65 / 240
ボーンネルの開国譚2
二章 第二十七話 骸の王
しおりを挟む
ベインによって閻魁たち四人は百鬼閣の真上に飛ばされ、巨大な姿となった閻魁が天井を突き破っていた。
『破壊衝動』に取り込まれた閻魁はかつて災厄と呼ばれた頃の姿を取り戻していたのだ。
閻魁の禍々しい力は最早抑えることが出来ず、辺りを高濃度の妖力で満たしていた。
「グハハハッ!!」
天井に大穴の空いた六階層ではけたたましい叫び声を上げる閻魁が自我を失ったように破壊の限りを尽くし、それを上空からヘリアル達が見つめていた。
「想像以上だな、コイツの力は」
「ええ、百鬼閣への被害は大きいですがこの力を利用すれば侵入者を一掃することも可能でしょう」
「だが流石にこのまま行くと他の幹部にも被害が及びかねんぞ」
その時、閻魁は自身の立っている地面を強烈な一撃で叩き潰した。そして拳は地面を揺らし、亀裂がその点を中心に広がっていく。
「すでに閻魁は破壊することしか頭にないようですね」
「このまま床を突き破って下まで行きそうじゃの」
レイのいた4階から上の階にいたもの達はすでに全員出払っていた。そのため誰もいない空間で閻魁は再び暴れ回る。その姿はまさに災厄そのもので龍化したヘリアルでさえ、手が出せないような状態であったのだ。
「念の為防御結界を張っておくか、こちらの戦力が削がれるのは面白くないからな」
そしてヘリアルは閻魁のいる五階層全体を覆い尽くすように結界を張った。
「敵が来れば、結界を開けて誘導すればいい。しばらく暴れさせた後に仕留めて力を奪うこともよいやもしれんな」
一方、百鬼閣一階層。
「トキワさん、どうかされましたか?」
「まあな、鬼族が使ってた妖力波ってのがあっただろ。あれを魔力で応用すれば俺たちも遠くから会話できんじゃねえのかなって思ってよ」
「なるほど、それは素晴らしい」
ゼグトスは向かってくる敵を蹴散らしながら嬉しそうにそう言った。
「もう少しで······よっし」
(聞こえるか、ゼグトス)
(はい、問題ありません。試しにジン様と繋がせていただきますね)
(なるほど、そういうわけか。いいぜ)
そしてその声は三階に向かっていたジンの元にも聞こえてきた。
(ジーンっ! 聞こえるか?)
「うわっ、びっくりした。頭の中に声が聞こえる」
(聞こえるよ、トキワこれ作ったの?)
(おう、名付けて”魔力波”だ。これでクレース達とも連絡が取れるぜ)
(ジン様、ご無事で?)
(うん、大丈夫だよゼグトス。今私は三階に来たところ、多分閻魁はもう少し上だと思う)
(そうでしたか、エルムさんたちはお任せを)
(うん頼むね)
(おう、またな)
「······おかしいな、閻魁のやつとは繋がらねえ」
そして今度はクレース達の方へと繋げてみた。
(おいクレース、そっちは大丈夫そうか?)
(うえっ、きもちわる。トキワか?)
繋がった瞬間クレースからつい心の声がもれた。
(おいおいひでえな。今俺がつくったんだよ、これで遠くからでも会話ができんぜ)
(ではジンにつなげ)
(すまねえ、今切っちまった)
(クソがッ)
(トキワ、そこ危ないかもシレナイ)
(ん? どういうことだ?)
(パールの魔法をクレースが弾き返してガイコツたちを一掃する)
(そ、そうか気を付ける。じゃあまたな)
そんな中、パールはひとりで以前やったように手の中に魔力を込めていた。
「前より少しはできるようになったけど、やっぱしまだうまくはできない」
「構わん、一回くらい私を信じてみろ。ジンにいいところ見せたいだろ?」
「····がんばる」
パールはゆっくりと目を閉じて集中する。
(なんだかなつかしい。昔のことを思い出すみたい)
パールは何故か今自分の練り上げている魔法をずっと昔にやったことのあるというような不思議な感じがした。
(今は集中しないと、ジンになでてもらうもん)
手の中に生み出された光は徐々に輝きを増していき魔力の密度は以前よりも格段に上昇していた。パールは目を瞑りながらゆっくりと慎重にその光に魔力を注いでいく。
「もう、ちょっと····」
目を開いて上手く手の中に収められた光の玉をパールは若干の不安を感じつつも見てみた。
「できた」
出来上がった光の玉は神々しく輝き、そこには一切の闇が感じられない純粋なパールの魔力が込められていた。
「これは····マズイ」
(ええ····私もこれは吸収しきれません)
「あの魔法は······まさか!? お前達ッ撤退しろ!!」
いち早く危険を感じ取ったクシャルドは残りの全魔力を消費して巨大な魔法陣を展開する。
「久遠に眠りしその御霊
我が魔力を糧とし、朧なる世に降臨せよ
今、我が声はがらんの御霊に届けられん
いでよ骸の王!!」
クシャルドの声に応じて巨大な魔法陣は地面を揺らし、辺りの空気を一瞬にして呑み込む。
「グラトン! 一度兵を後退させろ」
グラトンという幹部の一人はクレースに勝負を挑むためにここまで来ていた。
「ったく分かったよ。お前ら一旦撤退だ!!」
そして魔法陣は光り輝きそこに巨大な何かが現れる。
「あれは······」
巨大化した閻魁をも上回るその存在はクシャルドの全魔力と引き換えにその場に召喚される。巨大な骸骨の姿をした
その存在は一瞬にしてまわりに威圧感を与え、その右目には深く呑み込まれてしまいそうな紅色の宝石が輝いていた。
『破壊衝動』に取り込まれた閻魁はかつて災厄と呼ばれた頃の姿を取り戻していたのだ。
閻魁の禍々しい力は最早抑えることが出来ず、辺りを高濃度の妖力で満たしていた。
「グハハハッ!!」
天井に大穴の空いた六階層ではけたたましい叫び声を上げる閻魁が自我を失ったように破壊の限りを尽くし、それを上空からヘリアル達が見つめていた。
「想像以上だな、コイツの力は」
「ええ、百鬼閣への被害は大きいですがこの力を利用すれば侵入者を一掃することも可能でしょう」
「だが流石にこのまま行くと他の幹部にも被害が及びかねんぞ」
その時、閻魁は自身の立っている地面を強烈な一撃で叩き潰した。そして拳は地面を揺らし、亀裂がその点を中心に広がっていく。
「すでに閻魁は破壊することしか頭にないようですね」
「このまま床を突き破って下まで行きそうじゃの」
レイのいた4階から上の階にいたもの達はすでに全員出払っていた。そのため誰もいない空間で閻魁は再び暴れ回る。その姿はまさに災厄そのもので龍化したヘリアルでさえ、手が出せないような状態であったのだ。
「念の為防御結界を張っておくか、こちらの戦力が削がれるのは面白くないからな」
そしてヘリアルは閻魁のいる五階層全体を覆い尽くすように結界を張った。
「敵が来れば、結界を開けて誘導すればいい。しばらく暴れさせた後に仕留めて力を奪うこともよいやもしれんな」
一方、百鬼閣一階層。
「トキワさん、どうかされましたか?」
「まあな、鬼族が使ってた妖力波ってのがあっただろ。あれを魔力で応用すれば俺たちも遠くから会話できんじゃねえのかなって思ってよ」
「なるほど、それは素晴らしい」
ゼグトスは向かってくる敵を蹴散らしながら嬉しそうにそう言った。
「もう少しで······よっし」
(聞こえるか、ゼグトス)
(はい、問題ありません。試しにジン様と繋がせていただきますね)
(なるほど、そういうわけか。いいぜ)
そしてその声は三階に向かっていたジンの元にも聞こえてきた。
(ジーンっ! 聞こえるか?)
「うわっ、びっくりした。頭の中に声が聞こえる」
(聞こえるよ、トキワこれ作ったの?)
(おう、名付けて”魔力波”だ。これでクレース達とも連絡が取れるぜ)
(ジン様、ご無事で?)
(うん、大丈夫だよゼグトス。今私は三階に来たところ、多分閻魁はもう少し上だと思う)
(そうでしたか、エルムさんたちはお任せを)
(うん頼むね)
(おう、またな)
「······おかしいな、閻魁のやつとは繋がらねえ」
そして今度はクレース達の方へと繋げてみた。
(おいクレース、そっちは大丈夫そうか?)
(うえっ、きもちわる。トキワか?)
繋がった瞬間クレースからつい心の声がもれた。
(おいおいひでえな。今俺がつくったんだよ、これで遠くからでも会話ができんぜ)
(ではジンにつなげ)
(すまねえ、今切っちまった)
(クソがッ)
(トキワ、そこ危ないかもシレナイ)
(ん? どういうことだ?)
(パールの魔法をクレースが弾き返してガイコツたちを一掃する)
(そ、そうか気を付ける。じゃあまたな)
そんな中、パールはひとりで以前やったように手の中に魔力を込めていた。
「前より少しはできるようになったけど、やっぱしまだうまくはできない」
「構わん、一回くらい私を信じてみろ。ジンにいいところ見せたいだろ?」
「····がんばる」
パールはゆっくりと目を閉じて集中する。
(なんだかなつかしい。昔のことを思い出すみたい)
パールは何故か今自分の練り上げている魔法をずっと昔にやったことのあるというような不思議な感じがした。
(今は集中しないと、ジンになでてもらうもん)
手の中に生み出された光は徐々に輝きを増していき魔力の密度は以前よりも格段に上昇していた。パールは目を瞑りながらゆっくりと慎重にその光に魔力を注いでいく。
「もう、ちょっと····」
目を開いて上手く手の中に収められた光の玉をパールは若干の不安を感じつつも見てみた。
「できた」
出来上がった光の玉は神々しく輝き、そこには一切の闇が感じられない純粋なパールの魔力が込められていた。
「これは····マズイ」
(ええ····私もこれは吸収しきれません)
「あの魔法は······まさか!? お前達ッ撤退しろ!!」
いち早く危険を感じ取ったクシャルドは残りの全魔力を消費して巨大な魔法陣を展開する。
「久遠に眠りしその御霊
我が魔力を糧とし、朧なる世に降臨せよ
今、我が声はがらんの御霊に届けられん
いでよ骸の王!!」
クシャルドの声に応じて巨大な魔法陣は地面を揺らし、辺りの空気を一瞬にして呑み込む。
「グラトン! 一度兵を後退させろ」
グラトンという幹部の一人はクレースに勝負を挑むためにここまで来ていた。
「ったく分かったよ。お前ら一旦撤退だ!!」
そして魔法陣は光り輝きそこに巨大な何かが現れる。
「あれは······」
巨大化した閻魁をも上回るその存在はクシャルドの全魔力と引き換えにその場に召喚される。巨大な骸骨の姿をした
その存在は一瞬にしてまわりに威圧感を与え、その右目には深く呑み込まれてしまいそうな紅色の宝石が輝いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる