ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

文字の大きさ
70 / 240
ボーンネルの開国譚2

二章 第三十二話 ベインの違和感

しおりを挟む
レイとジンはガルの背中の上に乗って百鬼閣のさらに上階へと向かっていた。

「ガルはすごいでしょ。レイお姉ちゃんは見るの初めてだったよね」

「ああ、ガルというのか、こんなに大きな狼は初めて見た」

「バゥッ!」

「うん、いつもは私が持てるくらいの大きさなんだよ」

「そうなのか、後で見てみたいな」

レイはジンとの会話の中で自分でも気付かないうちに自然な笑顔を見せていた。
閻魁が味方になったことやゲルオードと戦ったという話をジンから聞いたレイは何故か何も驚かなかった。
ただジンと話しているのが幸せでそんなことは関係なかったのだ。

「それでね、今はボーンネルっていう場所で国づくりをしててたくさんの人が協力してくれてるんだ」

「そうか、それは楽しそうだな」

「それでなんだけど······レイお姉ちゃんも、私と一緒に来ない?」

「ッ······いい····のか?」

「うん、もちろんだよ。あの時、小さかった私はレイお姉ちゃんに何もできなかったから。だから今度は一緒に行こ。
わがままかもしれないけど、私は一緒来て欲しい」

そんなジンの言葉を一語一語噛み締め、レイは俯いた。

(何も出来なかっただって? そんなはずない。あの時から私の生きる理由はジンだけだから。私が騎士を目指せたのはジンが理由をつくってくれたから。だから、私の全てを貴方だけにあげる)

そして顔をあげ、レイはずっと出来なかった眩しいほどの笑顔を見せた。

「もちろん、ありがとうジン」

「よかったぁ、これでもうずっと一緒だね」

その笑顔を見てレイの複雑に絡み合っていた心の闇は最も簡単に解けていったのだ。


そしてその後もガルのおかげで順調に百鬼閣を登っていった。

「あそこだな」

四階から五階に繋がる道を見つけ、そこへ近づくにつれてガルの毛が逆立ってきた。

「結界があるみたいだから壊してくるね」

(ロード、お願い)

「待てジン、おそらくそれはヘリアルの結界でっ······!?」

レイが何かをいう前に5階全体を覆っていたヘリアルの結界は最も簡単に壊れ、その瞬間不気味な力が肌をかすめた。

(あの時から感じていたが、今はもうこれほどの魔力が)

そしてヘリアルは結界が壊されたことに気付き、一度龍化を解いた。

「俺が結界を解くつもりだったが、どうやらその必要はなかったようだな」

天井が開け空が見えるその場では依然として自我を失い破壊衝動に呑まれた閻魁が暴れ回っていた。

「あれが、閻魁か」

トウライはジンの横に立つレイを見つけると警戒するような姿勢を見せた。

「レイ、寝返ったのか」

トウライの言葉にレイは呆れるように笑う。

「裏切るだと? 初めからお前達のことなど仲間と思ってなどいない。それに下劣な嘘をついていたのはお前達の方だろ。全部この子から聞いた」

「フッ、今更知ったのか。だが閻魁を暴れさせればお前達などどうでもよい」

(アレ、このヘリアルっていう人どこかであったような)

トウライはレイの方を向いて刀を構えた。それに応じてレイは意思のある武器である「レグルス」という名のハルバードを背中から抜いた。そしてレイは自分よりも大きなハルバードを片手で軽々と持ち上げ、自信に満ちた顔でトウライを見つめた。

「レイ、閻魁のことは私に任せて」

「····ああ、分かった」

(レイ、お前さんの笑顔なんて初めて見たぞ)

(ああ、やっとこの子のために戦える。······負ける気がしない)

(おう、任せてときな)

「お前と戦うのは初めてであったのう。残念じゃが、殺す気で行かせてもらうぞ」

「来い、老兵が」

そしてトウライとレイの激しい戦いが始まった。

「お前はどうする気だ。この状態の閻魁に近づく気か?」

「ちょっとここで待っててね、ガル」

(きっと力を取り戻した時に、何かが一緒に入り込んだんだ)

魔魁玉を吸収した閻魁はかつての妖力に加え、破壊衝動と憎悪の念取り込んだ。そのため今の閻魁の意識は心の奥深くにしまわれ、憎悪の念を胸にただただ破壊行動を行なっていたのだ。
そしてジンは暴れ回る閻魁へと、ゆっくりと近づいていった。

(すぐに、目を覚まさせる)


一方、鬼の社で一人になっていたベインはあることを考え込んでいた。

(魔魁玉から意識を逸らすのは久しぶりだけど、この違和感はなんだ)

魔魁玉への警戒がなくなったベインは、他の細かな部分の変化に敏感になっていた。
そのためそベインは今まで気づかなかったことに対して徐々に意識が向くようになっていたのだ。

「おかしい、この数百年ほど僕はここで一人だったはずなのに」

ベインはこの違和感の原因がわかっていた。だがそんな話はあり得ないと自分に言い聞かせ、他の原因を考える。
だがどれだけ考えてもこの違和感の正体は一つしか考えられない。

「いつからだ。幻術をかけられたのは」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...