行くと他の幹部にも被害が及びかねんぞ」
その時、閻魁は自身の立っている地面を強烈な一撃で叩き潰した。そして拳は地面を揺らし、亀裂がその点を中心に広がっていく。
「すでに閻魁は破壊することしか頭にないようですね」
「このまま床を突き破って下まで行きそうじゃの」
レイのいた4階から上の階にいたもの達はすでに全員出払っていた。そのため誰もいない空間で閻魁は再び暴れ回る。その姿はまさに災厄そのもので龍化したヘリアルでさえ、手が出せないような状態であったのだ。
「念の為防御結界を張っておくか、こちらの戦力が削がれるのは面白くないからな」
そしてヘリアルは閻魁のいる五階層全体を覆い尽くすように結界を張った。
「敵が来れば、結界を開けて誘導すればいい。しばらく暴れさせた後に仕留めて力を奪うこともよいやもしれんな」
一方、百鬼閣一階層。
「トキワさん、どうかされましたか?」
「まあな、鬼族が使ってた妖力波ってのがあっただろ。あれを魔力で応用すれば俺たちも遠くから会話できんじゃねえのかなって思ってよ」
「なるほど、それは素晴らしい」
ゼグトスは向かってくる敵を蹴散らしながら嬉しそうにそう言った。
「もう少しで······よっし」
(聞こえるか、ゼグトス)
(はい、問題ありません。試しにジン様と繋がせていただきますね)
(なるほど、そういうわけか。いいぜ)
そしてその声は三階に向かっていたジンの元にも聞こえてきた。
(ジーンっ! 聞こえるか?)
「うわっ、びっくりした。頭の中に声が聞こえる」
(聞こえるよ、トキワこれ作ったの?)
(おう、名付けて”魔力波”だ。これでクレース達とも連絡が取れるぜ)
(ジン様、ご無事で?)
(うん、大丈夫だよゼグトス。今私は三階に来たところ、多分閻魁はもう少し上だと思う)
(そうでしたか、エルムさんたちはお任せを)
(うん頼むね)
(おう、またな)
「······おかしいな、閻魁のやつとは繋がらねえ」
そして今度はクレース達の方へと繋げてみた。
(おいクレース、そっちは大丈夫そうか?)
(うえっ、きもちわる。トキワか?)
繋がった瞬間クレースからつい心の声がもれた。
(おいおいひでえな。今俺がつくったんだよ、これで遠くからでも会話ができんぜ)
(ではジンにつなげ)
(すまねえ、今切っちまった)
(クソがッ)
(トキワ、そこ危ないかもシレナイ)
(ん? どういうことだ?)
(パールの魔法をクレースが弾き返してガイコツたちを一掃する)
(そ、そうか気を付ける。じゃあまたな)
そんな中、パールはひとりで以前やったように手の中に魔力を込めていた。
「前より少しはできるようになったけど、やっぱしまだうまくはできない」
「構わん、一回くらい私を信じてみろ。ジンにいいところ見せたいだろ?」
「····がんばる」
パールはゆっくりと目を閉じて集中する。
(なんだかなつかしい。昔のことを思い出すみたい)
パールは何故か今自分の練り上げている魔法をずっと昔にやったことのあるというような不思議な感じがした。
(今は集中しないと、ジンになでてもらうもん)
手の中に生み出された光は徐々に輝きを増していき魔力の密度は以前よりも格段に上昇していた。パールは目を瞑りながらゆっくりと慎重にその光に魔力を注いでいく。
「もう、ちょっと····」
目を開いて上手く手の中に収められた光の玉をパールは若干の不安を感じつつも見てみた。
「できた」
出来上がった光の玉は神々しく輝き、そこには一切の闇が感じられない純粋なパールの魔力が込められていた。
「これは····マズイ」
(ええ····私もこれは吸収しきれません)
「あの魔法は······まさか!? お前達ッ撤退しろ!!」
いち早く危険を感じ取ったクシャルドは残りの全魔力を消費して巨大な魔法陣を展開する。
「久遠に眠りしその御霊
我が魔力を糧とし、朧なる世に降臨せよ
今、我が声はがらんの御霊に届けられん
いでよ骸の王!!」
クシャルドの声に応じて巨大な魔法陣は地面を揺らし、辺りの空気を一瞬にして呑み込む。
「グラトン! 一度兵を後退させろ」
グラトンという幹部の一人はクレースに勝負を挑むためにここまで来ていた。
「ったく分かったよ。お前ら一旦撤退だ!!」
そして魔法陣は光り輝きそこに巨大な何かが現れる。
「あれは······」
巨大化した閻魁をも上回るその存在はクシャルドの全魔力と引き換えにその場に召喚される。巨大な骸骨の姿をした
その存在は一瞬にしてまわりに威圧感を与え、その右目には深く呑み込まれてしまいそうな紅色の宝石が輝いていた。
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